指標価格(Net CONE)とは
CONEは Cost of New Entry の略で、新しく電源を建てて維持するのにかかる費用を指します。このうち総額をGross CONE、そこから卸電力市場などで稼げる分を差し引いた正味の額をNet CONEと呼びます。日本の容量市場では、Net CONEを「指標価格」として需要曲線の高さの基準に使います。
単位は円/kW/年です。2026年度メインオークション(対象実需給年度2030年度)では、Gross CONE 31,683円/kWから容量市場以外の収益10,772円/kWを差し引いた20,911円/kWが指標価格になりました。
なぜ需要曲線が要るのか
必要量ちょうどで線を引くと価格が跳ねる必要な供給力ちょうどで需要を打ち切ると、応札がわずかに足りないだけで価格が上限まで跳ね、わずかに余るだけでゼロに落ちます。落札するかどうかが1kWの差で決まってしまいます。
そこで価格が高いほど調達量を減らす右下がりの曲線を置きます。供給が少し足りなくても価格は段階的にしか上がらず、事業者にとっても需要家にとっても振れ幅が小さくなります。
曲線をどの高さに置くかは、新規参入者が電源を建てて採算に乗る水準に合わせます。それがNet CONEです。上限価格はNet CONEの1.5倍と定められています。
どう計算するか
モデルプラントを1つ決めて積み上げる
計算には実在の発電所を使いません。標準的な1基を仮に置いて積み上げます。日本ではLNG火力のコンバインドサイクル(CCGT)をモデルプラントとし、経済産業省の発電コスト検証ワーキンググループが公表する諸元を使います。第113回制度検討作業部会で、2025年2月の公表値を採用することが整理されました。
建設費に加え、40年の運転で発生する物価上昇分、系統に接続する費用、経年に伴う修繕費の増分、資本コスト(税引前WACC)を積み上げてGross CONEを求め、そこから容量市場以外の収益を引きます。他市場収益はGross CONEの34%と置く整理です。
2026年度と2025年度の諸元
第74回 容量市場の在り方等に関する検討会 資料4| 項目 | 2026年度メインAX(実需給2030年度) | 2025年度メインAX(実需給2029年度) |
|---|---|---|
| 指標価格(Net CONE) | 20,911円/kW | 10,075円/kW |
| 需要曲線の上限価格 | 31,366.5円/kW(Net CONEの1.5倍) | ― |
| モデルプラント | CCGT(基準年2023年) | CCGT(基準年2014年) |
| コスト評価年数 | 40年 | 40年 |
| インフレーション率 | 6.71% | 17.56% |
| 評価期間の期待インフレ率 | 0.98% | 0.81% |
| 系統接続費 | 1.56千円/kW | 1.56千円/kW |
| 経年に伴う修繕費等の増分 | 3万円/kW程度(30,861円/kW) | 3万円/kW程度 |
| 評価期間の割引率(税引前WACC) | 5% | 5% |
| 容量市場以外からの収益 | 10,772円/kW(Gross CONE 31,683円/kWの34%) | 5,190円/kW |
基準年が2014年から2023年へ移ったため、建設費そのものが新しい水準に置き換わりました。インフレーション率が17.56%から6.71%へ下がったのは、物価上昇が止まったからではありません。基準年から現在までに積み上げる年数が短くなったためです。
2026年度に約2.1倍になった理由
指標価格は10,075円/kWから20,911円/kWへ、1kWあたり10,836円上がりました。最も大きいのはモデルプラントの基準年の更新です。基準年が2014年から2023年へ移り、その間の建設費や資材価格の上昇が織り込まれました。
他市場収益も5,190円/kWから10,772円/kWへ倍増していますが、Gross CONEの34%という割合は変えていないため、Gross CONEそのものが大きくなった結果です。差し引き後のNet CONEも同じ方向に動きました。
需要曲線と目標調達量
2026年度メインオークションの原案| 全国H3需要(離島除き) | 1億6,190万kW(2030年度断面、2026年度供給計画) |
|---|---|
| 目標調達量 | 1億9,691万kW(2025年度メインAXは1億8,997万kW、+694万kW) |
| 目標停電量(EUE) | 0.044kWh/kW・年(2025年度は0.009) |
| 上限価格における調達量 | 1億9,527万kW |
| 調達価格ゼロにおける調達量 | 2億390万kW |
| 約定処理で加算する供給力 | 2,851万kW(FIT電源等1,986万kW+容量市場外の見込み供給力控除量180万kW+長期脱炭素電源オークション契約容量685万kW) |
需要曲線の原案は広域機関が策定し、国の関連審議会等の意見を踏まえて広域機関が決定・公表します(業務規程第32条の13)。2026年度分の原案は2026年6月30日の第74回検討会で報告されました。
容量市場の外でも使われる
系統整備の費用便益評価
Net CONEは容量市場の中だけの数字ではありません。広域機関が地域間連系線などの整備計画を評価するとき、供給力が増えることの価値(アデカシー便益)を調達コストベースで算出しており、その単価にNet CONEを使っています。
2026年9月1日の第103回広域系統整備委員会では、発電コスト検証ワーキンググループ(2025)にもとづく大幅な見直しがあったものの、最新の諸元で算定された値であることから、従来どおり見直し後の最新のNet CONEを使うと整理されました。指標価格が2倍になれば、系統を増強する便益の見積もりも同じ方向に動きます。
読むときに気をつける3点
指標価格は需要曲線を引くための基準であって、落札価格ではありません。約定価格は応札の状況で決まります。指標価格が上がっても約定価格が同じだけ上がるとは限りません。
「2026年度メインオークション」は対象実需給年度2030年度を指します。オークションの年度と電気が実際に使われる年度は4年ずれるので、資料を読むときはどちらの年度かを確かめます。
Net CONEは発電コスト検証ワーキンググループの公表値に依存します。同ワーキンググループの報告が更新されると指標価格も動くため、どの報告書のどの年の値かを確認します。
電力安定供給WG(会議体の解説)
容量市場のオークション条件や供給力確保策を決めている国の会議です。全6回の要点と開催一覧を見られます。
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OCCTO「2026年度メインオークションにおける需要曲線の原案について」(第74回検討会 資料4)
Net CONEの算定諸元、目標調達量、需要曲線の原案がまとまっています。
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OCCTO「広域系統整備計画の費用便益評価手法について」(第103回 広域系統整備委員会 資料2)
アデカシー便益の調達コスト単価としてNet CONEを使う整理が書かれています。
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制度・用語の一覧
電力制度と電力市場の解説をまとめています。
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