審議会資料解説

第103回 広域系統整備委員会2031年度の系統混雑と工程遅延

2031年度の系統混雑見通し、広域系統整備計画5件の進捗、高経年化設備更新ガイドラインの改定案、費用便益評価手法の整理が示されました。

更新日:2026.09.01

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会議情報

2026.09.01 第103回 広域系統整備委員会

資料1で高経年化設備更新ガイドラインの改定案、資料2で費用便益評価に算入するコストの考え方、資料3で2031年度の系統混雑に関する中長期見通し、資料4で広域系統整備計画の2026年度第1四半期の進捗が示されました。配布資料4本すべてを扱っています。

出典:電力広域的運営推進機関「第103回 広域系統整備委員会」

資料別の解説

資料32031年度の系統混雑に関する中長期見通し(報告)開く

2031年度に系統がどれだけ混み合うかの試算です。2026年3月27日の第9回次世代電力系統ワーキンググループで整理された前提条件にもとづき、移行シナリオと現行シナリオの2通りで算出しました。

自然変動電源の出力制御電力量は全国合計で7億2,778万kWh(移行)・6億6,419万kWh(現行)となり、昨年度に示した2030年度想定の2.5倍程度に増えました。増分のほとんどは東北の風力の連系拡大によるものです。

広域機関は、今後の電源稼働状況や系統運用の変化、カーボンプライシングの導入状況、将来導入される制度によって見通しは変わり得るため、2031年度の絶対的な見通しではないと注意を促しています。一般送配電事業者が公表する空容量や予想潮流とは前提条件も算出方法も異なります。

2031年度の系統混雑見通し(左=移行シナリオ/右=現行シナリオ、カッコ内は前回比)
混雑設備数(全国)177か所(+40)/180か所(+44) うち基幹系統35(+7)・32(+6)、ローカル系統142(+33)・148(+38)
自然変動電源の出力制御電力量7億2,778万kWh(+4億4,491万kWh)/6億6,419万kWh(+3億9,398万kWh)
同・エリア別の上位東北4億6,432万kWh(+3億5,636万kWh)、北海道2億4,885万kWh(+9,838万kWh)
ピーク需要断面の出力制御0.2万kW/14.6万kW
点灯帯(16〜20時)の最大出力制御約250万kW/約200万kW(いずれも昨年度より増加)
年間最大出力制御のH3需要比北海道17.4%/15.8%、東北9.8%/15.2%(東エリアは15%超の見込み)

資料本体:資料3「2031年度の系統混雑に関する中長期見通し(報告)」(PDF)

資料4広域系統整備計画の進捗状況について(2026年度第1四半期)(報告)開く

業務規程第62条にもとづき、事業実施主体から四半期ごとに提出される進捗を確認するものです。今回は2026年6月末時点の状況が報告されました。

東京中部間連系設備で工程の遅れが確定しました。佐久間東幹線(山線)の増強工事で用地交渉が難航した箇所について土地収用法にもとづく申請手続きを進め、工法も精査した結果、運転開始が2031年11月になります。前回報告では「2030年3月以降への変更を検討中」でした。この内容は8月21日の第15回計画評価及び検証小委員会で審議済みです。

最終的な運転開始を待たずに、作業停止の順序を組み替えて既設送電線の片回線を使うなどし、周波数変換設備の運用容量を段階的に確保して停止中の発電所を順に運転再開させます。残る4計画は完了時期に変更がありませんでした。

広域系統整備計画5件の状況(2026年6月末時点)
東京中部間連系設備90万kW増強(210万kW→300万kW)。概算工事費1,837億円。完了予定が2031年11月へ遅延
東北東京間連系線455万kW増強(573万kW→1,028万kW)。概算額3,539億円(工事費1,533億円+運転維持費2,006億円)。2027年11月完了予定、変更なし
北海道本州間連系設備30万kW増強(90万kW→120万kW)。概算額1,014億円(工事費479億円+運転維持費535億円)。2027年度末完了予定、変更なし
中部関西間連系線2030年6月完了予定、変更なし
中国九州間連系設備2039年3月完了予定、変更なし

資料本体:資料4「広域系統整備計画の進捗状況について(2026年度第1四半期)(報告)」(PDF)

資料1高経年化設備更新ガイドラインの改定について開く

古くなった設備をどの順番で更新するかを、故障確率と故障影響度から求めるリスク量で判断するための指針です。レベニューキャップ制度の下で更新投資の妥当性を説明する土台になります。2026年度中の改定・公表をめざしています。

第2規制期間に向けた継続検討課題(故障確率の精緻化、故障影響度の精緻化、リスク量算定対象の拡大)は第100回・第102回の委員会で審議を終えており、今回はその結果をガイドライン案へ反映したうえで、代表的な3つの追加課題を諮りました。

事業運営影響度の数値も整理されました。工務設備では鉄塔が3億9,280万円〜4億8,490万円、変圧器が1,900万円〜2億3,340万円、遮断器が2,930万円〜7,780万円、配電設備では電柱54万円、電線52万円、地中ケーブル56万円などで、いずれも過去の故障事象への対応費用実績(応急復旧・行政対応・需要家対応)にもとづきます。停電コスト単価の見直しは継続検討です。

今回追加された3つの反映事項
廃形機器の影響(故障確率)メンテナンス打切まで5年以内の設備は現在ヘルススコア下限値6.5、打切済みは8.0。信頼度係数は変圧器1.1・遮断器2.0。キュービクルの内蔵遮断器は隣接回線からの融通等があるため下限値のみ設定
冗長性の価値喪失(故障影響度)冗長性を有する設備が故障した際の影響度を反映
重要横過物の損壊(災害影響度)鉄道・道路などの重要横過物が損壊した際の影響額を反映

資料本体:資料1「高経年化設備更新ガイドラインの改定について」(PDF)

資料2広域系統整備計画の費用便益評価手法について(プロジェクトファイナンスに関する費用の扱い等)開く

整備計画の大規模化にともない、特定目的会社(SPC)を設立してプロジェクトファイナンスを活用する検討が出てきました。北海道本州間連系設備の日本海ルートがこの前提です。工事費に加えて発生するファイナンスコストを費用便益評価にどう扱うかを整理しました。

判断のものさしは2つです。機会費用(そのプロジェクトを実施しなければ他で価値を生んでいたはずの資材や労働力の価値)にもとづいて算出することと、価値の移転にあたるものはコストに含めないことです。広域機関が行うのは日本国内全体を対象とした経済分析であり、事業として成立するかを見る財務分析とは目的が異なります。

各種フィーは項目名で画一的に判断せず、プロジェクトの実態を踏まえて判断します。予備費は発生頻度や規模が未定のため、感度分析で影響を確認します。

算入するコスト・しないコストと、便益パラメータの更新
コストに算入工事費、運転維持費、漁業・用地補償費(実費に限る)、保険料、アドバイザリーフィー、エージェントフィー
コストに不算入各種金利、コミットメントフィー、アップフロントフィー、GX債務保証料、その他ファイナンス費用、税金(法人税等)
燃料価格(CIF)の補正工事費算出時期と整合をとった為替の変化を反映
CO2輸送貯留費用・燃料諸経費建設総合デフレーターで補正(2020年基準。発電コストWG(2025)113.1/直近12か月122.9)
アデカシー便益の調達コスト単価最新のNet CONEへ見直し。2026年度メインオークションの需要曲線作成要領は20,911円/kW(2025年度は10,075円/kW)

資料本体:資料2「広域系統整備計画の費用便益評価手法について(プロジェクトファイナンスに関する費用の扱い等)」(PDF)

会合から確認できること

この日は、系統をつくる側とつなぐ側の両方で数字が動きました。2031年度の自然変動電源の出力制御は昨年度想定の2.5倍にあたる約7億3,000万kWhとなり、増分のほぼ全部が東北の風力です。一方で、その東北から電気を運ぶ先にあたる東京中部間の周波数変換設備は、用地交渉の難航で運転開始が2031年11月へずれ込みました。増える再エネと、遅れる系統整備が同じ会合で並んだ形です。費用便益評価では、金利や税金を算入せず工事費や保険料を算入するという線引きが決まり、日本海ルートのようにプロジェクトファイナンスを前提とする案件の評価軸が固まりました。