会議情報
2026.09.03 第24回 CNO意見交換会
資料1でクリアランスにおける放射能濃度評価手法の標準化、資料2で民間規格の技術評価の優先順位、資料3で廃棄物埋設施設等におけるリスクに応じた原子力防災対応、資料4で「欠け(unknown-unknowns)」に関する議論の進め方が扱われました。参考1はATENAが優先的に取り組む案件の一覧です。会合は9月3日15時から17時まで公開で開かれました。
資料別の解説
資料4「欠け(unknown-unknowns)」に関する議論の進め方開く
4つの活動を今秋から試す
2026年3月27日の第23回CNO意見交換会で規制庁が提案した4点の活動について、規制庁・ATENA・中立的な立場のファシリテーターで進め方を調整し、実施概要を別紙1から4にまとめたものです。前回は大きな反対こそ出なかったものの、参加者への心理的安全性への配慮を求める意見があり、今回はそれを織り込んだ形になっています。
| 活動 | 規模・進め方 | 時期 |
|---|---|---|
| 第三者からプレゼンテーションを受けて議論 | JAXAで小惑星探査機はやぶさのプロジェクトリーダを務めた國中均氏が基調講演。事業者・規制関係者・学識経験者など計5名程度で討論(2時間以内) | 2027年2月18日のATENAフォーラム |
| 匿名意見交換会 | 事業者側は各社1名程度、規制庁側は6名程度を匿名で選定。2グループに分け2〜3時間を2回、オンラインで実施 | 2026年秋から冬頃 |
| 若手が事故調報告書を読んで議論を行う会 | 概ね30代まで。規制庁側10名程度・事業者側20名程度の計30名程度(6人程度×5グループ)。都内で半日程度 | 2026年冬から春頃 |
| 事業者の現場に出向いての意見交換 | 発電所へ赴き、本店・現場の部長/課長クラスと規制側の課長クラス等が現場目線で議論 | 2027年3月から6月 |
匿名で、ボイスチェンジャーも使える
もっとも目を引くのが匿名意見交換会です。参加者は双方とも匿名で、本人が希望する場合にはボイスチェンジャーを使用できます。資料は「発言内容を特定組織に不利な形で切り取ったり、直ちに新たな規制要求や個別の審査・検査上の対応に結び付けたりすることは行わない」と明記しました。規制庁側と事業者側の双方が、組織として発言内容の事前調整や事後確認を行わないことに予め合意しておく必要があるとしています。ファシリテーターは「不合理な原子力の世界」の著者である松井亮太氏(山梨県立大学准教授)と大場恭子氏(長岡技術科学大学准教授)が務めます。
「欠け」は技術に限らない
共通の考え方として、「欠け」を科学的・技術的なものに限定せず、制度面や管理運営面、規制と被規制の関係や業界の慣行等も対象にすると整理しました。「欠け」を直接的に探すことのみにこだわらず、規制当局と被規制者の双方に「ゆらぎ」を与えることで、既存の取り組みでは浮かび上がりにくい課題や論点をとらえることを試みるという書き方です。あくまで試行と位置づけ、欠けが実際に見つかったかを問うのは避け、意図したとおりの議論ができたかと、継続して実施する意義があるかを見極めることを重視するとしています。
出典:原子力規制庁・原子力エネルギー協議会(ATENA)「「欠け(unknown-unknowns)」に関する議論の進め方」(第24回CNO意見交換会 資料4)
資料3廃棄物埋設施設等におけるリスクに応じた原子力防災対応について開く
低リスクの施設にも実用炉と同じ防災要求がかかる
対象は、日本原子力発電が事業許可を申請中の東海低レベル放射性廃棄物埋設(東海L3廃棄物埋設施設)です。東海発電所の廃止措置にともなって発生する極低レベル放射性廃棄物を埋設処分する施設で、取り扱う放射能レベルが低く、臨界の発生も想定されず事象の進展は極めて遅いという性格があります。原子力災害対策指針でも、廃棄物埋設施設に対してはPAZおよびUPZの設定は要求されていません。
それでも原子力災害対策特別措置法は、こうした低リスクの施設にも実用発電用原子炉と同等に、原子力緊急事態を想定した防災業務計画・組織・設備・資機材等を求めます。しかも廃止措置が終わるまでの長期間にわたって維持する必要があります。ATENAはグレーデッド・アプローチの観点から、リスクに応じた規制要求にすることを面談等を通じて議論したいと求めました。
| 想定する事象 | 評価結果 |
|---|---|
| 遮蔽機能の喪失(地震で最上段の覆土が機能を失う) | 年1.9×10マイクロシーベルト(毎時2.2×10のマイナス3乗マイクロシーベルト) |
| 漏出低減機能の喪失(全バリアが失われ降水が全量浸透) | 年5.6マイクロシーベルト(毎時6.4×10のマイナス4乗マイクロシーベルト) |
| 廃棄物の落下(門型クレーンから落ち2個が損傷) | 毎時0.33マイクロシーベルト |
評価条件には大きな保守性を置いている
漏出低減機能の喪失では、全42区画の埋設が完了した状態を想定し、放射能量は推定の約1.2倍に設定しています。蒸発散と表面流出を見込まず、低透水性覆土と遮水シートの全バリアが喪失して降水量平年値の年1.4メートルが全量浸透するとし、漁獲した海産物は流通による希釈も出荷制限も見込みません。廃棄物の落下では、最大放射能濃度に受入れ最大重量3,900キログラムを掛けた廃棄物2個が同時に損傷し、雨水防止テント等の閉じ込め・沈着低減を一切見込まない設定です。
見直しを求める4か所
ATENAは、原子力事業者防災業務計画(原災法第7条)、原子力防災組織(第8条。10種類の業務ごとに2名以上の配置)、放射線測定設備(第11条第1項。事業所ごとに2式以上)、必要な資機材の整備の4つを挙げ、いずれも「原子力施設の状況や特性に依らず一律に要求されている」として、要求の適用除外や共用化などを図る余地があるのではないかと問題提起しました。
資料1クリアランスにおける放射能濃度評価手法について開く
廃止措置が進むと、対象物が大量に出る
クリアランスは、廃止措置などで発生する物のうち放射能濃度が十分に低いものを、国の確認を受けて放射性廃棄物として扱わなくてよいものとする制度です。ATENAは「廃止措置の進展に伴い、大量かつ広範なクリアランス対象物の発生が見込まれる」として、審査経験や既存の分析データを活用し、核種選定・核種組成比・不確かさ評価をより合理的に評価できる共通手順の整備が重要だと説明しました。現在の手法では、不確かさや長寿命核種の評価で保守性が過大となり、適切な評価が難しくなる恐れがあるケースもあるとしています。
標準化の3つの柱
1つ目は既往の蓄積データを全プラントから収集して分析対象核種の選定の考え方を整理すること、2つ目は核種組成比を評価する手順の標準化、3つ目は不確かさの評価に係るデータ処理方法の標準化です。あわせて、過去の審査で論点になった汚染履歴が不明確な対象物への対応方針も検討しました。成果はATENA技術レポートとして取りまとめます。資料は審査対応の論点を6つ挙げ、うち3つには審査基準の記載のみでは技術的妥当性に係る解釈や説明に困る場合があるとの印を付けています。
2028年度から各社の審査で使う
2026年度に技術的論点と方向性を確認する意見交換と方針整理を行い、技術レポートを制定します。2027年度に標準記載要領への落とし込みの可否や学会標準規格化・エンドースの要否を判断する意見交換を行い、2028年度から2030年度に各社の審査で使う想定です。本件はATENAが優先的に取り組む案件にも追加され、案件数は14件になりました。
資料2規格基準の技術評価について開く
2028年度以降に希望が集中する
技術評価は、学協会が策定した民間規格を規制側が確認して規制へ取り込む仕組みです。ATENAは2026年6月9日の第28回新規制要件に関する事業者意見の聴取に係る会合で、向こう5年間に技術評価を希望する規格基準をロードマップとして示しています。今回は「2028年度以降、技術評価を希望する規格基準が多くあることから、事業者の希望を踏まえた中長期的な視点で、計画的なリソース配分を検討いただきたい」と求めました。
| 規格 | 希望時期 | 理由 |
|---|---|---|
| JSME S NA-CC-0XX(PWR炉心そうの亀裂評価法) | 2027年度 | 米国H.Bロビンソンの炉心そうきず事象への対応で2028年度から国内PWRの点検を開始する計画 |
| JEAC 4201(原子炉構造材の監視試験方法) | 2028年度 | 2030年度以降に監視試験片を取り出すプラントがある |
| JEAC 4206(原子炉圧力容器の供用期間中の破壊靭性の確認方法) | 2028年度 | 長期運転に対応したPTS評価が計画されている |
| JEAC 4216(フェライト鋼の破壊靭性参照温度Toの試験方法) | 2028年度 | JEAC4201・4206と合わせて用いるため同時期が効率的 |
| JEAG 4208(蒸気発生器伝熱管の渦流探傷試験指針) | 2028年度 | ECTプローブの製造中止で2029年度以降に在庫が枯渇する見込み |
廃棄物関連は学会の4標準
中深度処分対象廃棄物の放射能濃度決定方法の基本手順(AESJ-SC-F015)と大型角型廃棄体の製作及び検査方法は2028年度、ピット処分及びトレンチ処分対象廃棄物の放射能濃度決定に関する基本手順(AESJ-SC-F022)と余裕深度処分対象廃棄体の製作要件及び検査方法(AESJ-SC-F014)は2030年度を希望時期としました。ATENAはまとめで、この廃棄体4標準についても技術評価計画に含めるよう要望しています。
2026年度から評価の開始を希望する規格は2件です。原子炉格納容器の漏えい率試験規程(JEAC 4203-2026)は、至近10年間の漏えい率が判定基準内であることを条件にA種試験をB・C種試験で代替し試験間隔を10年へ延長できる内容で、コンクリート製原子炉格納容器規格(JSME S NE1)は2026年版が改定内容と引用規格の最新版を反映しています。
参考1ATENAの取り組みについて(特に優先的に取り組む案件)開く
優先案件は14件になった
2025年8月27日の「原子力規制委員会とATENA上層部との意見交換」で優先的に取り組む案件11件を提示し、その後の状況変化を踏まえて浜岡事案と米国標準技術仕様書(STS)の保安規定等への反映の2件を追加、これを2026年3月27日の第23回CNO意見交換会で説明していました。今回さらにクリアランスにおける放射能濃度評価手法を加え、合計14件になりました。特に注力するのはリスク情報活用、安全性向上評価届出を含む許認可制度等の見直し、規格基準類の早期エンドースの3つです。
運転中保全は実機への導入フェーズへ
ATENAは「これまでの意見交換での議論を経て、安全に実施できる準備は整ったものと認識」とし、今後は事業者による実機への導入フェーズに入り、その状況をフォローしていくとしました。現場実証は伊方と大飯で行っています。重大事故等対処設備の運転上の制限(LCO)については、衛星電話等の一部機器で東京電力と関西電力が変更認可申請を済ませており、他の事業者も準備が整い次第、順次申請する見通しです。
浜岡事案は「安全文化の劣化」
中部電力の浜岡原子力発電所で基準地震動の策定に関する不適切事案が発覚したことについて、ATENAは「原子力産業への信頼を損ねる重大な事案」としたうえで、事業者の安全確保に係る活動全体を見直す機会と捉えて改善に努めるとしました。さらに「今回の事案が、原子力事業を営むうえでの根幹である安全文化の劣化から生じたものであることを重く受け止めて」おり、JANSIや電気事業連合会と連携しつつ、その点の改善に注力するとしています。中部電力への報告徴収の回答期限は9月25日です。
会合から確認できること
この日の5本は、方向がそろっています。ATENAの3本(資料1・資料2・資料3)はいずれも、要求を減らすことを求めるものではありません。要求のかけ方を対象のリスクや実態に合わせてほしいという話で、低リスクの埋設施設への防災要求、クリアランスの過大な保守性、民間規格の評価待ち行列と、詰まっている場所を具体的に挙げています。廃止措置が本格化するほど量が効いてくる論点ばかりで、東海L3の事業許可審査と各社のクリアランス申請が実際の試金石になります。
資料4は毛色が違います。規制と事業者が同じ部屋で匿名になり、ボイスチェンジャーまで用意して話す場を作るという提案は、これまでの会合の延長線上にはありません。浜岡事案をATENAが「安全文化の劣化」と表現したことと合わせて読むと、技術基準の外側にある問題を扱う道具立てを、双方が探している段階だと分かります。試行の結果はCNO意見交換会に報告されるので、そこが次の節目です。