制度のしくみ

特定重大事故等対処施設

「特重(とくじゅう)」と略される施設です。大型航空機が意図的にぶつけられるようなテロが起きても、原子炉格納容器が壊れて放射性物質が大量に外へ出ることを防ぐために置きます。原発の再稼働の話でこの名前が出てくるのは、設置に5年の猶予期間があり、その数え始めの日が2016年と2026年の2度うしろへずらされてきたからです。

更新日:2026.08.29

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特重施設とは

規則の定義はこうです。特定重大事故等対処施設とは、重大事故等対処施設のうち「故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムにより炉心の著しい損傷が発生するおそれがある場合又は炉心の著しい損傷が発生した場合において、原子炉格納容器の破損による工場等外への放射性物質の異常な水準の放出を抑制するためのもの」をいいます。

ポイントは想定している原因がテロだという点です。地震や津波に備える設備は本体側にありますが、特重施設は、原子炉建屋が意図的に攻撃されて本体側の機能が失われても、格納容器の破損を防ぐ設備を別に確保しておくためのものです。規則は具体的な設備の名前ではなく、満たすべき機能を3つ挙げる形で定めています。

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規則が求める3つの要件

設置義務は、実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(許可基準規則)の第42条にあります。「工場等には、次に掲げるところにより、特定重大事故等対処施設を設けなければならない」として、3つの要件を並べています。

要件
原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムに対して、その重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれるおそれがないものであること
原子炉格納容器の破損を防止するために必要な設備を有するものであること
テロリズムの発生後、発電用原子炉施設の外からの支援が受けられるまでの間、使用できるものであること

設備の性能面は、実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則(技術基準規則)の第53条が受け持ちます。第三号が示すとおり、外部からの支援が届くまで自力で持ちこたえることが前提になっています。

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なぜ猶予期間があるのか

2013年7月に施行された新規制基準は、既にある原発にも最新の基準を当てはめる考え方を採りました。ただし特重施設は建設に時間がかかるため、設置までの期間に限って第42条を適用しない経過措置が置かれています。この猶予があるために、特重施設が完成していない状態でも本体の運転ができます。

期間は一貫して5年です。原子力規制庁はその根拠を「法令上経過措置を設置する際の一般的な期間として設定されたもの」としたうえで、特重施設の安全上の位置付けと、事業者が新たに設置するにあたって審査や工事に必要な期間などを総合的に判断し、設置の準備に要する期間として5年としたと説明しています。

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起算点は2度うしろへずれた

動いてきたのは期間の長さではなく、5年を数え始める日です。数え始めが後ろへずれれば、設置の期限も同じだけ後ろへずれます。

時期起算点期間
2013年7月新規制基準の施行日5年
2016年の改正本体施設の設計及び工事の計画の認可(設工認)5年
2026年8月26日の決定本体施設の使用前確認の日5年

2016年に設工認へ変えた理由を、規制庁はこう説明しています。「特定重大事故対処施設の審査を進めるためには、その前提として、本体施設等に適用する基準地震動及び基準津波並びに本体施設等の設備仕様を確定させた後に、特定重大事故対処施設の設備仕様を判断し、本体施設等の個別配管ごとの位置や、圧力、温度、荷重等の環境条件等の詳細な設計条件等を確定する必要があります」。本体の設計が固まらないと特重の設計もできない、という順序の問題です。

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2026年8月の改正で変わったこと

原子力規制委員会は2026年8月26日の第28回会合で、許可基準規則と技術基準規則の改正を決めました。起算点を本体施設の使用前確認の日へ改めるもので、あわせて所内常設直流電源設備(3系統目)も同じ扱いにします。こちらは許可基準規則第57条第2項と技術基準規則第72条第2項が対象です。

意見公募は2026年6月4日から7月3日までの30日間、電子政府の総合窓口(e-Gov)と郵送で行われ、152件の意見が寄せられました。既に経過措置期間が満了した施設は今回の改正の対象外で、この線引きに対しては「同等のリスク状態にある施設を対象外とすることは科学的な合理性を欠く」として遡及適用を求める意見が出ています。

規制庁は、本体施設の使用前確認より前は発電所内の使用済燃料が十分に冷却されており特重施設が必要になる状況は考えにくい、という説明について「現行の経過措置と安全上の大きな差異がないということを一般的な事実として述べたものであり、これを根拠として経過措置規定の見直しの議論を進めたわけではありません」と回答しました。

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実務で確認するときの見どころ

個々の原発について見るのは3つの日付です。本体施設の設工認の日、本体施設の使用前確認の日、そして特重施設の完成予定です。どれを起算点とするかで期限が変わるため、ニュースで「期限が延びた」と出てきたら、どの日から数えた5年なのかを確かめます。

規則の条文は電子政府の総合窓口(e-Gov)で読めます。改正の中身と意見公募への回答は、原子力規制委員会の会議資料に載ります。会議資料はアーカイブ検索システム(N-ADRES)で回次ごとに公開されており、規制委員会の定例会合は原則として水曜に開かれます。