制度のしくみ

発電所の休廃止

発電所を止める、あるいはやめるときに踏む手続きです。これまでは経済産業大臣への事前届出が中心でしたが、2026年7月に成立した改正電気事業法で、10万kW以上の電源については、休廃止の前に一般送配電事業者と協議することが加わりました。送電線の増強などに時間がかかるため、系統側が先に知って手を打てるようにするための仕組みです。

更新日:2026.08.31

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なぜ手続きが要るのか

発電所をやめるかどうかは、事業者が自分で決めることです。国が続けろと命じる仕組みにはなっていません。ただし大きな電源が抜けると、その周りの送配電網に流れる電気の向きと量が変わり、一般送配電事業者は送電線の増強や運用の見直し、代わりの電源の公募といった対応を取る必要が生じます。

問題は時間です。系統の対策には複数年かかることがあります。休廃止を知るのが遅いほど、対応が間に合わなくなります。手続きは、この時間差を埋めるために置かれています。

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これまで:9か月前までの事前届出

従来からあるのは、経済産業大臣に対する休廃止の事前届出です。10万kW以上の出力減少を伴う場合が対象で、期限は休廃止の9か月前までとされています。届出先は国であり、一般送配電事業者へ直接伝わる建て付けにはなっていませんでした。

10万kWという数字は、この届出のほかにも使われています。現行の「適正な電力取引についての指針」では、電気の卸取引に関係し、卸電力市場の価格に重大な影響を及ぼす事実等の対象基準が10万kW以上とされています。大きな電源が動くかどうかは市場価格を動かすため、同じ水準で線が引かれてきました。

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2026年の法改正で加わった事前協議

電気事業法の一部を改正する法律(令和8年法律第68号)が2026年7月17日に成立し、24日に公布されました。この改正で新設されたのが、改正後の第27条の28の2による協議規定です。大規模発電事業者が大規模発電等用電気工作物の使用を休止または廃止しようとするときは、省令で定める日までに、電気の供給を受ける一般送配電事業者または配電事業者と協議しなければならないと定めています。

協議を求められた側にも義務が生じます。同条第2項は「前項の協議を求められた一般送配電事業者又は配電事業者は、正当な理由がある場合を除き、その求めに応じなければならない」としています。届出が国への一方通行だったのに対し、協議は当事者どうしが直接向き合う形です。

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省令で決める5項目

条文は具体的な数字を省令に委ねています。資源エネルギー庁は2026年8月31日の第6回電力安定供給ワーキンググループで、その内容の案を示しました。

項目省令で定める内容(案)
対象電源10万kW以上の電源。同一の接続地点で同時に休廃止する複数電源の合計出力が10万kW以上となる場合は、複数電源を1つとみなす
対象事業者合計10万kW以上の電源を保有する発電事業者
実施時期休廃止予定日の12か月前まで
実施方法発電事業者が一般送配電事業者へ協議を申し込む。申込みを受けた側は協議に応じる旨の書面を送付する
協議事項対象電源の休廃止予定日

接続地点でまとめて数える扱いに注意が要ります。1基あたりは10万kWに届かなくても、同じ地点で同時にやめる複数の電源の合計が10万kW以上になれば、まとめて1つとみなされて協議の対象に入ります。発電事業の届出でも「同一の接続地点に接続している二以上の発電等用電気工作物は、一の発電等用電気工作物とみなす」という扱いが採られており、それにそろえたものです。

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12か月前という期限の決まり方

2つの要請がぶつかる場所です。一般送配電事業者にとっては、計画的な系統対策のため可能な限り早いほうがよいことになります。一方、発電事業者にとって休廃止の情報は、事業者間の競争や立地自治体への影響が大きく、早く出すほど不利益が生じかねません。資源エネルギー庁はこの制約を認めたうえで、既にある事前届出の期限が9か月前であることを踏まえ、その手前の12か月前を協議の期限としました。

期限は「12か月前まで」であって、そこまで待てという意味ではありません。エネ庁は、発電事業者が協議可能となった場合にはその時点で協議を開始することが有益だとしています。さらに協議に先立つ段階でも、一般送配電事業者から発電事業者へ定期的に休廃止等の見通しの情報収集を行う運用が想定され、送配電等業務指針への明文化が検討されています。

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実務で確認する3点

第一に、協議は休廃止の可否を決める場ではありません。エネ庁は「協議」を、発電事業者があらかじめ休廃止の期日等を伝えて双方が意見を交わすことと定義し、協議によって発電事業者の自由な休廃止判断を阻害する効果が生じることは想定していないとしています。送配電側が運転継続を命じる仕組みではありません。

第二に、渡した情報の扱いです。電気事業法は一般送配電事業者に対し、情報の目的外利用の禁止や、特定の事業者を不当に有利に取り扱うことの禁止といった行為規制を課しています。協議で知り得た情報もこの規制の対象になることを明確化する規定が、今回の改正に盛り込まれました。

第三に、協議と届出は別の手続きです。12か月前の協議を済ませても、9か月前までの事前届出は従来どおり必要になります。省令の内容は案の段階であり、確定した内容は公布される省令で確かめてください。