今回の要点
休廃止予定の発電所を維持する補完オークション、LNG火力の収益還付、既設電源の非化石証書取引を検討しました。6本の実質資料から、対象と費用負担、適用時期、残る判断を整理します。
開催日:2026.10.07。この記事の公開日は2026.10.22です。
休廃止予定の発電所を維持する「補完オークション」の案
電気が足りなくなる見通しが出たときに備え、休廃止を予定する発電所を維持する仕組みを検討しています。通常の容量市場では、実際に電気を供給する4年度前に発電能力を確保します。その後に古い発電所が退出すると、新しい発電所が動くまでの間を補う必要があります。
事務局案の対象は、10万kW以上の休廃止予定の安定電源で、原則として火力を想定しています。容量市場へ入札しなかった電源、落札しなかった電源、落札後に退出した電源が候補です。稼働できる発電所はまず容量市場で競争する、という考え方は維持します。
| 項目 | 第7回事務局案 |
|---|---|
| 募集 | 毎年度、実際の供給が1〜3年後となる各年度を対象に募集。複数年の契約も可能 |
| 価格と精算 | 電源ごとの入札価格を使う方式。維持費と立ち上げ費用を実費で精算し、稼働で生じた利益は全額還元 |
| 使う場面 | 原則として需給が厳しいとき。回数・継続時間は電源の実態に応じて協議 |
| 費用 | 容量拠出金による回収を基本とし、予備電源に相当する部分は送配電会社の負担に準じる案を別途検討 |
追加オークションで確保した電源の稼働を優先し、補完オークションで契約した電源は適切な時点で立ち上げを判断する案です。追加オークションで求められる条件を満たす電源の入札方法や、両制度の価格形成への影響は検討が残ります。
出典:資料5「今後の供給力確保について」(PDF 2〜3・6・8〜9頁)
調達基準は約500万kWをリスク分の目安に
第6回WGでは、厳しい気象条件での需要に対して予備率3%を基準に5%までの確保を目指す考え方を整理しました。その後の広域機関の検討では、市場退出の過去最大533万kWから、追加オークションでの発動指令電源の応札最大47万kWを差し引いた486万kWが案として示されました。
第7回事務局案は、火力を中心とする対象範囲を踏まえ、安定電源・変動電源の退出実績と予備電源の役割を合わせ、予備率3%から見たリスク分の目安を約500万kWとしています。募集量や募集する地域は、需給見通しなどに基づいて具体化する段階です。
容量市場から退出した電源が補完オークションで契約する場合は、退出時のペナルティにも一定の配慮を検討します。通常の容量市場へ入札する方が有利になる条件を前提とし、制度間で意図的に移る行動を招かないよう整理する案です。
出典:資料5(PDF 4・8〜9頁)
予備電源の第3回募集は応札なし、役割と負担を整理
休止中の火力を緊急時に使えるよう維持する予備電源制度は、第3回募集で応札がありませんでした。募集期間は8月19日〜9月15日、対象は2027・2028年度に制度の適用を始める電源です。第1回も応札なし、第2回は西エリアの2電源・計136万kWが落札し、東エリアは応札なしでした。
事務局は、通常の容量市場で多くの電源が落札し、休止して予備として残せる候補が乏しかった可能性を挙げています。必要供給力と容量市場の調達量との差を補う役割は補完オークションへ統合し、大規模災害への備えは確保の必要性を見極める案です。
統合する場合も、予備電源に相当する維持費は従来の送配電会社による負担に準じることを検討します。地域への費用配分、立ち上げ費用、価格の妥当性を確かめる仕組みは、引き続き整理が必要です。
出典:資料4「予備電源について」(PDF 3〜8頁)
出典:資料5(PDF 4・6頁)
LNG火力の収益還付を5年・10年で固定する案
長期脱炭素電源オークションでは、発電所の建設・維持に必要な固定費に相当する収入を原則20年間確保する一方、卸市場などで得た収益の約9割を戻す仕組みがあります。LNG火力では、燃料を長期契約で買うと、稼働が減った際に燃料が余るリスクを負います。
事務局はLNG専焼火力を対象に、収益を戻す金額を事前に固定する選択肢を提案しました。事業者が売電や燃料調達を工夫して手元に残る収益を増やし、燃料の長期契約を結びやすくする狙いです。固定方式では市場収益が赤字のときも還付が必要です。過去の落札案件にも選択を認める考え方を示しています。
| 項目 | 5年間の固定案 | 10年間の固定案 |
|---|---|---|
| 還付額 | 年9,800円/kW | 年8,300円/kW |
| 算定に使う市場価格 | 2021〜2025年度 | 2016〜2025年度 |
| 平均設備利用率の試算 | 約60% | 約52% |
第4回の年8,000円/kW案に対し、長期の相対契約で売電する想定へ試算条件を見直しました。LNGの輸入価格であるJLCの年間平均を燃料費に使い、2020年12月〜2021年1月の市場高騰期を除外しています。0.01円/kWhの時間帯も市場価格の平均から除き、利用率を補正しています。
全国共通のシステムプライスを採る案です。地域ごとの価格を使った試算では、5年固定の還付水準が東京の年約1万6,900円/kWに対し九州は約1,200円/kWとなり、差が大きくなりました。全国共通額は仕組みを簡素にし、需給の厳しい地域への立地を促せる一方、市場価格の低い地域では固定方式を選びにくい課題があります。
運転開始年度に実績還付か固定還付を選び、固定なら5年か10年を選ぶ案です。固定期間が終わるごとに方式を再選択でき、還付額は再選択時の水準とします。一度実績還付を選ぶと固定還付へ移ることは想定していません。毎年度コアCPIで補正し、2031年度に制度を再評価する案です。今回設定する水準は、運転開始の4年前を目安に公表する整理により2034年度までに運転を始める電源へ適用する想定です。
応札価格は固定費全体で算定し、実績方式を選ぶ案件と同じ募集枠で競います。固定方式には還付逃れを防ぐ相対契約の規律を適用しない案です。水素混焼などへ改修する脱炭素化部分は実績還付を続ける整理です。
出典:資料3「長期脱炭素電源オークションについて」(PDF 5〜6・11〜13・16・19〜20頁)
既設電源と長期契約する企業の非化石証書に例外案
非化石証書は、化石燃料を使わずにつくった電気の環境価値を示す証書です。一部の大手電力グループには、証書をグループの中だけで取引する量に上限があり、他の小売会社も調達できるようにしています。
既設発電所と企業が長期契約を結ぶCPPAでは、企業が供給条件に合意した後、自ら小売会社を選ぶ仕組みがあります。選んだ小売会社が発電会社と同じグループだった場合の証書を、一定条件で外部調達として認める案です。企業による小売会社の選択を確保する狙いがあります。
条件は、発電会社が契約を希望する企業を広く募り、企業と発電会社が卸条件を合意した後に企業が独立して小売会社を指定すること、電気と環境価値を企業が受け取る事実を事務局が確認できることです。上限は、その小売会社の対象年度の販売電力量(送電端)の3%。2027年度の目標達成義務から適用し、第3フェーズ以降も続ける案です。
非FIT証書の認定実務は2027年度からJEPXへ移す案も示しました。認定主体は引き続き国とし、JEPXが設備・発電量の審査などを担う整理です。申請の増加に対応し、証書市場や証書の由来を追う業務と連携する狙いがあります。
出典:資料6-1「非化石価値取引について」(PDF 4・6・8〜10・13〜17頁)
証書市場の結果と2025年度の目標達成状況
2026年度第1回の非FIT証書は、再エネ指定なしが1.20円/kWh、再エネ指定ありが1.21円/kWhで約定しました。両方とも第1回として過去最高の価格水準です。FIT証書の約定量は約230億kWhで、1回のオークションとして過去最大でした。2026年度の証書需給見通しは、事業者への調査を踏まえて今後公表する予定です。
2025年度に非化石電源比率の目標を通知した59者のうち、56者が達成し、3者が未達でした。目標を通知していない18者を含め、達成計画の提出対象は77者です。
| 未達事業者 | 達成率 | 資料で示された主な理由と対応 |
|---|---|---|
| 出光興産 | 99% | 基準電力量の算定誤り。軽微な未達として法に基づく対応を行わない方針 |
| Looop | 71% | 証書の管理・調達量算定の誤り。勧告を行わず、個別の指導・助言を実施 |
| デジタルグリッド | 30% | 想定価格と実際の価格との差による予算不足等。初年度の事情と改善計画を踏まえ、勧告を行わず個別の指導・助言を実施 |
非FIT証書の販売収入については、水力発電所の改修、原子力発電所の安全対策や修繕などへの使途が報告されました。事業者ごとに配分の考え方が異なり、証書収入を超える投資は証書収入相当額までを集計しています。
出典:資料6-1(PDF 19〜22頁)
出典:資料6-2「2025年度の達成計画および証書収入の使途報告」(PDF 3〜9・15〜16頁)
残る判断
補完オークションの募集量・地域、予備電源を統合する範囲、退出ペナルティや価格規律、LNG火力の固定還付と証書取引の運用条件が次の確認点です。10月22日に確認した第7回の公式ページには議事録・議事要旨へのリンクがなく、ここで紹介した制度変更は事務局案として扱っています。
一次資料と次に確認すること
- 資料1 議事次第(PDF形式:77KB)
- 資料2 委員等名簿(PDF形式:98KB)
- 資料3 長期脱炭素電源オークションについて(PDF形式:2,851KB)
- 資料4 予備電源について(PDF形式:1,342KB)
- 資料5 今後の供給力確保について(PDF形式:1,365KB)
- 資料6-1 非化石価値取引について(PDF形式:2,939KB)
- 資料6-2 2025年度の高度化法に基づく達成計画および証書収入の使途報告について(PDF形式:2,203KB)
- 参考資料1 補完オークションについて(PDF形式:1,194KB)
議事次第・委員名簿は会合の情報として確認しています。議事録や要旨に記された結果がある箇所は本文で示し、配布資料だけの提案は事務局案として説明しています。
電力安定供給WG