審議会資料解説

第6回 電力安定供給WG容量拠出金と補完オークション

容量市場追加オークションの総括と監視結果、補完オークションの在り方、休廃止の事前協議の省令案が示されました。

更新日:2026.08.31

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会議情報

2026.08.31 第6回 電力安定供給WG

資料3-2・3-3で容量市場追加オークション(実需給2027年度)の総括と監視結果、資料4-1・4-2で2030年度までの追加供給力確保策と補完オークションの在り方、資料5で大規模電源の休廃止に係る事前協議の省令案が示されました。

出典:資源エネルギー庁「第6回 電力安定供給ワーキンググループ」

資料別の解説

資料3-3容量市場について(追加オークションの総括)開く

容量拠出金は1兆3,172億円へ

2026年6月3日から15日に実施された容量市場追加オークション(対象実需給年度:2027年度)について、資源エネルギー庁が総括を示しました。約定総容量は約458万kW(4,578,545kW)、エリアプライスは全エリアで10,361円/kW、経過措置等を踏まえた約定総額は約425億円(42,514,195,797円)です。経過措置考慮後の総平均単価は約9,286円/kWでした。

読者に効くのは拠出金の額です。2023年度メインオークションとあわせた実需給2027年度の容量拠出金は1兆3,172.2億円と試算され、2026年度実需給向けの8,771.2億円から4,401億円増えます。約定容量が1,725万kW増えたことと、総平均単価が上がったことが理由です。容量拠出金は小売電気事業者が負担し、最終的に電気料金へ乗ります。

追加オークション(実需給2027年度)の結果
約定総容量約458万kW(4,578,545kW)/応札容量も458万kW
エリアプライス全エリア 10,361円/kW
約定総額約425億円(経過措置等を踏まえた額)
総平均単価約9,286円/kW(2023年度メインAXは7,847円/kW、+1,439円/kW)
落札率100%(過去のメインAXは92.4〜97.6%)
確保した供給力1億9,280万kW(目標調達量1億9,397.9万kWを約118万kW下回る)

落札率100%が意味すること

過去のオークションでは、目標量を上回る応札や価格上限のために落札されない高経年の火力発電が残っていました。今回は応札された電源がすべて約定し、落札率が初めて100%になっています。裏を返せば、追加で積める電源がもう無い状態です。北海道は追加できる電源がなく、不足エリアのまま残りました。

エネ庁は要因を需要側と供給側に分けています。需要側では目標調達量が2024年度実施の追加オークションから999万kW増えました。内訳は追加設備量の見直しが778.5万kW、偶発的需給変動分が140.7万kW、全国H3需要が78.3万kWです。供給側では、容量確保契約を結んだ電源でも実需給までの4年間に採算悪化や老朽化で市場退出する例が、毎年度300万kW規模で発生しています。

エリアで上下が分かれた

同じ実需給年度に対応する2023年度メインオークションと比べると、北陸・関西・中国・四国が2,723円/kW、中部が2,538円/kW、東北が1,317円/kW、東京が806円/kWの上昇です。一方で北海道は2,926円/kW、九州は1,096円/kWの低下でした。発動指令電源の応札容量は47万kWで、応札上限容量321万kWを274万kW下回っています。

資料本体:資料3-3「容量市場について」(PDF)資料3-1「容量市場追加オークション約定結果」(PDF)

資料3-2容量市場2026年度追加オークションの監視結果開く

2社が指導を受けた

電力・ガス取引監視等委員会は「売り惜しみ」と「価格つり上げ」の2つの観点で監視しています。市場支配力を有する事業者が正当な理由なく応札しない、または電源の維持に必要な金額を不当に上回る価格で応札すると、本来より高い約定価格が形成され、「小売電気事業者が支払うべき容量拠出金の額が増加し、ひいては電気の使用者の利益を阻害するおそれがある」ためです。追加オークションは市場規模が小さいため、市場支配力を有する事業者は全事業者と定義されています。

確認された2件
東京電力リニューアブルパワー変動電源アグリゲート2,703kWの電源等情報の登録を失念し未応札。募集スケジュールを守れなかった未応札は正当な理由に当たらない。未応札容量を供給曲線の「容量市場外の見込み供給力控除量」へ織り込み、約定価格への影響を回避。再発防止策の策定などを指導
E-Flow合同会社応札価格の算定方法の一部に誤りがあり、「電源を維持するために必要な金額」を上回る価格で応札。再発防止策の策定などを指導

いずれも意図的とは認められず

委員会は2件とも意図的な行為とは認めていません。ただし結果として約定価格を押し上げ、容量拠出金を増やすおそれがあったため、再発防止策の策定と確実な実施を指導し、その旨をホームページで公表しました。東京電力リニューアブルパワーの件では、同社が応札を試みたものの、広域機関から市場管理者としての公平性・透明性の観点で受け付けられないという回答があり、応札はできていません。

監視の規模も示されました。応札しなかった電源は262件・3,189万kW、期待容量を下回る容量で応札した電源は16件・41万kWです。応札しなかった理由の区分では、FIT認定を予定しているなど入札対象外となる見込みが221件・621万kWと件数で最多、補修工事等で稼働見通しが不確実な区分が21件・2,045万kWと容量で最大でした。

資料本体:資料3-2「容量市場2026年度追加オークションの監視結果について」(PDF)

資料4-1今後の供給力確保について開く

2030年度までは既存電源で埋めるほかない

資源エネルギー庁は、本年6月に電力広域的運営推進機関が示した2026年度供給計画に基づく需給見通しについて、短中期的に安定供給へ必要な供給力の水準を確保できない可能性があるとしました。2030年度以前は容量市場のメインオークションが制度設計を含めて終了しており、予備電源の活用と、今後休廃止が見込まれる電源の活用を検討しなければ足りなくなるおそれがあるという整理です。

対象として挙がったのは、容量市場へ応札して非落札となった電源、落札後に実需給までに退出する電源、一定の合理的な理由により未応札となった電源です。あわせてディマンド・リスポンスなど需要側リソースの活用も引き続き検討します。

2030年度までの追加供給力確保策の方向性
実施時期実需給直前のN-1年度以内に加え、容量市場メインオークション終了後のN-3年度・N-2年度でも必要性を判断する
調達量の水準安定供給に最低限必要な予備率3%を確保したうえで、需給ひっ迫注意報を発する水準である予備率5%を目安とする
確保期間複数年約定を可能とする(例:2028〜2030年度の3か年。稼働期間は高需要期に限定することも想定)
2031年度以降容量市場と予備電源制度の整合を図りつつ、広域機関の協力を得て詳細な制度設計を検討する

なぜ「直前」では間に合わないのか

これまでのkW公募は、実需給の直前に必要性を判断してきました。しかし休廃止が見込まれる電源では、休廃止を見越して補修やメンテナンスの計画が絞られていることが多く、直前に声をかけても動かせる状態にありません。そこで、あらかじめ電源の維持と稼働に向けた予見可能性を確保し、時間的な余裕をもって供給力を押さえられる仕組みにします。

予備率の使い分けも整理されました。kW公募は厳気象H1需要に対応する観点から予備率3%を基準としてきましたが、今回は3%を必ず確保したうえで、調達量の水準としては予備率5%を目指すとしています。次回以降の会合では、現行制度の下で火力電源が休廃止判断に至る理由の分析が示される予定です。

資料本体:資料4-1「今後の供給力確保について」(PDF)

資料4-2中長期の需給見通しを踏まえた供給力確保策(補完オークション)開く

短期と中期を1つに束ねる

電力広域的運営推進機関は、短期の供給力確保策(kW公募の後継)と中期の供給力確保策を1つにまとめ、「容量市場(補完オークション)」と呼ぶことを提案しました。両者は「調達対象となる期間が異なるだけ」で、いずれもメインオークションや追加オークションを経てなお供給力が不足する場合を補う手段だからです。実需給1〜3年前の期間に対してまとめて募集し、複数年契約も可能とします。

調達の対象は、需給バランス評価で計上されていない供給力、つまり計画上は休廃止が予定されている高経年電源です。市場での収益が限定的で事業者が維持するインセンティブが働かないため、既存の確保策では確保しきれなくなっているという整理です。そこで、事業者がリスクを負わないよう、kW公募と同様にコストベース(収益還元を伴う)で一定程度のインセンティブ等を支払います。落札電源は、複数年契約も含めてトータルコストが最小となる組み合わせで決めます。

供給力確保策の比較(資料4-2より)
制度考え方約定方式主な対象電源募集時期適用期間
長期脱炭素電源AX供給力マルチプライス新設電源実需給4〜11年前原則20年間
メインAX供給力シングルプライス既設電源実需給4年前単年度
追加AX供給力シングルプライス既設電源実需給1年前単年度
予備電源準供給力マルチプライス既設電源(高経年)実需給2〜3年前1〜3年間
補完AX供給力マルチプライス既設電源(高経年)実需給1〜3年前1〜3年間

予備電源と一括で募集する案

表のとおり、補完オークションと予備電源は対象電源も募集時期も重なります。違いは供給力として確保するか準供給力として確保するかで、それは実需給断面での稼働の蓋然性の相対的な差にすぎないと広域機関は整理しました。この蓋然性は実需給が近づくにつれて変わるものでもあります。そこで、個別に募集して契約するより、必要に応じて立ち上げる可能性のある電源として一括で募集することも考えられるとして、国と連携して検討を続けるとしています。

今後の検討項目は3つです。中長期の需給見通しにおける調達基準、容量市場追加オークション・予備電源との関係、リクワイアメントなどの詳細要件。広域機関は「補完オークションは、あくまで安定供給を確保するためにコストベースで電源を維持または稼働する、メインオークションを補完するための仕組みである」と位置づけを念押ししています。

資料本体:資料4-2「中長期の需給見通しを踏まえた供給力確保策について」(PDF)

資料5大規模電源の休廃止に係る一般送配電事業者への事前協議について開く

改正電気事業法で新設された協議規定

7月17日に成立し24日に公布された電気事業法の一部を改正する法律(令和8年法律第68号)に、大規模発電事業者へ電源の休廃止前の協議を求める規定が盛り込まれました。改正後の第27条の28の2です。大規模な電源が休廃止すると一般送配電事業者は送配電網の増強などの対応が必要になる場合があり、その端緒となる情報を早期に把握できるようにするのが狙いです。第2項は、協議を求められた側は「正当な理由がある場合を除き、その求めに応じなければならない」と定めています。

協議規定において省令で定める内容(案)
対象電源10万kW以上の電源。同一の接続地点で同時に休廃止する複数電源の合計出力が10万kW以上となる場合は、複数電源を1つとみなす
対象事業者合計10万kW以上の電源を保有する発電事業者
実施時期休廃止予定日の12か月前まで
実施方法発電事業者が一般送配電事業者へ協議を申し込む。申込みを受けた側は協議に応じる旨の書面を送付する
協議事項対象電源の休廃止予定日

12か月前という期限の決まり方

現行制度では経済産業大臣への休廃止の事前届出が9か月前までとなっています。一般送配電事業者にとっては計画的な系統対策のため可能な限り早期が望ましい一方、発電事業者にとって休廃止情報は事業者間の競争や立地自治体への影響が大きく、時期には一定の制約があります。エネ庁は届出期限の9か月前を踏まえ、協議の期限をその手前の12か月前としました。10万kWという閾値は、休廃止の事前届出や適正な電力取引についての指針で既に使われている基準にそろえたものです。

協議は休廃止判断を縛らない

エネ庁は「協議」を、発電事業者があらかじめ休廃止の期日等を伝えて双方が意見を交わすことと定義し、協議によって発電事業者の自由な休廃止判断を阻害する効果が生じることは想定していないとしています。系統対策には複数年を要する場合があることから、協議に先立つ段階で一般送配電事業者から発電事業者へ定期的に休廃止等の見通しの情報収集を行う運用も示され、送配電等業務指針への明文化が想定されています。協議で知り得た情報は、情報の目的外利用の禁止などの行為規制の対象となることを明確化する規定が置かれました。

資料本体:資料5「大規模電源の休廃止に係る一般送配電事業者への事前協議について」(PDF)

会合から確認できること

この日の中心は容量市場でした。追加オークションは落札率が初めて100%になり、積める電源が尽きたことがはっきりしました。目標調達量には約118万kW届かず、実需給2027年度の容量拠出金は1兆3,172億円と前年度実需給向けから4,401億円増えます。足りない分をどう埋めるかの答えが補完オークションで、実需給1〜3年前をまとめて募集し、コストベースのマルチプライスで高経年電源を確保します。予備電源との一括募集も検討に入りました。あわせて、10万kW以上の電源は休廃止の12か月前に一般送配電事業者との協議が要ることになり、系統側が対策を打つ時間が制度として確保されます。