審議会資料解説

第30回 原子力規制委員会玄海3・4号機の許可と運転中保全

玄海3号機・4号機の設置変更許可が決定され、運転中保全を計画的に実施できるようにする保安規定審査基準の改正案が了承されました。

更新日:2026.09.02

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会議情報

2026.09.02 第30回 原子力規制委員会

資料1で九州電力玄海原子力発電所3号機・4号機の発電用原子炉設置変更許可、資料2で運転中保全に関する保安規定審査基準の一部改正案と意見公募、資料4でCBRNEテロ対策のアクションプラン、資料5で原子力規制委員会人事戦略の策定が扱われました。資料3は帰還困難区域等の詳細モニタリング結果、資料6は令和9年度概算要求です。

出典:原子力規制委員会「令和8年度 第30回原子力規制委員会」

資料別の解説

資料1九州電力玄海原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可(3号及び4号発電用原子炉施設の変更)開く

国の地震評価が変わったので、審査をやり直した

地震調査研究推進本部地震調査委員会が「日本海南西部の海域活断層の長期評価(第一版)」を公表したことを受け、九州電力が知見を反映して地震動評価と津波評価をやり直したものです。申請は2024年7月25日、補正は2025年8月29日と2026年6月10日で、2026年7月15日に審査結果の案が示され、この日に許可が決定しました。

変わったのは2点です。基準地震動にSs-7を追加すること、基準津波を変更することです。技術的能力については既に許可をしたものから変更がないことを確認し、重大事故等対処に係る手順も変更がないため審査書での記載を省略しています。3号機と4号機の審査内容は共通するため、号炉ごとに分けずまとめて記載されました。

敷地に影響を及ぼす地震が15から18へ

長期評価の反映により、対馬南西沖断層群と第1五島堆断層帯の連動、白島沖断層帯と福智山断層帯の連動が新たに考慮され、敷地に影響を及ぼす地震は既許可の15地震から18地震になりました。検討用地震には壱岐北東部・警固断層帯による地震が加わっています。

基準地震動Ss-7による地盤評価の結果
基礎底面の地震時最大接地圧1.72N/mm2(評価基準値はⒷ級以上の岩盤の極限支持力13.7N/mm2)
基礎地盤の最小すべり安全率2.7(評価基準値1.5)
基礎底面の最大傾斜27,000分の1(評価基準値の目安は2,000分の1)

津波は上昇1.30m・下降0.84m

津波の検討波源は、推定津波高が1.0m以上となる4つが選ばれました。壱岐北東部・警固断層帯、西山断層帯、対馬南西沖断層群と第1五島堆断層帯の連動、白島沖断層帯と福智山断層帯の連動です。基準津波は水位上昇側・下降側とも「対馬南西沖断層群と第1五島堆断層帯の連動による地震に伴う津波」が選定され、断層のすべり量は11.05mとされました。基準津波の最大水位上昇量は1.30m、最大水位下降量は0.84mです。

基準津波は、施設からの反射波の影響が小さくなるよう、敷地北端から北方に約3km離れた水深約50mの地点で定義されています。水深データは最新の深浅測量結果と日本水路協会のM7000シリーズを基に作り直し、計算格子は最大1,600mから最小6.25mまで敷地に向かって細かくしました。行政機関の波源モデルを用いた津波シミュレーションとの比較でも、基準津波の水位変動量が上回ることを確認しています。

敷地に来る高さは+14.0m

基準津波の1.30mは沖合の定義位置での水位変動量で、敷地に届く高さとは別です。耐津波設計方針では、遡上解析の結果にもとづき、取水ピット前面の入力津波高さをT.P.+6.0mからT.P.+7.0mへ変更し、敷地北西側前面の入力津波高さを新たにT.P.+14.0mと設定しました。防護対象の施設がある敷地の高さはEL.+11.0m以上でT.P.+7.0mを上回り、T.P.+14.0mに対しては敷地北西側のEL.+16.0mの岩盤部が障壁になります。規制委員会は、この岩盤部について周辺斜面の安定性評価と同等の信頼性を持つ評価を行った結果、地震時および津波時にも津波防護機能を保持できるとした申請者の方針が津波ガイドを踏まえていることを確認しました。

九州電力は同じ日に「玄海原子力発電所における地震動及び津波の評価の見直しについて原子炉設置変更許可をいただきました」と公表しました。

資料本体:資料1「九州電力株式会社玄海原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可」(PDF)九州電力のお知らせ

資料2実用発電用原子炉及びその附属施設における発電用原子炉施設保安規定の審査基準の一部改正案及びその意見公募の実施開く

「やむを得ず」から「計画的に」へ

運転中保全は、原子炉を止めずに機器の点検や補修を行う保全方式です。現行の保安規定審査基準は、運転上の制限(LCO)が設定された設備について、予防保全を目的とした保全作業を「やむを得ず」行う場合に事前に講ずべき措置だけを定めていました。施設管理として計画的に行う場合の規定が無かったため、新たに設けます。

改正案は、実用炉規則第92条第1項第18号(発電用原子炉施設の施設管理)に第6号を新設します。施設管理実施計画にもとづき保全作業を行う場合、AOT内に完了すること、作業中に必要な安全措置を講ずること、あらかじめPRA等を用いて措置の有効性を検証することを、保安規定に定めるよう求める内容です。AOTは運転上の制限を逸脱した場合に要求される措置の完了時間を指します。

改正案と意見公募の概要
改正対象実用発電用原子炉及びその附属施設における発電用原子炉施設保安規定の審査基準(原規技発第1306198号)
新設する規定実用炉規則第92条第1項第18号に第6号を追加(計画的な運転中保全の事前措置)
意見公募の期間2026年9月3日から10月2日までの30日間
意見公募の方法電子政府の総合窓口(e-Gov)および郵送
施行期日意見公募手続後、委員会決定の日から施行

検査ガイドも同時に改める

報告事項として、基本検査運用ガイドの作業管理(BM0110_r2)に運転中保全の作業計画段階・実施段階に対する確認項目を追記し、r3へ改めたことが示されました。検査体制は日常検査を基本とし、運用開始後に事業者からの提案・質問が寄せられた場合には柔軟に対応します。作業計画段階のリスク管理は、深層防護を堅持することとリスク評価に応じてリスクを下げる措置をとることを基本項目とし、現場実証の経験を踏まえてリスク評価の確認方法や地震・津波を含めた包括的なリスク評価例も記載しました。施行日は審査基準の改正と同日です。

この先の段取り

検討は2026年3月18日の令和7年度第66回原子力規制委員会で始まりました。意見公募の終了後、提出意見への考え方とあわせて改正案が改めて付議されます。改正されれば規制側の対応が可能となり、事業者は施設管理実施計画に運転中保全の対象機器を位置付け、その計画が原子力規制検査の確認対象になります。現行の保安規定でもAOTの範囲内で計画的な保全作業は実施可能ですが、規制庁は8月26日の原子力エネルギー協議会等との面談で、事業者が記載の明確化のため保安規定変更認可申請を提出する予定であることを確認しています。

資料本体:資料2「保安規定の審査基準の一部改正案及びその意見公募の実施」(PDF)

資料3帰還困難区域等を対象とした令和7年度の詳細モニタリング結果開く

この資料は本記事で扱えていません

公開されているPDFのテキストが文字化けしており、内容を正確に読み取れませんでした。内容を確認できしだい追記します。資料は原子力規制委員会のページから閲覧できます。

資料本体:資料3「帰還困難区域等を対象とした令和7年度の詳細モニタリング結果」(PDF)

資料4CBRNEテロから国民を守り抜くためのアクションプラン(中間取りまとめ)の概要開く

政府横断の会議が中間取りまとめを決定

CBRNEテロは、化学・生物・放射性物質・核・爆発性物質を使ったテロの総称です。関係省庁の局長級職員で構成するCBRNEテロ対策会議が2026年1月23日に設置され、8月24日の第3回会議で中間取りまとめが決定されました。議長は内閣危機管理監、副議長は厚生労働省医務技監と内閣感染症危機管理対策官で、原子力規制庁も構成員として参加しています。

柱は4つです。司令塔機能の強化、対処能力の向上、危機対応医薬品等の確保の推進と医療提供体制の強化、その他CBRNEテロから国民を守り抜くための諸対策の推進。有識者からのヒアリング、関係機関の図上演習の教訓、議員連盟からの提言を踏まえています。

原子力規制庁に求められた対応(8項目)
専門的知見の活用専門家リストの作成・情報共有
人材育成研修の充実
脅威に応じた対処被害の可視化の程度等に応じた対処の徹底、被害が甚大に及ぶ事態への対処の徹底
医薬品危機対応医薬品等の搬送体制の具体化/事故・災害対処用の医薬品の備蓄を活用する枠組みの構築
連携除染・監視活動における連携強化
標的への対策CBRNEテロの標的となり得る場所等における対策の推進(原子力発電所等に対する対策の強化)
手段の封じ込め放射性物質の厳格な管理

なぜ今なのか

1995年3月20日の地下鉄サリン事件から30年余りが経過し、この間の科学技術の進展が背景に挙げられました。小型無人機が爆発物を用いた攻撃に悪用される事例が現れ、化学剤や生物剤の散布への悪用も懸念されています。悪意のある者が生成AIやケミカル・バイオ合成技術を悪用してCBRNE脅威を助長させる可能性、中東情勢の緊迫を受けたCBRNE兵器の拡散への懸念も示されました。訓練結果や科学技術の進展、国際情勢の変化に応じて見直す必要があることから「中間取りまとめ」と位置付けられており、規制庁は第4回会議等を通じてフォローアップに参加します。

資料本体:資料4「CBRNEテロから国民を守り抜くためのアクションプラン(中間取りまとめ)の概要」(PDF)

資料5原子力規制委員会人事戦略の策定開く

IAEAの勧告が引き金

2026年に受け入れたIAEAの総合規制評価サービス(IRRS)ミッションは、日本政府と規制委員会へ24の勧告と19の提言を示しました。勧告R2は「十分な数の適格かつ有能な職員の確保に向けた総合的な人材計画及び戦略を策定すべきである」、勧告R3は政府に対して職員の流動性の維持・促進と人事の柔軟性の向上を求めています。これを踏まえ、職員の人材育成の基本方針を全部改正する形で人事戦略が決定されました。

戦略案の作成にあたり示された職員データ
年齢構成50歳以上が約5割。40歳以上は経験者採用が約7割
職種別の偏り行政職技術系は50代以上が約55%、行政職事務系は30代が約13%
中間層30〜44歳が薄く、人事・会計における若手職員の教育者が不足
採用の傾向一般職技術系の採用者数に波があり、近年は審査官・検査官の採用が減少。高卒者採用は令和3年度から開始
応募の傾向審査・検査を希望する経験者採用の応募者は16%(令和5〜7年度平均)で2割を下回る
退職定年等による60歳以上の退職者が相当数。育成した30代の退職が痛手

3つの重点方針

目指すべき組織像は「人が出会い・育ち・つながり、多様な専門性で支え合う強靭な組織へ」です。重点方針は、人材の裾野拡大と採用の強化(出会う)、研修・配置・評価を連動させた人材マネジメントによる組織横断的な人材育成(育つ)、多様な職員が自律し活躍する職場環境の整備(つながる)の3つです。

具体策には、Web広告などデジタル媒体を使った広報の強化、学協会・大学など多様なチャネルの活用、若手職員の規制事務所配属の推進、事務系職員のキャリアパス拡充、TSO・大学等との人事交流、他省庁や自治体・民間との人事交流の促進とノーリターンルール・再就職等規制の課題整理が並びます。各部局は取組を年度業務計画等に記載し、毎年度のマネジメントレビューで実施状況を確認します。

職員アンケートの結果も判断材料になりました。令和7年度の調査では、コミュニケーション、業務の偏り、キャリア形成の項目で肯定率が低く、課題があるとされています。

資料本体:資料5「原子力規制委員会人事戦略の策定」(PDF)

資料6原子力規制委員会の令和9年度概算要求及び機構・定員要求等の概要開く

この資料は本記事で扱えていません

公開されているPDFのテキストが文字化けしており、金額や定員を正確に読み取れませんでした。数字を扱う資料なので推測では書きません。内容を確認できしだい追記します。

資料本体:資料6「原子力規制委員会の令和9年度概算要求及び機構・定員要求等の概要」(PDF)

トピックス原子力施設等におけるトピックス(令和8年8月24日〜8月30日)開く

伊方3号機で運転上の制限を逸脱

対象期間で報告されたのは1件です。四国電力伊方発電所3号機で、安全保護系の計器である過大温度ΔTの全4チャンネルのうち1チャンネルに不信頼を示す信号が発信し、8月26日22時10分に保安規定に定める運転上の制限から逸脱したと判断されました。残り3チャンネルの動作可能を確認して当該チャンネルをバイパスし、27日3時38分に逸脱から復帰しています。その後、入力部の基板を予備品に取り替えてバイパスを解除し、同日4時17分に通常状態へ戻りました。プラントへの影響と環境への放射能の影響はないとしています。

過大温度ΔTは、原子炉出力・加圧器圧力・一次冷却材温度から算出される制限値です。原子炉の出口と入口の温度差がこれを超えると原子炉の自動停止機能が動作します。原子炉等規制法第62条の3等にもとづく報告事案、海外トピックスはいずれも該当なしでした。

資料本体:トピックス(令和8年8月24日〜8月30日)(PDF)規制委による報告の受理

会合から確認できること

この日は決定が2件、了承が1件、報告が3件でした。決定のうち玄海3・4号機は、国の地震評価が更新されたことに事業者が追随し、基準地震動と基準津波を積み増して許可を得た形です。もう1つの決定である人事戦略は、審査・検査を担う人が5〜10年で大量に抜けるという足元の数字への手当てで、IAEAの勧告が背中を押しました。了承された運転中保全の審査基準改正は、原子炉を止めずに保全することを「例外」から「計画に位置付けるもの」へ移す変更で、意見公募を経て確定します。稼働率に効く話なので、事業者側の保安規定変更認可申請とあわせて追う価値があります。