区域を指定してから事業者を公募する
洋上風力は、海のどこでも建てられるわけではありません。再エネ海域利用法では、都道府県からの情報提供を受けて「準備区域」「有望区域」と段階を上げ、経産大臣と国交大臣が「促進区域」を指定します。その促進区域ごとに事業者を公募し、選ばれた1者が最長30年の占用許可を得て開発します。
この公募が回を重ねるごとに、実務では「第1ラウンド」「第2ラウンド」と呼ばれています。有望区域になるには、促進区域の候補地があること、利害関係者を特定して協議会を始める同意があること、系統の確保・風況・航路や港湾・防衛との調整といった区域指定の基準に適していることが見込まれることが要件です。
第1〜3ラウンドの選定結果
| 区域 | 規模 | 供給価格 | 運開年月 |
|---|---|---|---|
| 秋田県能代市・三種町・男鹿市沖 | 49.4万kW | 13.26円/kWh | 2028.12 |
| 秋田県由利本荘市沖 | 84.5万kW | 11.99円/kWh | 2030.12 |
| 千葉県銚子市沖 | 40.3万kW | 16.49円/kWh | 2028.9 |
| 秋田県八峰町・能代市沖 | 37.5万kW | 3円/kWh | 2029.6 |
| 秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖 | 31.5万kW | 3円/kWh | 2028.6 |
| 新潟県村上市・胎内市沖 | 68.4万kW | 3円/kWh | 2029.6 |
| 長崎県西海市江島沖 | 42.0万kW | 22.18円/kWh | 2029.8 |
| 青森県沖日本海(南側) | 61.5万kW | 3円/kWh | 2030.6 |
| 山形県遊佐町沖 | 45.0万kW | 3円/kWh | 2030.6 |
上の3区域が第1ラウンド(約170万kW)、続く4区域が第2ラウンド(約180万kW)、青森県沖日本海(南側)と山形県遊佐町沖が第3ラウンド(約110万kW)にあたります。第2ラウンド以降で「3円/kWh」が並ぶのは、価格競争の下限に張り付いたゼロプレミアム水準の応札が続いたためです。このほか、長崎県五島市沖の浮体式(1.7万kW・36円/kWh)が2026年1月に運転を開始しています。
第1ラウンドの3区域は開発中止になった
第1ラウンドの3区域はすべて三菱商事コンソーシアムが2021年12月24日に選定されました。しかし2022年頃からの世界的な資材価格の高騰、サプライチェーンの逼迫、金利上昇により開発コストが大幅に上昇。同社は2025年2月3日に事業性の再評価を公表し、8月27日に3海域の開発中止を決定したと公表しました。
同社は「コスト、スケジュール、収入などあらゆる面において、当社として取り得る様々な手段・可能性を追求しながら事業性の再評価に取り組んで参りましたが、事業パートナー間で協議を行った結果、実行可能な事業計画を立てることは困難であるとの結論に至った」としています。国は洋上風力促進ワーキンググループで撤退要因を検証し、公募制度の見直しを進めています。
撤退は日本だけの現象ではない
2024年6月時点の予測では、世界の2024〜2028年の導入見通しは63GWから44GWへ約30%減りました。日本は規模こそ小さいものの、着実な導入が評価されて見通しは微増しています。
第4ラウンド以降は規律を強める
国は、収入・費用の変動に強い事業組成を促す方向で制度を見直しています。第4ラウンド以降の応札・落札事業者には、事業規律の強化とIRR(内部収益率)の引下げを一律に適用します。保証金は第1〜3ラウンドの公募占用指針で定めた水準の約2倍とし、遅延期間に応じて段階的に没収する仕組みへ変わります。
あわせて、収入・費用の変動に対応する価格調整スキームが導入されます。第1〜3ラウンドの選定事業者へ一律に適用すると事業の予見可能性を損なうため、見直しを受け入れる事業者にだけ適用し、その場合の価格調整は適用後の将来の物価変動のみを基準価格・調達価格へ反映する扱いです。
導入目標と、いま議論されていること
| 案件形成目標 | 2030年に10GW、2040年に30〜45GW(うち浮体式は2040年に15GW以上) |
|---|---|
| 2030年の電源構成 | 風力全体23.6GW(5%)、うち洋上5.7GW(1.8%) |
| 国内調達比率目標 | 2040年に65%(産業界目標) |
2026年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、洋上風力について「収入・費用の変動リスクに対応できる強靱な事業組成を促進し、洋上風力発電への電源投資を確実に完遂させるために必要な規律強化や環境整備を進める」としています。洋上風力促進ワーキンググループでは、PPA市場の活性化、脱炭素電源への需要喚起、海域の占用期間に係る予見性の確保、事業完遂に資する金融支援などが検討項目に挙がっています。