日本の原子力発電所は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故後に一度大きく停止しました。その後、原子力規制委員会の新規制基準に適合した原子炉から、順次再稼働しています。
2026年6月5日の原子力小委員会資料では、国内の原子力発電所は、再稼働済み15基、設置変更許可済み3基、新規制基準の審査中8基、未申請10基、廃炉24基と整理されています。
ここでいう「再稼働済み」は、送電再開まで進んだ原子炉の累計です。そのため、定期検査などで一時的に停止している原子炉も含まれます。実際にその時点で運転しているかどうかは、定期検査やトラブル対応によって変わります。
政府方針は「原子力推進」
第7次エネルギー基本計画では、再エネと原子力を共に最大限活用する方向が示されています。
背景には、2040年に向けて電力需要が増える可能性があります。データセンター、半導体工場、電化、生成AIなどにより、今後はこれまで以上に多くの電力が必要になると見込まれています。
その中で、CO2を出さない電源を十分に確保できるかが、日本の産業競争力にも関わる問題になっています。
原子力小委員会の資料でも、今後の原子力政策の柱として、次のような方向性が示されています。
・既設炉の再稼働を進めること。
・既設炉を最大限活用すること。
・次世代革新炉の開発・設置を進めること。
・核燃料サイクル、廃炉、最終処分を進めること。
・事業環境、サプライチェーン、人材基盤を維持すること。
つまり、足元では既設炉の再稼働を進め、少し長い目では運転期間の延長や設備利用率の向上を進め、将来的には次世代革新炉への建て替えも視野に入れる流れです。
なぜ今、原子力が重視されているのか
原子力が重視されている理由は、大きく3つあります。
1つ目は、電力需要の増加です。
データセンター、半導体工場、生成AI、電化などにより、今後は電気の使用量が増える可能性があります。需要が増える中で、CO2を出さない電源をどう確保するかが課題になります。
2つ目は、燃料輸入への依存です。
日本は、LNG、石炭、石油などの化石燃料の多くを海外から輸入しています。燃料価格が上がると、電気料金や貿易収支に影響が出ます。
原子力は、燃料投入量が少なく、長期的には燃料価格の変動を受けにくい電源として位置づけられています。
3つ目は、脱炭素です。
再エネの拡大は重要ですが、太陽光や風力は天候によって発電量が変わります。原子力は、二酸化炭素を出さずに安定的に大きな出力を出せる脱炭素電源として、再エネと組み合わせる電源とされています。
課題も多く残る
再稼働が進んでいるとはいえ、原子力発電には多くの課題が残っています。
まず、安全審査には時間がかかります。原子力発電所は、事故が起きた場合の影響が大きいため、厳しい審査が必要です。一方で、審査が長期化すると、再稼働や投資判断が遅れる要因にもなります。
次に、地元理解があります。原子力発電所は国全体の電力需給や脱炭素に関わる一方、立地地域には事故時の避難、防災、地域経済、将来のまちづくりといった問題があります。国や事業者が必要性を説明するだけではなく、地域の不安や疑問に丁寧に向き合う必要があります。
さらに、事業者への信頼も重要です。2026年には、中部電力の浜岡原子力発電所をめぐり、基準地震動の評価に関する不適切事案が明らかになりました。基準地震動は、原子力発電所の耐震設計の前提になる重要な揺れです。中部電力は、審査会合で説明していた内容と異なる方法で代表波を選定していたことなどを公表しました。これを受けて、原子力規制委員会は浜岡原発の審査を停止しています。
原子力発電は、安全性だけでなく、説明の正確性や透明性が強く問われる電源です。浜岡原発の事案は、再稼働を進めるうえで、事業者への信頼が欠かせないことを示しています。
今後の焦点は「再稼働」だけではない
今後の原子力政策では、既存炉の再稼働だけでなく、長期的な設備容量の確保も焦点になります。
既設炉は、再稼働しても永遠に使えるわけではありません。運転開始から年数が経てば、いずれ運転期間の上限や廃炉の問題に直面します。
そのため、原子力を将来も一定程度使い続けるのであれば、既設炉の再稼働だけでは足りません。運転期間の延長、設備利用率の向上、そして次世代革新炉への建て替えが論点になります。
原子力小委員会の資料では、2040年代、2050年代に必要となる原子力の設備容量についても議論されています。既設炉を最大限活用しても、長期的には不足が生じる可能性があるためです。
そこで、革新軽水炉、SMR、高速炉、高温ガス炉などの次世代革新炉が議論されています。
ただし、新しい原子炉を建てるには、技術開発だけでは足りません。立地地域の理解、事業者の投資判断、規制対応、サプライチェーン、人材確保が必要になります。
