審議会資料解説

第31回 原子力規制委員会地震・津波部会の報告と専決処理57件

日本海の海域活断層の連動をどう審査するかが議論され、柏崎刈羽への影響は限定的と報告されました。原子力艦モニタリングセンターの高齢化と、第1四半期の専決処理57件もあわせて確認できます。

更新日:2026.09.02

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会議情報

2026.09.09 第31回 原子力規制委員会

議題は3件で、いずれも報告です。資料1が原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会の第6回地震・津波部会の審議結果、資料2が原子力艦モニタリングセンターの業務状況、資料3が令和8年度第1四半期における専決処理です。原子力施設等におけるトピックス(令和8年8月31日〜9月6日)は、4つの区分すべてが該当なしでした。開催は10時30分から12時まで、六本木ファーストビル13階A会議室で公開で行われました。

出典:原子力規制委員会「第31回原子力規制委員会 令和8年09月09日」

資料別の解説

資料1原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会 第6回地震・津波部会の審議結果報告開く

7月7日の部会で技術情報4件を扱った

部会は2026年7月7日の10時から11時57分まで開かれました。久田嘉章部会長、三宅弘恵部会長代理に加え、臨時委員の高橋智幸氏、谷岡勇市郎氏、遠田晋次氏、専門委員の吾妻崇氏が出席しています。扱ったのは、第5回(2025年6月20日)以後に技術情報検討会で報告された自然ハザードのうち、地震・津波等に関する技術情報4件です。規制委の対応状況について委員から異論はありませんでした。

第6回地震・津波部会で扱った技術情報
日本海中南部の海域活断層の長期評価(第一版)-近畿地域・北陸地域北方沖-
標準応答スペクトルの策定に用いた「解放地震基盤相当面における地震動」を推定する手法の信頼性向上に資する知見
日本原子力学会標準「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:2024」
南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)

断層の連動は距離で機械的に決めない

吾妻専門委員が、日本海の海域活断層で近接する断層の連動を審査でどう考慮しているかを尋ねました。内田淳一統括技術研究調査官は、現在の審査ガイドでは「距離を基準とした画一的な判断は採用せず、変動地形学的調査、地形・地質調査及び地球物理学的調査の結果から総合的に判断する」と回答しています。名倉安全規制管理官も、断層の構造や連続性、実際の地震発生状況といった詳細な情報を確認しながら個別に判断していると補足しました。

吾妻専門委員は令和6年能登半島地震を踏まえ、隣接する断層の傾斜方向が異なることや最近発生した地震活動をもって連動の可能性を否定する考え方は通じないとして、幅広い検討を求めています。

富山トラフ横断断層の柏崎刈羽への影響は限定的

新たに認定された富山トラフ横断断層について、遠田臨時委員が影響の大きさを確認しました。内田統括技術研究調査官は、地震動への影響は限定的と考えられるものの、津波への影響は否定できないため注意を呼び掛けたものだと説明しています。名倉安全規制管理官は、柏崎刈羽原子力発電所の影響評価で能登半島北岸断層帯等との連動を考慮した結果、「地震動評価・津波評価ともに限定的であり、富山トラフ西縁断層が連動する場合よりも小さかった」と報告しました。

SSHACレベルの再選定が要るかは発電所ごとに違う

確率論的リスク評価の実施基準では、専門家の関与の度合いを示すSSHACレベルが論点になりました。既にレベル3または4相当の地震ハザード評価が実施されているサイトは、新しい情報を用いたレベル1の評価で既往の結果と比べ、更新の要否を検討します。この条件に当てはまるのは伊方発電所だけで、他の発電所が本実施基準を適用する場合は、SSHACレベルの選定からやり直す必要があります。東京電力は柏崎刈羽で活用を進めており、久田部会長は動向の継続的な報告を求めました。

南海トラフの改訂は事業者の評価で確認する

南海トラフの長期評価の改訂は、地震発生確率の評価手法の見直しです。吾妻専門委員が確率論的評価への数値的な影響を尋ねたのに対し、道口主任技術研究調査官は規制庁として影響の確認は実施しておらず、事業者が安全性向上評価等で反映した検討を行う中で確認していくと述べました。名倉安全規制管理官は、設置変更許可の審査では確率論的評価結果を事故シナリオシーケンスの妥当性の検討に幅を持って使っているため、今回の手法変更が影響するものではないと説明しています。

中部電力の不正行為は追跡調査が容易でない

その他の議題として、中部電力の不正行為への対応状況が取り上げられました。久田部会長は、大きな影響がある問題として、第三者委員会の報告書も踏まえた改善点の検討が必要だと指摘したうえで、「データや記録が十分残されていないことから追跡調査は容易ではない」として、検討状況の継続的な報告を求めています。

資料本体:資料1 第6回地震・津波部会の審議結果報告(PDF)

資料2原子力艦モニタリングセンターの業務状況開く

1964年の初寄港から続く調査

米国原子力潜水艦が1964年に日本へ初めて寄港して以来、寄港地周辺の環境放射能を確かめる原子力艦放射能調査が続けられてきました。2008年に横須賀港が原子力空母の母港になったことを機に、当時の文部科学省が職員の常駐する原子力艦モニタリングセンターを開設し、原子力規制委員会の発足後には長崎県佐世保市と沖縄県うるま市にも順次開設されています。

3拠点の体制とモニタリングポスト
横須賀(神奈川県横須賀市)所長1名・副所長1名・技術参与4名・事務補佐員1名/空間系10か所・海水系5か所
佐世保(長崎県佐世保市)所長1名・技術参与2名・事務補佐員1名/空間系7か所・海水系6か所
金武中城(沖縄県うるま市)所長1名・技術参与2名・事務補佐員1名/空間系4か所・海水系3か所

非寄港時は24時間監視、寄港時は7人の調査班

原子力艦が寄港していないときは、モニタリングポストで空間放射線量率と海水中の放射線計数率を365日24時間連続で監視します。寄港時は技術参与が調査班長を務め、調査艇乗組員4名(海上保安庁職員)、調査員1名(分析専門機関)、調査支援員1名(自治体職員)を加えた班を編成し、入港・出港時と寄港中の周辺で放射線測定や海水試料の採取を行います。放射能調査艇は海上保安庁の所属で、横須賀の「きぬがさ」、佐世保の「さいかい」、金武中城の「かつれん」の3隻です。

課題は5つ、平均年齢は66歳

今後の課題として、危機管理対応の体制の充実・強化、人材育成、米軍司令部との関係維持・強化、測定器材の設備更新、職員の高齢化への対応の5点が挙がりました。調査業務の実務経験者の数が限られるため所長の後継者育成が喫緊の課題とされ、勤務する職員の平均年齢が66歳であることから健康面に配慮した業務管理が必要不可欠だと明記されています。港湾に設置した設備は塩害と老朽化が著しく、計画的な更新の継続が必要とされました。

日米合同訓練は約230人規模

横須賀市では2008年度から日米合同原子力防災訓練が続いています。横須賀市、米海軍、神奈川県、外務省・防衛省・規制庁・海上保安庁の約230人が参加する規模です。想定は2023年度が三浦半島断層群を震源とするマグニチュード6.8の地震、2024年度が空母から横須賀港への極微量の冷却水漏れ、2025年度が空母機関室内での極微量の放射性物質を含む水の漏水でした。規制庁は調査艇による試料採取と走行サーベイを実施し、結果を統合原子力防災ネットワークで横須賀市対策本部へ共有しています。

資料本体:資料2 原子力艦モニタリングセンターの業務状況(PDF)

資料3令和8年度第1四半期における専決処理(報告)開く

報告を要する専決処理は57件

専決処理は、委員会にかけずに事務方の判断で処分を行う仕組みです。2026年度第1四半期に委員会への報告を要する専決処理は、核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の関係が45件、放射性同位元素等の規制に関する法律の関係が12件の計57件でした。

専決処理の分類と件数
核物質防護規定の変更認可関係16件
国際規制物資に係る計量管理規定の認可・変更認可関係13件
放射性同位元素等の使用の許可・変更許可関係12件
核燃料物質の使用の許可・変更許可関係6件
福島第一原子力発電所の実施計画の変更認可関係5件
発電用原子炉施設の長期施設管理計画の認可関係2件
型式の指定関係/廃止措置計画の変更認可関係/原子力規制検査の総合的な評定関係各1件

三菱重工の金属キャスクMSF-24P型を型式指定

型式指定は1件で、使用済燃料の貯蔵に使う金属キャスクでした。三菱重工業が2026年1月13日に申請し(3月13日に一部補正)、規制庁は設計仕様等が型式証明「M-DPC24001」(2024年12月25日)の記載と整合していること、「使用済燃料貯蔵施設の技術基準に関する規則」のうち金属キャスクの技術上の基準に適合していることを確認して、2026年4月3日にMSF-24P型を型式指定しています。

玄海3号機と伊方3号機の長期施設管理計画を同日に認可

長期施設管理計画の変更認可は2件で、いずれも運転開始後30年を経過した原子炉の廃棄物処理設備に関するものです。九州電力玄海原子力発電所3号炉は雑固体焼却炉建屋の特別点検結果の追加で2026年3月4日の申請、四国電力伊方発電所3号炉は焼却炉建屋の特別点検結果の追加で3月5日の申請でした。どちらも2026年6月25日に認可されています。

核物質防護は施設変更と情報システム対策の2種類

件数が最も多い核物質防護規定の変更は、施設の物理的な変更と情報システム対策の2つに分かれます。北陸電力志賀原子力発電所は立入制限区域の変更で、2025年12月4日の申請に対して2026年4月6日に認可されました。九州電力川内原子力発電所は配線処理室の障壁変更に伴う防護措置の変更で5月29日の認可です。東京電力福島第二原子力発電所や日本原子力研究開発機構の複数施設は、原子力施設の情報システムセキュリティ対策に係る審査基準等の改正を踏まえた変更でした。防護規定の変更では、国家公安委員会と海上保安庁長官への意見聴取が処分とセットで専決処理されています。

資料本体:資料3 令和8年度第1四半期における専決処理(報告)(PDF)

トピックス原子力施設等におけるトピックス(令和8年8月31日〜9月6日)開く

4区分すべてが該当なし

対象期間は2026年8月31日から9月6日までです。原子炉等規制法第62条の3または放射性同位元素等規制法第31条の2にもとづく報告事案(発生に係る報告に限る)、保安規定に定める運転上の制限(LCO)から逸脱した事案、海外の原子力施設における海外トピックス、その他の4区分は、いずれも該当なしでした。前週の第30回では四国電力伊方発電所3号機の過大温度ΔTのLCO逸脱が報告されており、2週続けての逸脱はありません。

資料本体:原子力施設等におけるトピックス(令和8年8月31日〜9月6日)(PDF)

会合から確認できること

この日は決定も了承もなく、報告が3件でした。地震・津波部会の報告からは、活断層の連動を距離で機械的に判断せず個別に見るという審査の姿勢が確認できます。新しく認定された富山トラフ横断断層の柏崎刈羽への影響が限定的だという評価も示されました。専決処理の報告には、乾式貯蔵に使う金属キャスクの型式指定と、運転開始後30年を過ぎた玄海3号機・伊方3号機の長期施設管理計画の変更が含まれています。原子力艦モニタリングセンターの報告は、職員の平均年齢66歳と所長の後継者育成という、規制の実務を支える人の問題を数字で示したものです。