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特集 旧一電の地域と経営

会社を知る 第8回 四国電力

四国電力
伊方と本州連系、電気と通信で支える地域

四国電力の歴史、伊方3号機と火力・水力、本州との連系、情報通信事業を紹介。2025年度のPL・BS・CFと坂出の電源計画、地域の需要・災害対応を解説します。

公開日:

目次
  1. 1 電気と情報通信を中心に事業を広げる
  2. 2 島内の電源開発と本州への接続
  3. 3 工場の電化と人口減少への対応
  4. 4 伊方3号機と調整できる火力・水力
  5. 5 電力収入の減少と情報通信の利益(PL)
  6. 6 設備投資と利益の蓄積が進む(BS)
  7. 7 設備投資が営業CFを上回った年度(CF)
  8. 8 坂出の新電源と通信・海外事業の拡大
  9. 9 連系線の運用と災害・作業安全への対応
  10. 10 地域の供給と成長分野への投資を続ける
  11. 参照資料

四国電力は、四国4県の生活と産業を支えながら、本州との電力取引や海外の発電、情報通信にも事業を広げています。発電では伊方3号機の運用と、火力・水力・他社からの受電の組み合わせが重要です。人口減少が進む地域で既存設備を維持し、工場の脱炭素化やデータセンターなどの需要を取り込むことが、今後の投資と収益に関わります。

財務の数値は、2025年度(2026年3月期)の連結決算を基本としています。

1 電気と情報通信を中心に事業を広げる

四国電力は高松を本拠に、発電と電気の販売を担います。四国電力送配電が地域のネットワークを運用し、STNetは光回線「ピカラ」や法人向け通信、データセンターなどを展開しています。グループには、エネルギーサービス、設備工事、海外発電への投資などの事業もあります。 〔 資料1 〕 〔 資料2 〕

グループの主な仕事
分野 主な役割 収益に関わる要因
発電・販売 電源を運用し、家庭・企業や他の事業者へ販売 伊方の稼働、水力の出水、燃料・市場価格
送配電 四国の送配電設備と本州連系を運用 地域需要、設備費、需給調整
情報通信 家庭・企業の通信、データセンター 契約数、設備利用、新たなサービス
エネルギー・国際 エネルギーサービス、海外発電など 投資先の運営と電力販売契約
建設・エンジニアリング 設備の設計・工事・保守 工事受注、施工力、資機材価格

中期経営計画2030は、電気と情報通信を中心に事業を伸ばす方針です。国内電力の収益を保ちつつ、データセンター、海外発電、建設・エンジニアリングなどの利益を積み上げる構成になっています。 〔 資料3 〕

2 島内の電源開発と本州への接続

1951年の設立以降、四国電力は水力・火力を整備して地域の需要増に対応しました。1965年に西条、1970年に坂出で火力の運転を始め、1977年には伊方1号機が原子力発電を開始しました。1994年に運転を始めた伊方3号機が、現在の原子力の中心です。 〔 資料2 〕

電源とネットワークの主な節目
年 出来事 供給体制への意味
1951年 四国電力の設立 四国の電力供給を担当
1962年 中四幹線が22万Vで運転開始 本州との広域運用を拡大
1965年 西条発電所の運転開始 工業地域への供給を拡充
1970年 坂出発電所の運転開始 大規模火力を整備
1977年 伊方1号機の運転開始 原子力を電源に追加
1994年 伊方3号機の運転開始 89万kWの原子力電源を確保
2000年 阿南紀北直流幹線の運転開始 関西との電力融通を拡充

現在の四国は、中国地方と本四連系線、関西と阿南紀北直流幹線で結ばれています。四国の電源を運用する際にも、本州へ送る電気と本州から受け取る電気を含めて需給を管理します。連系線の設備と操作手順が、地域全体の安定供給に関わる仕組みです。 〔 資料2 〕

3 工場の電化と人口減少への対応

瀬戸内側には製紙、化学などの工場が集まっています。四国中央市の紙・パルプ産業をはじめ、工場では電気と熱の両方を使い、自家発電設備を持つ事業者もあります。脱炭素化に向けた設備更新は、電力会社から購入する電気やエネルギーサービスへの需要を変える要因になります。 〔 資料3 〕 〔 資料5 〕

一方、中期経営計画は、人口や世帯の減少、世帯当たりの電力消費の減少を事業環境の変化として挙げています。既存の需要を支えながら、工場の電化、データセンターなどの新たな需要を獲得することが経営の課題です。 〔 資料3 〕

2025年度の小売販売電力量は228.9億kWhで、契約電力の増加などにより前年度を0.8%上回りました。卸販売は114.5億kWhとなり、小売と卸を合わせた総販売電力量は343.5億kWhでした。卸では相対契約による販売が減り、総販売量は前年度を下回っています。 〔 資料1 〕

山間部や沿岸部への供給では、需要の規模にかかわらず、設備の保守と災害対応を続ける必要があります。地域の工事会社や自治体との連携を保ち、更新する設備の順序と施工力を合わせることが、長期の供給体制につながります。 〔 資料2 〕

4 伊方3号機と調整できる火力・水力

伊方3号機の出力は89万kWです。2025年度は設備利用率81%、発電量60.4億kWhとなりました。同年度の自社火力は86.8億kWh、水力は16.3億kWhです。他社からは197.9億kWhを受電しており、複数の電源・調達先で供給を組み立てています。 〔 資料1 〕 〔 資料2 〕

原子力の運営は3号機1基が中心となるため、定期検査や保守の工程が収支に大きく関わります。伊方では2025年度に、一部の点検を運転中に行う保全方法を検証しました。2026年度以降の正式導入に向けた検討を進め、定期検査中の作業の集中を減らし、技能を継承しやすい体制を目指しています。 〔 資料10 〕

水力は降水量の影響を受けます。2025年度は出水率が99%から80%へ低下し、自社水力の発電量は24.5%減少しました。降水量と原子力の運転状況に応じて、火力の運転や外部調達を調整する必要があります。 〔 資料1 〕

火力では坂出のLNG、西条などの石炭を使い、需要や再エネの変動に対応します。坂出5号機には高効率LNG火力を計画し、水力では既存設備を更新する機会に出力を高める取り組みを進める方針です。 〔 資料2 〕 〔 資料3 〕

燃料の手配では、2026年10月7日に石炭の配船計画を作るAIシステムの本格運用を始めました。発電所の在庫、船の運航、契約や港湾の条件を組み合わせて、調達する時期・数量を決めます。四国電力と開発会社は、導入前の検証で数億円規模の燃料調達費の削減を見込めると発表しています。 〔 資料7 〕

5 電力収入の減少と情報通信の利益(PL)

連結損益計算書の主な項目(億円)
項目 2024年度 2025年度
売上高 8,514.0 7,618.6
営業利益 890.7 678.5
経常利益 916.1 678.9
親会社株主に帰属する当期純利益 683.2 508.1
支払利息 62.6 74.0

出典: 〔 資料1 〕

営業利益・経常利益・最終利益

2025年度・連結、単位:億円

マイナス プラス
営業利益 678.5
経常利益 678.9
最終利益 508.1

出典: 〔 資料1 〕

2025年度の売上高は7,618.6億円、経常利益は678.9億円でした。小売では燃料費調整額の減少、卸では容量確保契約金額の減少などによって収入が減りました。容量確保契約による収入は、発電できる能力を確保する対価です。 〔 資料1 〕

燃料費や購入電力料が減り、退職給付に関する費用も減少しましたが、収入の減少が上回りました。電気事業の修繕費は687億円から757億円へ増えています。伊方の稼働が増えた効果に、料金・契約と維持費の変化が重なった決算です。 〔 資料1 〕

事業別の経常利益は、発電・販売348.9億円、送配電85.4億円、情報通信112.9億円、エネルギー53.7億円、建設・エンジニアリング51.8億円でした。情報通信は前年度の106.2億円から増え、グループの利益を支えています。 〔 資料1 〕

6 設備投資と利益の蓄積が進む(BS)

連結貸借対照表の主な項目(金額は億円)
項目 2025年3月末 2026年3月末
総資産 16,874.8 17,343.6
固定資産 13,410.8 14,266.4
建設仮勘定及び除却仮勘定 325.6 693.8
負債合計 12,466.4 12,568.3
純資産 4,408.4 4,775.3
自己資本比率 26.0% 27.4%

出典: 〔 資料1 〕

2026年3月末の総資産は1兆7,343.6億円、純資産は4,775.3億円でした。自己資本比率は26.0%から27.4%へ上昇しています。事業用資産が増える中でも、利益の蓄積によって自己資本を増やしました。 〔 資料1 〕

建設仮勘定及び除却仮勘定は325.6億円から693.8億円へ増えました。発電、送配電、通信などに投資するための資金が必要となり、社債・借入金の合計は9,272億円となっています。支払利息も62.6億円から74.0億円へ増加しました。 〔 資料1 〕

中期計画では、自己資本比率を最低限25%確保する方針です。投資に使う資金と、設備の故障や燃料価格の変動に対応する資本を確保しながら、国内外の事業を伸ばすことを目指しています。 〔 資料3 〕

7 設備投資が営業CFを上回った年度(CF)

キャッシュフロー(CF)は、事業、投資、資金調達による現金の出入りです。2025年度の営業CFは822.9億円、投資CFは1,500.1億円の支出でした。両者の合計は677.2億円のマイナスです。 〔 資料1 〕

2025年度の連結キャッシュフロー(億円)
項目 金額
営業活動によるCF 822.9
投資活動によるCF −1,500.1
財務活動によるCF 153.8
期末の現金及び現金同等物 785.5
事業・投資・資金調達による現金の動き

2025年度・連結、単位:億円

マイナス プラス
営業活動によるCF 822.9
投資活動によるCF −1,500.1
財務活動によるCF 153.8

出典: 〔 資料1 〕

会社の内訳では、投資CFのうち設備投資が約1,241億円、投融資が約258億円でした。設備投資の支出は前年度の約774億円から増えています。社債・借入金を純増調達し、配当と自己株式取得を行った結果、財務CFは153.8億円の収入となりました。 〔 資料1 〕

期末の現金及び現金同等物は785.5億円です。今後の電源更新や情報通信への投資では、工事代金を支払う時期と、電力販売・サービス料金で現金を回収する時期を合わせて管理する必要があります。 〔 資料1 〕 〔 資料3 〕

8 坂出の新電源と通信・海外事業の拡大

坂出5号機は、約60万kWの高効率LNG火力として2031年度の運転開始を予定しています。古くなった火力の将来的な代替を見据え、電気を安定供給する能力と出力調整の機能を確保する計画です。将来の水素利用にも対応できる設備を目指します。 〔 資料2 〕 〔 資料3 〕 〔 資料6 〕

石油火力の阿南3号機は2026年6月に廃止しました。坂出3号機は2027年度下期をめどに廃止する予定です。旧設備の廃止と新たなLNG火力の建設を進め、電源の構成を変えていきます。 〔 資料10 〕

2030年度へ向けた事業の方向
分野 取り組み 経常利益の目標
発電・小売 伊方の安全な運用、電源更新、販売拡大 300億円程度
送配電 設備更新と再エネ受入れ、運用の高度化 70億円程度
情報通信 ピカラ、データセンター、新技術を使うサービス 120億円程度
国際 海外発電の収益改善と新分野への参画 80億円程度
建設・エンジニアリング等 施工力の確保と域外受注 50億円程度

グループ全体の経常利益目標は650億円以上、ROEは8%以上、ROICは3.5%以上です。ROEは自己資本に対する利益、ROICは事業に投じた資金に対する利益を表します。電気、通信、海外などの事業ごとに投資効率を管理する方針です。 〔 資料3 〕

情報通信では、STNetが高松市のデータセンター「Powerico」の2棟目で、液体を使ってサーバーを冷やす設備の工事を進めています。生成AIなどの処理に使う高発熱のサーバーに対応し、2027年1月の完工を予定しています。新たなAI用データセンターや、高速・大容量の光ネットワークの利用も検討しています。 〔 資料10 〕

国際事業では、2026年9月にタイの電力・蒸気供給会社Amata B.Grimm Power Limitedの株式15%を取得しました。同社は工業団地などでガス火力や太陽光発電を運営し、電力の卸売・小売と蒸気の販売を行っています。四国電力は、発電所の建設・運転・保守の経験を生かして事業運営に加わります。 〔 資料8 〕

9 連系線の運用と災害・作業安全への対応

2024年11月9日には、四国で最大36万5,300戸、最長約1時間半の停電が発生しました。阿南紀北直流幹線の操作について四国・関西の送配電会社間で認識が食い違い、関西へ流れる電気が急増して四国内の電力が不足し、周波数が低下しました。これに対応する保護装置が作動し、一部地域への供給が止まりました。両社は操作に関する取り決めの見直しや制御装置の改造を進めています。 〔 資料2 〕

連系線は広域で電気を融通するための設備です。その運用には、関係会社間で操作内容と系統の状態を共有し、想定どおりに制御できることが必要です。設備の増強とともに、手順、訓練、確認方法を維持する仕事が重要になります。 〔 資料2 〕

伊方では、2025年7月に使用済燃料の乾式貯蔵施設の運用を始めました。金属製の容器に燃料を収め、空気の自然対流で冷やす仕組みです。運転と燃料の保管、設備の保守を継続し、立地地域へ状況を伝えることが原子力事業の責任になります。 〔 資料2 〕

自然災害では、台風や地震に備えた設備対策に加え、道路や通信が使いにくい状況での復旧体制が必要です。2025年3月の今治市周辺の山林火災では、他地域の送配電事業者からも応援を受け、電源車や作業員を集めて停電に備えました。 〔 資料2 〕

作業の安全管理も課題です。2026年9月9日、四国電力送配電の従業員が鉄塔の巡視点検中に転落し、亡くなりました。同社は9月18日、第三者委員会を設置する方針を発表しました。事故に至る経緯、職場環境や指導状況、安全配慮義務の履行状況などを調べ、結果を踏まえて再発防止策を講じるとしています。 〔 資料9 〕

10 地域の供給と成長分野への投資を続ける

2026年度第1四半期は、経常利益269.7億円、最終利益197.3億円でした。伊方3号機は前年同期と同様にフル稼働し、水力の発電量も増加しました。7月31日時点の通期予想は、経常利益400億円、最終利益300億円です。 〔 資料4 〕

今後は、伊方の保守と稼働、坂出5号機の準備、送配電の設備更新を進めながら、情報通信と海外の収益を伸ばせるかが焦点になります。投資CFの支出と営業CF、自己資本比率を追うことで、投資を支える財務の状態も把握できます。

四国電力には、人口が減る地域でも供給を維持し、工場の電化や新たな産業の立地を支える役割があります。電気と通信の設備・人材を使い、地域の暮らしと企業の需要を具体的な事業へつなげていくことが経営の方向です。

参照資料

  1. 資料1 四国電力 2026年3月期決算短信

    2026年4月30日。本文pp.2–5、8–15、17。連結PL・BS・CF、発受電量、事業別利益。

  2. 資料2 よんでんグループ 統合報告書2025

    本文pp.12、16–17、37–45。沿革、電源・連系線、伊方、火力、停電対応、情報通信。

  3. 資料3 よんでんグループ 中期経営計画2030

    2025年9月。pp.15–19、22–27。2030年度目標、人口・需要、電源更新と成長分野。

  4. 資料4 四国電力 2027年3月期第1四半期決算短信(期中レビュー完了版)

    2026年8月7日。7月31日公表値から変更なし。四半期実績と2026年度予想。

  5. 資料5 四国電力 個人投資家向け説明資料

    2026年1月。四国の産業、地域の需要と事業の特徴。

  6. 資料6 坂出発電所5号機建設計画 環境影響評価方法書

    2025年8月26日。LNG火力約60万kW、2031年度の運転開始を予定。

  7. 資料7 石炭配船計画策定業務におけるAI最適化ソリューションの本格運用の開始について

    2026年10月7日。本格運用の開始、計画条件、導入前の検証による費用削減の見込み。

  8. 資料8 タイ国における工業団地向けユーティリティ事業[電力・蒸気供給]への参画について

    2026年9月17日。ABPLの株式15%の取得、工業団地向け電力・蒸気供給への参画。

  9. 資料9 四国電力送配電 従業員の鉄塔転落死亡事案に伴う第三者委員会の設置について

    2026年9月18日。9月9日の死亡事案と第三者委員会の設置方針、調査対象。

  10. 資料10 よんでんグループ 統合報告書2026

    2026年10月9日公表。本文pp.34–35、40。伊方の運転中保全、火力の廃止・新設、データセンターの液冷化工事。