何をする制度か
クリアランス制度は、原子力規制庁の説明によれば「施設等において用いた資材等に含まれる放射性物質について、原子力規制委員会が定める基準(クリアランスレベル)以下であることを確認して、『放射線による障害の防止のための措置』を必要としないものとして取り扱うことができる制度」です。確認を受けたあとは、通常の金属やコンクリートと同じように再利用したり処分したりできます。
確認を受ける前の資材等は、原子炉等規制法上「核燃料物質によって汚染された物」として扱われます。つまりこの制度は、規制の対象から外す境目を国が個別に確認して引く仕組みです。廃止措置が進むほど扱う量が増えるため、原子力発電所の解体で出る金属をどう処理するかという実務の中心にあります。
根拠になる法令
法律・規則・審査基準の3階建て核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号、原子炉等規制法)第61条の2第1項。「原子力事業者等は(略)原子力規制委員会規則で定める基準を超えないことについて、原子力規制委員会規則で定めるところにより、原子力規制委員会の確認を受けることができる」と定めています。
「工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものであることの確認等に関する規則」(令和2年原子力規制委員会規則第16号)。基準や手続きの中身はここにあります。
「放射能濃度についての確認を受けようとする物に含まれる放射性物質の放射能濃度の測定及び評価の方法に係る審査基準」。事業者が申請する測定・評価方法を、規制委が何を見て判断するかを定めたものです。2025年6月に改正されました。
誰が確認を受けられるのか
確認を受けられるのは「原子力事業者等」です。原子炉等規制法第57条の8で、製錬事業者、加工事業者、試験研究用等原子炉設置者、外国原子力船運航者、発電用原子炉設置者、使用済燃料貯蔵事業者、再処理事業者、廃棄事業者、使用者(およびそれぞれの旧事業者等)と定義されています。発電所を持つ電力会社だけに限られるわけではありません。
ここが実務上の争点になっています。廃棄事業者には廃棄物管理の事業許可を受けた者が含まれるため、電力会社以外の主体が廃棄物管理事業の許可を取れば、廃棄事業者としてクリアランス確認を受けられます。福井県が構想する解体廃棄物の集中処理を担う企業連合体をめぐって、法改正なしに範囲を広げるのは問題ではないかという意見が意見公募で寄せられ、規制庁は現行法の条文にもとづき可能だと回答しました。
2025年6月の審査基準改正
意図的な混合・希釈を防ぐ放射能濃度は「1グラムあたり何ベクレル」で測るため、濃度の高いものに低いものを混ぜれば数字は下がります。溶かして混ぜてしまえば、元がどうだったかは分かりにくくなります。この抜け道をふさぐのが2025年の改正でした。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2025年4月16日 | 令和7年度第4回原子力規制委員会が、意図的な混合・希釈の防止に係る規定を追加する審査基準の改正案と、意見公募の実施を了承 |
| 2025年4月〜5月 | 行政手続法第39条第1項にもとづく意見公募を30日間実施(e-Govおよび郵送)。提出意見は48件 |
| 2025年6月25日 | 第16回原子力規制委員会が提出意見への考え方を了承し、審査基準の改正を決定。決定後、同日施行 |
改正の中身は2点です。1つは、溶融その他の性状の変更をともなう処理をしてもクリアランスレベル以下になる見込みのない資材等について、意図的な混合・希釈の防止に必要な措置が講じられていることを明記したこと。もう1つは、これを放射能濃度の測定及び評価に係る品質マネジメントシステムに関する事項として、申請書と添付書類に記載するよう求めたことです。IAEAの安全指針「Application of the Concept of Clearance」(No. GSG-18)を踏まえた明確化と説明されています。
意見公募では「濃度を確認する前に溶融することを認めるべきではない」という趣旨の意見が多数寄せられました。規制庁は、意図的でない混合・希釈はこれまでの審査基準にある異物の混入等の防止措置で対応するものであり、申請があった場合には記載された措置が意図的な混合・希釈に当たらないことを含めて審査で確認する、と回答しています。
実際の申請では何を書くのか
事業者はまず、対象物の汚染状況を調べ、評価に使う核種と放射能濃度の決定方法、評価の単位を申請書に書いて認可を受けます。既往の認可案件では、運転履歴と核種分析の結果から評価対象核種を絞り込む形が取られています。
関西電力の大飯1・2号機の燃料取替用水などの案件では、二次的汚染の主要な放射性物質がコバルト60であり、その放射能濃度とクリアランスレベルの比が33分の1以下であることを確認したうえで、評価に用いる核種をコバルト60の1種類としました。ガンマ線を出す核種なのでゲルマニウム半導体検出器の波高分析器で測り、33分の1以下であることを確認できるよう、検出限界値相当が1グラムあたり2×10のマイナス3乗ベクレル以下になるように測定時間を約5万秒に設定しています。溶融を行う場合は、溶融炉の特性を考慮して評価単位(例:10トン)と均質化を踏まえたサンプリング方法を示します。
いま動いている論点
評価手法の標準化2026年9月3日の第24回CNO意見交換会で、原子力エネルギー協議会(ATENA)がクリアランスにおける放射能濃度評価手法の標準化を提案しました。「廃止措置の進展に伴い、大量かつ広範なクリアランス対象物の発生が見込まれる」ことが理由で、現在の手法では不確かさや長寿命核種の評価において保守性が過大となり、適切な評価が難しくなる恐れがあるケースもあるとしています。
既往の蓄積データを全プラントから集めて分析対象核種の選定の考え方を整理すること、核種組成比を評価する手順の標準化、不確かさの評価に係るデータ処理方法の標準化です。
2026年度に意見交換と方針整理を行って技術レポートを制定し、2027年度に学会標準規格化やエンドースの要否を判断、2028年度から2030年度に各社の審査で使う想定です。
過去の審査で論点になった、汚染履歴が一部不明な場合や複数系統を混在して保管している場合の対応方針も検討されています。ATENAはこれを優先的に取り組む案件に追加し、案件数は14件になりました。
読むときの注意点
クリアランスは規制の対象から外す手続きで、埋設して管理する低レベル放射性廃棄物とは行き先が違います。同じ解体工事から両方が出るため、記事では区別して読む必要があります。
測定及び評価の方法について認可を受ける段階と、実際に測って放射能濃度がクリアランスレベルを超えないことの確認を受ける段階があります。報道で「クリアランス」と一語で書かれていても、どちらの話かで意味が変わります。
確認前の物でも、規制法第58条・第59条にもとづき保安のために必要な措置を講じたうえで工場等の外へ運搬・廃棄することは可能です。運搬と廃棄の記録は法令にもとづき保存されます。