制度のしくみ

特定計量制度

計量法の検定を受けた電力量計を使わなくても、パワコンやEV充放電設備など「何を測っているか」を特定できる機器の計量値を、電気の取引や証明に使えるようにする制度です。2022年4月1日に施行されました。アグリゲーターがデマンドレスポンスで家庭の機器を1台ずつ動かすとき、機器ごとに検定済みメーターを追加する必要がなくなります。使うには経済産業大臣への事前届出が必要で、電気計器の精度と需要家への説明責任が条件になります。

更新日:2026.08.26

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検定済みメーターがいらなくなる場面

計量法では、電気の取引や証明で電力量を測るとき、検定に合格した「特定計量器」を使わなければなりません。家庭に付いているスマートメーターがこれにあたります。

ところが太陽光のパワーコンディショナー(PCS)やEVの充放電設備には、もともと発電量や充放電量を測る機能が備わっています。この値を取引に使いたい場合、従来は機器のとなりに検定済みメーターをもう1台付けるしかありませんでした。機器の種類ごとに新しい技術基準を作って検定する方法についても、経済産業省は「合理的でない」としています。

特定計量制度は、この重複を解く仕組みです。適正な計量を事前の検定で担保するのではなく、事前に届け出た事業者へ、計器の精度と需要家保護の義務を課すことで担保します。

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いつ、なぜできたか

根拠は2020年6月に成立したエネルギー供給強靱化法(令和2年法律第49号)です。分散型リソースの活用を進める環境整備として、電気計量制度の合理化が盛り込まれました。電気事業法に第103条の2(特定計量の届出等)が新設され、2022年4月1日に施行されています。

背景にあるのは、デマンドレスポンスやアグリゲーションビジネスへの期待の高まりです。需要家側の機器を束ねて電力の需給調整に使う商売では、機器1台ごとに「どれだけ動かしたか」を測って精算する必要があります。その計量コストが制度の側で重くなっていました。

制度の中身は、電気計量制度の学識経験者、製造事業者、消費者団体、認証・試験機関などからなる「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」で詰められました。

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対象になる計量、ならない計量

境目は「何の電気を測っているかを特定できるか」です。施行規則第132条の14が要件を定めています。

対象になる例 PCSで太陽光の発電量を測る。EV充放電設備で充放電量を測る。自動販売機の消費電力量を測る。分電盤で太陽光・蓄電池・EVをそれぞれ測る。マルチ入力PCSで合計の出力をまとめて測る場合も、計量対象がすべて特定されていれば対象になります。
対象にならない例 スマートメーターのように、その先で使う電気機器が多様で特定できない場合。貸しビルやアパートで住戸ごとに付けた子メーター。分電盤の分岐先がコンセントで、何がつながるか分からない場合。マルチ入力PCSで潮流の向きが異なり、適正に按分できない場合。

もう一つの要件が規模です。特定した機器の定格消費電力または出力電力が原則500kW未満であること。ただし、太陽光の出力よりPCSの出力が小さい、ブレーカーで遮断できるなど、取引に使う最大電力が500kW未満だと合理的に説明できる場合は、機器の定格値が500kW以上でも使えます。

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公差は取引規模に応じて7段階から選ぶ

特定計量に使う電気計器の誤差の許容範囲(公差)は施行規則第132条の18で定められ、届出者が取引規模に応じて選びます。検定のように一律ではなく、測る量が小さいほど緩い階級を選べる作りです。

階級使用前等検査時の公差使用中の公差
n10.5%0.9%
n21.0%1.7%
n32.0%3.0%
n43.0%4.0%
n54.0%5.0%
n65.5%7.0%
n78.0%10.0%

取引規模は4kW以下から500kW以下まで5区分あり、規模ごとに「届出者が任意で選べる範囲A」と「追加の条件を満たせば選べる範囲B」に分かれます。範囲Bを選ぶ場合は、計器の誤差が取引へ与える具体的な影響(金額など)を相手方へ説明するなど、範囲Aより丁寧な説明責任を果たすことが条件になります。これより誤差が大きい計器は使えません。

検定を受けない制度ですが、計量法第10条の正確計量の努力義務は変わりません。ガイドラインは「電気計器の誤差を特定の方向に偏らせるなど、特定計量に係る取引等の相手方の利益を意図的に損なう行為は行ってはならない」としています。

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届出者に課される義務

検定の代わりに事業者側へ回された義務です。守るべき相手は、その計量値で精算される需要家になります。

事前の届出と定期報告 氏名・住所、営業所、特定計量の内容(計器の型名、精度階級、計量対象、取引規模)、適正を確保するための措置、開始予定日を大臣へ届け出ます。開始後は取引件数、検査主体の適切性、計器の運用状況、苦情・異常の件数を定期的に報告します。
相手方への説明(15項目) 施行規則第132条の19が、検定証印のある計器を使う計量ではない旨、計器を特定する情報、誤差の範囲とその影響、費用負担、実施期間など15項目の説明を求めています。書面の交付その他の適切な方法で行います。
苦情処理と記録 窓口を設け、苦情の内容と処理の記録を2年間保存します。連絡先は開始前の説明に加え、自社のウェブサイトなどでも確認できるようにします。台帳の作成・保管、データ保存、改ざん対策も義務です。

基準に従っていないと国が認めたときは、大臣が特定計量の中止や方法の改善を命じられます(法第103条の2第3項)。逆に、このガイドラインを守っている限り、中止命令・措置命令は発動されない扱いになっています。

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IoTルート:スマートメーターの通信網に相乗りする

計量値をどう集めるかは別の問題です。機器ごとに通信回線を用意すると費用がかさむため、一般送配電事業者のスマートメーター通信網へ相乗りする経路が用意されました。資源エネルギー庁が2026年3月27日に第1.1版を公表した「特定計量(IoTルート)運用ガイドライン」が、その運用を定めています。

事業者が設置する計量器(特例計量器)を無線端末につなぎ、無線端末とスマートメーターの間の無線区間がIoTルートです。データはスマートメーターシステムから託送業務システムへ送られ、事業者間のシステム連携の仕組みで小売電気事業者などへ提供されます。1台のスマートメーターに接続できる無線端末は最大4台程度が想定されています。

提供されるのは月1回の確定値(30分値)で、速報値と差分計量は提供されません。需給調整市場へ調整力を出す場合は、リスト・パターン単位で月1回の実績が提供されます。無線端末の不具合でデータが欠測したときは、調整力の供出では受電点の小売電気事業者が補完データを提出し、期日までに提出されなければ一般送配電事業者が均等配分補正を行い、それもできないときはそのコマの電力量は0kWhとみなされます。

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実務で確認すること

サービスを提供する側 計量対象が本当に特定できるかを最初に確かめます。分電盤の分岐先がコンセントの場合は対象外です。複数のリソースを個別に計量して取引に使うなら、それぞれについて必要な試験を実施している必要があります。蓄電池だけ試験している場合、太陽光やEV充放電の計量値は取引に使えません。
契約する需要家側 説明を受ける15項目のうち、特に確認したいのは誤差の範囲と、その誤差が精算額へ与える影響です。範囲Bの公差(最大で使用前8.0%、使用中10.0%)が選ばれている場合は、金額などの具体的な影響の説明が条件になっています。苦情の連絡先と受付時間帯も開始前に示されます。

EV充電サービス、家庭の蓄電池やエコキュートを束ねた調整力の供出、卒FIT電源の余剰買取など、機器単位の精算をともなうサービスは、この制度を土台にしています。制度の詳細と届出の様式は資源エネルギー庁のページで確認できます。

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