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特集 旧一電の地域と経営

会社を知る 第9回 九州電力

九州電力
原子力・再エネと半導体需要、持株会社への移行

九州電力の歴史、原子力・地熱・太陽光と半導体需要の関係を紹介。2025年度のPL・BS・CF、キューデンホールディングス設立、電源・送配電への投資を解説します。

公開日:

目次
  1. 1 2026年10月に持株会社を設立
  2. 2 石炭・水力から電源を多様化
  3. 3 半導体・データセンターが需要を変える
  4. 4 原子力4基と再エネを組み合わせる
  5. 5 火力の運用と託送収益が増益に寄与(PL)
  6. 6 利益を蓄積し、大きな設備資産を支える(BS)
  7. 7 営業CFを電源・送配電などへ投じる(CF)
  8. 8 既存電源の更新と需要増への供給力
  9. 9 原子力の対話とグループの監督
  10. 10 需要の伸びを収益と財務改善につなげる
  11. 参照資料

九州電力は、北部の工業地帯と南部の水力を結ぶ電力網を整備し、原子力、地熱、LNGなどへ電源を広げてきました。現在は半導体工場やデータセンターの立地が、地域の電力需要を増やす機会になっています。2026年10月にはキューデンホールディングスが設立され、電気、再エネ、海外、通信、都市開発への資金配分をグループ全体で見直す段階に入りました。

財務の数値は、2025年度(2026年3月期)の連結決算を基本としています。

1 2026年10月に持株会社を設立

九州電力は福岡を本拠に、発電と電気販売を担います。2026年10月1日には、その親会社としてキューデンホールディングスが設立されました。持株会社はグループの経営方針、資金・人材の配分、各社の監督などに集中する役割を持ちます。 〔 資料3 〕

体制移行の次の段階は2027年4月です。九州電力の水力発電事業を九電みらいエナジーへ、都市開発事業を九電都市開発へ移し、主要6社を持株会社が直接保有する構成に再編する計画です。都市開発事業の移管に向け、2026年10月1日には分割準備会社の九電都市開発を設立しました。事業の移管日は2027年4月1日を予定しています。 〔 資料3 〕 〔 資料8 〕

主な会社と役割
会社 主な事業 体制移行の要点
九州電力 原子力・火力、電気の小売 地域の発電・販売を担当
九州電力送配電 送配電設備と需給運用 九州のネットワークを運営
九電みらいエナジー 再生可能エネルギー 2024年に地熱を統合。2027年4月に水力を移管予定
キューデン・インターナショナル 海外の発電・送配電など 国内外の技術・運営経験を使って展開
QTnet 通信・データセンターなど BBIQなどの家庭向けと法人向けサービス
九電都市開発 不動産開発・運営 2027年4月に九州電力の都市開発事業を承継予定

持株会社への移行には、事業ごとの判断を速め、グループ全体では投資先を選ぶという狙いがあります。発電や送配電に必要な資金を確保しながら、再エネ・海外・通信・都市開発の事業を拡大する体制です。 〔 資料3 〕

2 石炭・水力から電源を多様化

1951年に創業した九州電力は、工業地帯のある北部と、水資源のある南部を送電線で結びました。1955年に上椎葉の水力、1956年に苅田の石炭火力が運転を始めています。戦後の産業復興と家庭の電化を支えるため、電源と送電網を一緒に整備しました。 〔 資料3 〕 〔 資料5 〕

電源と事業の主な節目
年 出来事 現在へのつながり
1951年 九州電力の創業 九州の電力供給を担当
1955年 上椎葉発電所の運転開始 河川の資源と水力技術を活用
1967年 大岳地熱発電所の運転開始 火山地域の地熱資源を事業化
1975年 玄海1号機の運転開始 原子力を導入して燃料を多様化
1977年 新小倉1・2号機をLNG専焼へ改造 石油からの燃料転換
1987年 九州通信ネットワークなどを設立 現在の通信事業の基盤を形成
2015年 川内1・2号機が通常運転へ復帰 新規制基準下の原子力運用を開始
2020年 九州電力送配電を分社化 ネットワーク運営を分離
2026年10月 キューデンホールディングス設立 グループ経営と各事業の運営を分担

石油危機を経て原子力・LNGへ電源を分散し、1990年代以降は海外発電などにも進出しました。再エネでは九州の地熱や水力の経験を持ち、太陽光・風力・バイオマスも扱っています。複数の電源と地域に事業を持つことが、現在のグループの基盤です。 〔 資料3 〕

3 半導体・データセンターが需要を変える

九州では半導体関連工場やデータセンターの立地が進み、電気を大量に使う設備が増えています。こうした設備には、操業時期に合わせて大きな電力容量を確保し、安定して供給する必要があります。発電所と送配電設備の両方で準備を進める仕事です。 〔 資料3 〕

グループは独自調査などを踏まえ、2035年度の九州エリアの電力需要が2025年度の1.2〜1.3倍になる可能性を想定しています。企業の立地や設備投資計画を含めた会社の見通しであり、今後の接続・供給計画を考える材料になっています。 〔 資料3 〕

地域全体の需要と、自社が販売する量には別の動きもあります。2025年度のグループの小売販売電力量は686億kWhで、域内の契約電力減少などにより9.3%減りました。卸売は296億kWhへ増え、総販売量は983億kWhでした。需要の増加を自社の契約と利益へ結びつける営業も必要です。 〔 資料2 〕

新しい工場が求める電気には、料金と供給の安定性に加え、発電に伴うCO₂の削減という条件があります。原子力・再エネの電気や環境価値を提供し、工場の電化や省エネも支援することで、地域の産業投資との関係を深めています。 〔 資料3 〕

4 原子力4基と再エネを組み合わせる

原子力は玄海3・4号機と川内1・2号機の4基を運用する体制です。2025年度のグループの原子力発電量は286億kWh、設備利用率は82.3%でした。同年度の火力は241億kWh、水力は47億kWh、新エネルギー等は14億kWhとなっています。 〔 資料2 〕 〔 資料3 〕

原子力が稼働すると、火力の燃料や外部から調達する電気を減らせます。2025年度は原子力発電量が前年度より22億kWh減り、会社の分析では利益を180億円減らす要因となりました。複数炉の検査工程と安全な運用が、収益に直接関わります。 〔 資料2 〕

再エネでは、地熱・水力の継続的な運転と、天候に応じて変動する太陽光・風力の利用を組み合わせます。九州では太陽光の発電が多く、需要に対して供給が余る時間帯への対応も必要で、火力の調整、揚水、地域間の融通、出力制御などを使って需給を保っています。 〔 資料2 〕 〔 資料3 〕

2025年10月には、新しい中国九州間連系設備の工事を始めました。地域間で融通できる能力を高めることは、再エネの出力制御量を減らし、災害への備えを強める取り組みにもなります。 〔 資料3 〕

5 火力の運用と託送収益が増益に寄与(PL)

連結損益計算書の主な項目(億円)
項目 2024年度 2025年度
売上高 23,568.3 22,472.1
営業利益 1,995.6 2,248.5
経常利益 1,946.7 2,070.6
親会社株主に帰属する当期純利益 1,287.7 1,545.4
支払利息 300.3 344.6

出典: 〔 資料1 〕

営業利益・経常利益・最終利益

2025年度・連結、単位:億円

マイナス プラス
営業利益 2,248.5
経常利益 2,070.6
最終利益 1,545.4

出典: 〔 資料1 〕

2025年度の売上高は2兆2,472.1億円、経常利益は2,070.6億円でした。小売販売量が減る中でも、託送収益の増加と火力の発電単価低下などで経常利益は6.4%増加しました。 〔 資料1 〕 〔 資料2 〕

会社の利益増減の整理では、小売販売量の減少が400億円、原子力の稼働状況の変化が180億円の減益要因でした。託送収益の増加は230億円、火力発電単価の低下は190億円、卸売量の増加は100億円の増益要因です。 〔 資料2 〕

火力では、LNGから石炭への発電構成の変化などが費用を減らしました。燃料・電力価格と設備の状態に合わせて運転を組み替えることが収益に表れています。会社が燃料費調整の時間差の影響を除いて整理した経常利益は、約1,990億円でした。 〔 資料2 〕

最終利益は1,545.4億円です。前年度に計上した減損損失や関係会社事業損失の合計138億円が当年度にはなく、最終利益の増加にも寄与しています。 〔 資料1 〕 〔 資料2 〕

6 利益を蓄積し、大きな設備資産を支える(BS)

連結貸借対照表の主な項目(金額は億円)
項目 2025年3月末 2026年3月末
総資産 57,740.3 59,833.4
固定資産 48,684.7 50,525.3
建設仮勘定及び除却仮勘定 3,019.0 2,955.9
負債合計 47,427.4 47,574.6
純資産 10,312.8 12,258.8
自己資本比率 17.3% 19.9%

出典: 〔 資料1 〕

2026年3月末の総資産は5兆9,833.4億円、純資産は1兆2,258.8億円でした。自己資本比率は17.3%から19.9%へ上昇しています。2025年度の利益を積み重ね、資本を増やしました。 〔 資料1 〕

固定資産は5兆525.3億円で、発電と送配電を中心に多額の設備を持っています。支払利息は300.3億円から344.6億円へ増えました。統合報告書でも、有利子負債残高が約3.7兆円あることを、成長投資の資金配分を考えるうえでの課題に挙げています。 〔 資料1 〕 〔 資料3 〕

持株会社は、各事業に投じる資金とそこから得る利益をグループ全体で管理します。設備を長期間保有する電気事業と、開発・売却を組み合わせる再エネや不動産では、現金を回収する時期が異なります。事業の収益性と財務負担を合わせて投資先を選ぶ方針です。 〔 資料3 〕

7 営業CFを電源・送配電などへ投じる(CF)

キャッシュフロー(CF)は、事業、投資、資金調達による現金の出入りです。2025年度の営業CFは4,387.5億円、投資CFは3,837.4億円の支出でした。両者の合計は550.1億円のプラスです。 〔 資料1 〕

2025年度の連結キャッシュフロー(億円)
項目 金額
営業活動によるCF 4,387.5
投資活動によるCF −3,837.4
財務活動によるCF −577.3
期末の現金及び現金同等物 3,511.8
事業・投資・資金調達による現金の動き

2025年度・連結、単位:億円

マイナス プラス
営業活動によるCF 4,387.5
投資活動によるCF −3,837.4
財務活動によるCF −577.3

出典: 〔 資料1 〕

財務CFは577.3億円の支出、期末の現金及び現金同等物は3,511.8億円でした。発電・送配電の開発と更新に継続して資金を使うため、事業で得た現金と必要な投資額の関係が重要になります。 〔 資料1 〕 〔 資料3 〕

海外事業や再エネでは、保有資産の一部を売却して次の案件へ再投資する方法も使います。グループは、設備を所有する事業に加えて、運営・保守などのサービスによる収益を広げる方針です。投資残高を増やす事業と、技術・運営経験を使う事業を組み合わせています。 〔 資料3 〕

8 既存電源の更新と需要増への供給力

新小倉発電所では、3・5号機に代わる6号機を計画しています。出力90万kWの高効率LNGコンバインドサイクルで、2033年度の運転開始を目指します。2026年5月に長期脱炭素電源オークションで落札し、投資回収の仕組みを確保して開発を進めています。 〔 資料3 〕

供給力と事業拡大の主な取り組み
対象 内容 段階・時期
新小倉6号機 高効率LNG火力90万kWへ更新 2033年度の運転開始を目指す
玄海3・4号機 蒸気タービンを更新して効率・信頼性を向上 それぞれ2027・2028年度に工事を計画
ひびきLNG火力・響灘洋上風力 新たな供給力を確保 2026年3月に営業運転開始
中国九州間連系設備 地域間の融通を拡大 2025年10月に工事開始
通信・海外・都市開発 電気以外を含む収益を拡大 2027年4月のグループ再編へ準備

原子力は、2031〜2035年度平均の設備利用率90%を目標にしています。タービンの更新、検査の間隔や期間、運転中の保全などを検討し、安全を確保しながら既存設備の発電量を増やす方針です。 〔 資料3 〕

経営ビジョン2035には、2035年度の経常利益2,000億円以上、ROIC4%程度という目標があります。ROICは事業に投じた資金に対する利益です。統合報告書2026では足元の利益と需要増を踏まえ、財務目標の上方修正と配当方針の見直しを検討していると説明しています。 〔 資料3 〕

9 原子力の対話とグループの監督

九州電力は2011年、原子力の説明番組への意見投稿を社員らに呼びかける事案を起こし、調査と再発防止に取り組みました。原子力の安全や地域の理解に関する情報は、住民が判断できる形で正確に示す必要があります。事業者の説明と地域の意見を適切に扱うことが、長期の信頼に関わります。 〔 資料7 〕

2026年5月のコンプライアンス委員会では、独占禁止法の遵守状況と、持株会社設立後のグループ全体の推進体制を議論しました。会社ごとの裁量を広げる再編では、親会社が状況を把握し、問題を早く報告できる仕組みも必要になります。 〔 資料6 〕

送配電会社は、半導体工場の接続、再エネ受入れ、既存設備の更新を並行して進めます。人口減少による施工力不足も課題として挙げており、工事人材の確保とデジタル技術を使う保守・運用に取り組んでいます。 〔 資料3 〕

九州電力に求められるのは、需要が増える場所へ適切な時期に電気を届けることと、発電所の立地地域で安全を確保することです。電源の運転、送電網、燃料、技術者を一緒に整え、地域の産業投資を支える必要があります。

10 需要の伸びを収益と財務改善につなげる

2026年度第1四半期は、経常利益863億円、最終利益610億円となりました。原子力の稼働増や、需給運用上余剰となったLNGの転売益増加などが寄与しています。7月31日時点の通期予想は、経常利益1,800億円、最終利益1,300億円です。 〔 資料4 〕

今後は、工場やデータセンターの需要が実際の契約・電力使用に結びつく時期、電源更新の進捗、送配電設備への投資を追うと経営の変化が分かります。利益と同時に、営業CF、負債、自己資本の増え方を見ることで、次の投資を支える余力も確認できます。

持株会社への移行は、これらの投資と成長事業への配分を見直す機会です。九州の電力供給を維持しながら、地熱・水力の技術、海外の運営経験、通信や不動産の基盤をどう収益へつなげるかが、グループの経営課題になります。

参照資料

  1. 資料1 九州電力 2026年3月期決算短信

    2026年4月30日。連結PL・BS・CFと事業別業績。

  2. 資料2 九州電力 2025年度決算説明資料

    2026年4月30日。本文pp.1–5。販売・発受電量、利益の増減要因。

  3. 資料3 キューデングループ 統合報告書2026

    本文pp.12–14、22–24、30–31、41–47。持株会社、歴史、需要想定、電源更新、成長事業。

  4. 資料4 九州電力 2026年度第1四半期決算説明資料

    2026年7月31日。本文pp.1、9。四半期の増益要因と通期予想。

  5. 資料5 九州電力 沿革

    水力・火力・地熱・原子力の運転開始、事業再編の経緯。

  6. 資料6 九州電力 コンプライアンス委員会・2026年度上期開催状況

    2026年5月28日。独占禁止法遵守とグループ再編後の推進体制。

  7. 資料7 九州電力 2011年度環境アクションレポート

    原子力に関する説明番組への意見投稿呼びかけ事案、調査と再発防止。

  8. 資料8 都市開発事業の分社化に向けて分割準備会社を設立しました

    2026年10月1日。九電都市開発の設立と、2027年4月1日の事業移管予定。