制度のしくみ

乾式貯蔵

使用済燃料を金属の容器に密封して、電気を使わず空気の流れだけで冷やす保管方法です。プールが埋まってきたことと、六ヶ所再処理工場の竣工が遅れていることが、各社が急ぐ理由になっています。容器のまま運び出せる「兼用キャスク」が主流になりつつあります。

更新日:2026.09.08

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何をする施設か

原子炉から取り出した使用済燃料は、まず発電所の貯蔵プール(使用済燃料ピット)の水の中で冷やします。発熱が十分に下がったところで金属製の容器へ移して密封し、空気の自然対流で冷やしながら敷地内に置いておくのが乾式貯蔵です。東北電力は女川2号機の施設について「使用済燃料プールで十分に冷却した燃料を金属製容器へ収納し、空気の自然対流で冷やす」と説明しています。

いちばんの利点は、動かすものが無いことです。ポンプも電源も要らないため、外部電源が失われても冷却が止まりません。関西電力は美浜・高浜の計画について「搬出までの間、電源を使用せずに安全性の高い方式で保管できるよう、発電所からの将来の搬出に備えて」設置すると説明しています。

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キャスクに持たせる4つの機能

容器(キャスク)は、ただの箱ではありません。関西電力の資料では、次の4つの機能を持たせるとされています。設計上の貯蔵期間は60年です。

除熱

使用済燃料は取り出したあとも崩壊熱を出し続けます。容器の外側のフィンなどから空気へ熱を逃がし、自然対流だけで温度を保ちます。

閉じ込め

放射性物質を容器の中に留めます。蓋を二重にするなどして、密封の状態を長期間保てる構造にします。

遮蔽

ガンマ線は鋼、中性子は樹脂などの水素を含む材料で止めます。この中性子遮蔽材が長期間ガンマ線を浴びて水素を失うと性能が落ちるため、規制側の審査で論点になります。

臨界防止

容器の中で燃料が再び核分裂の連鎖を起こさないよう、バスケットの間隔や中性子を吸収する材料で抑えます。

関西電力の方式では、キャスクを横向きの状態で架台に載せ、基礎等には固定しません。キャスクごとに鉄筋コンクリート製のパネルをボルト等で接合した格納設備を設け、敷地境界の外の空間線量率を、原子炉施設本体等からの線量も含めて年間50マイクロシーベルト以下に抑えるとしています。

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輸送にも使える「兼用キャスク」

最近の計画で使われるのは、輸送と貯蔵の両方に使える「輸送・貯蔵兼用キャスク」です。敷地内で貯蔵したあと、そのまま搬出に使えるため、貯蔵用の容器から輸送用の容器へ詰め替える作業が要りません。詰め替えは燃料を扱う工程が増えることを意味するので、省けること自体が安全上の利点になります。

容器には型式ごとに審査を受ける仕組みがあります。原子力規制委員会は「特定兼用キャスクの設計の型式証明等に係る審査会合」を開いており、2026年9月8日の第44回ではカナデビア(旧日立造船)の型式指定申請を審議しました。型式の指定を受けておけば、個別の機器ごとに一から審査を受ける手間を省けます。この会合では、中性子遮蔽材へのガンマ線照射による水素損失とその線量当量率への影響が補足説明の主題になりました。

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各社の状況

2026年9月時点で、複数の事業者が同時に手続きを進めています。段階はそれぞれ違います。

公表資料で確認できる主な計画
事業者・地点規模直近の動き
関西電力 美浜兼用キャスク最大10基/使用済燃料 約100トン。3号機原子炉補助建屋の北側付近2026年8月28日に福井県・美浜町から事前了解。準備でき次第、設計及び工事の計画の認可を申請
関西電力 高浜(第一期)最大22基/約240トン。特高開閉所の南側付近。1〜4号機の共用同上(高浜町からも事前了解)。工期は当初2025〜2027年頃だが見直し予定
東北電力 女川2号機第1棟で最大8基/使用済燃料552体着工を2026年7月から9月へ変更。運用開始2028年3月は維持
九州電力 川内公表資料に規模の記載なし2025年10月24日に原子炉設置変更許可を申請、2026年7月17日に火災感知器の設置方針を見直す補正書を提出
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手続きは3段階+地元了解

運用開始までに越える関門は複数あります。国の手続きと、地元との手続きが並行して進みます。

①原子炉設置変更許可

施設を敷地に置くことの許可です。九州電力の川内では2025年10月に申請し、審査の過程で火災感知器の設置方針を見直す補正書を出しています。審査中の補正は珍しくありません。

②設計及び工事の計画の認可(設工認)

具体的な設計と工事の中身についての認可です。関西電力は事前了解を得たあと、準備ができ次第これを申請するとしています。東北電力の女川では、この審査に時間がかかったことが着工延期の理由になりました。

③使用前事業者検査

できあがった設備が認可どおりかを確かめます。ここを終えてはじめて運用に入れます。

安全協定にもとづく事前了解

国の手続きとは別に、立地自治体との安全協定にもとづく了解が要ります。関西電力は2024年2月8日に事前了解願いを出し、受領は2026年8月28日でした。2年半余りかかっています。

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規制の見直しが後押しした

関西電力が採る「キャスクごとに個別の格納設備を設ける方式」は、2019年3月に制定された「原子力発電所敷地内での輸送・貯蔵兼用乾式キャスクによる使用済燃料の貯蔵に関する審査ガイド」で乾式貯蔵の規制が見直され、安全性が確保されたさまざまな貯蔵方式に対応できるようになったことを受けたものです。

それ以前は建屋の中にまとめて置く方式が前提でした。ガイドの見直しによって、屋外に個別の格納設備を並べる形も選べるようになり、既存の敷地の空きスペースを使いやすくなりました。関西電力の美浜が3号機原子炉補助建屋の北側付近、高浜が特高開閉所の南側付近と、既存設備のすき間に置かれているのはそのためです。

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「空いたプールは使わない」という約束

乾式貯蔵をめぐる議論で必ず出るのが、これが中間貯蔵の代わりになってしまうのではないか、という懸念です。プールから容器へ移せばプールに空きができ、その空きにまた新しい使用済燃料を入れられてしまう、という筋書きです。

福井県は2026年、六ヶ所再処理工場の竣工が遅れる可能性があるなかで「乾式貯蔵施設を前に進めるべきではないといった声もある」として、関西電力に考え方を示すよう求めました。同社は8月18日の報告で、乾式貯蔵施設への移し替えで空いた貯蔵プールのスペースは原則使わないとしています。搬出量への影響についても、使用済MOX燃料の再処理実証研究で検討している100トン分をフランスへ搬出することを具体化し、2027年度から2031年度に搬出する300トンに続けて搬出すれば、2028年度からの当面の搬出量に大きな影響は出ないと説明しました。

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読むときの観点

どの段階のニュースか

設置変更許可の申請、その補正、設工認の申請と認可、事前了解、着工、使用前検査、運用開始と、節目が多い制度です。見出しだけでは進み具合が分かりません。どの手続きの話かを必ず確かめます。

容量は「基数」と「トン」または「体数」で見る

キャスクの基数だけでは量が分かりません。関西電力は使用済燃料のトン数、東北電力は燃料集合体の体数で示しています。単位が違うので、そのまま足し引きできません。

工期は動くもの

関西電力は工期を「今後、見直し予定」と明記し、東北電力は着工を2度ずらしました。当初の年限をそのまま前提にしないほうが安全です。