何を指す区分か
発動指令電源は、容量市場のオークションに参加する電源等を分けた4つの区分のうちの1つです。電力広域的運営推進機関の定義では、計量単位の期待容量が1,000キロワット未満の電源や、安定的な供給力を提供できない自家発電設備・デマンドレスポンス(DR)などを組み合わせることで、期待容量が1,000キロワット以上の供給力を提供するものを指します。組み合わせられるのは同一の供給区域内にあるものに限られます。
例として挙げられているのは、DR、自家発電設備、蓄電池・長期エネルギー貯蔵システム、その他です。名前のとおり、一般送配電事業者からの「発動指令」を受けて供給力を出すことが前提になっています。1つひとつは小さくても、束ねれば供給力として数えられるようにするための区分です。
4つの区分の中での位置
容量市場の電源等区分は、期待容量の大きさと、出力が自然条件で変わるかどうかの2つで分かれます。発動指令電源は、そのどちらの軸でも「小さい・安定しない」側に置かれます。
| 区分 | 要件 | 例 |
|---|---|---|
| 安定電源 | 計量単位の期待容量が1,000キロワット以上の安定的な供給力を提供するもの | 火力、原子力、大規模水力(調整池式・貯水池式・自流式・揚水式)、地熱・バイオマス・廃棄物、蓄電池・長期エネルギー貯蔵システム |
| 変動電源(単独) | 計量単位の期待容量が1,000キロワット以上の供給力のうち、自然変動電源に該当するもの | 水力(調整池式・貯水池式・自流式)、風力、太陽光 |
| 変動電源(アグリゲート) | 1,000キロワット未満の電源のうち、自然変動電源を組み合わせて期待容量1,000キロワット以上にするもの | 風力、太陽光 |
| 発動指令電源 | 1,000キロワット未満の電源や、安定的な供給力を提供できない自家発・DRなどを組み合わせて期待容量1,000キロワット以上にするもの | DR、自家発、蓄電池・長期エネルギー貯蔵システム、その他 |
蓄電池は置き場所が2つあります。1日1回以上、連続3時間以上の運転を継続できる能力があり、計量単位の期待容量が1,000キロワット以上なら安定電源としての参加が基本です。その条件を満たさないものが発動指令電源に入ります。
供給計画に載せられないものが入る
区分を分ける実務上の線
大きさの話とは別に、もう1本はっきりした線があります。供給計画の届出に係るガイドラインに沿って供給計画へ計上すべき電源等は、安定電源または変動電源として登録します。これに対し、供給計画に計上できない電源等が発動指令電源に登録できます。DRは供給計画に載せる性格のものではないため、この線でも発動指令電源の側に来ます。
ただし記録が要らないわけではありません。発動指令電源として落札した事業者は、発動指令電源の供給電力の計上内訳を、供給計画の別紙に記載して提出することが求められます。同じ設備でも、供給計画でのダム水位の扱いや調整係数の使い方によって区分が変わる場合があるため、登録の前に自社の供給計画上の扱いを確かめておく必要があります。
指令を受ける設備が要る
発動指令電源には、簡易指令システムまたは専用線オンラインのどちらかを備える必要があります。期限は対象実需給年度の3年度前の2月末までです。構築には工期がかかるため、広域機関は余裕のあるスケジュール設定を求めています。
容量を提供する電源等の区分、電源等リストの名称、系統コード、エリア名、発動指令時の連絡先(電話番号、メールアドレス、住所、所属部署)、オンライン指令です。連絡先が登録項目に入っているのは、指令が人へ届くことが前提だからです。
発動指令電源のリソース種類確認書に加えて、属地の一般送配電事業者とのオンライン指令による性能確認試験の結果か、電源Ⅰ'の契約書の写し等のいずれか1点です。後者は実効性テストの実施前までに出します。
実効性テスト
この区分だけに課される確認発動指令電源には、他の区分にはない手続きがあります。実需給年度の2年前に、夏季と冬季に実施する実効性テストです。指令に対して実際に供給力を出せるかを確かめるもので、ここで期待容量が確定します。
| 対象事業者 | 実施の目的 |
|---|---|
| メインオークションで容量確保契約書を締結済みの事業者(発動指令電源提供者) | リクワイアメントの1つであるため |
| メインオークションの非落札者で追加オークションに参加する事業者、または追加オークションから参加する事業者 | 追加オークションへの参加や、電源等差替の差替先として契約を締結するにあたり、実効性テストで期待容量を確定させる必要があるため |
落札済みの事業者にとっては契約上の義務(リクワイアメント)であり、達成できなければペナルティの対象になります。まだ落札していない事業者にとっては、追加オークションへ参加するための入口になります。同じ試験が、立場によって義務にも要件にもなるという構造です。
応札上限が4%から5%へ
発動指令電源には、他の区分と違って応札できる量の上限があります。この上限が2026年度メインオークション(対象実需給年度2030年度)から広がりました。従来はH3需要の4パーセントでしたが、H3需要の5パーセントになります。H3需要とは、各エリアで年間の最大需要が発生した上位3日の平均需要のことです。
広げた理由は調達の順序を変えたことにあります。これまで追加オークションで調達する予定だった供給力(H3需要の2パーセント分)を、メインオークションで全量調達することにしたため、その分メインオークション側の枠を広げる必要が出ました。2026年5月27日の容量市場の在り方等に関する検討会で議論されたものです。
上限を超えたときの決め方
応札容量の合計が上限を超え、しかも上限を超える点で同じ価格の応札が複数あった場合は、次の順で処理します。価格だけでは決まらないという点が、この区分の特徴です。
エリア需要の5パーセントを超過していないエリアは、すべて落札電源とします。
5パーセントを超過しているエリアについては、超過率が等しくなるように、そのエリアへ落札可能な容量を分配します。
エリア内の落札・非落札は、実効性達成率の高い順に決めます。達成率は、実効性テスト後の期待容量を、メインオークション契約時点のアセスメント対象容量で割って算出します。同じ条件の札があれば、最後はランダムに決めます。
実効性達成率が順位付けに使われるため、過去のテストの成績がそのまま次の落札可能性に効いてきます。テストを義務としてこなすだけの手続きにしていると、上限に張り付いたときに不利になります。
実績と読むときの観点
枠が広がる一方で、応札は枠に届いていません。2026年8月31日の第6回電力安定供給ワーキンググループで資源エネルギー庁が示した資料によると、実需給2027年度向けの発動指令電源の応札容量は47万キロワットで、応札上限容量321万キロワットを274万キロワット下回りました。枠の6分の1ほどしか埋まっていない計算になります。
読むときの観点は3つあります。1つは応札容量と応札上限容量の差で、需要側のリソースがどれだけ市場に出てきているかが分かります。2つ目は実効性テストの達成率で、契約した容量が実際に出せる容量とどれだけずれているかを示します。3つ目は登録の期限で、オンライン機能の具備が実需給の3年度前の2月末である以上、参加を検討する時点ですでに3年先の話になっているという点です。