目次
沖縄電力は、本州などと送電線でつながっていない地域で、発電から送配電、販売までを担います。沖縄本島と離島それぞれで、必要な電気を確保し、燃料を運び、台風後の復旧を進める会社です。石油中心の供給から石炭・LNGへ燃料を広げてきた歴史があり、今は設備更新とCO₂削減を進めながら、次の投資に耐えられる財務を整えています。
財務の数値は、2025年度(2026年3月期)の連結決算を基本としています。
1 発電から販売までを一貫して担う
沖縄電力は浦添市を本拠に、発電、送電・配電、電気の販売を行います。認可一般送配電事業者として、発電・小売も営む発送電一貫体制を維持しています。グループでは沖電工などが工事を担い、エネルギーサービス、再エネ、情報通信、不動産なども展開しています。 〔 資料1 〕 〔 資料2 〕
| 分野 | 主な仕事 | 沖縄での特徴 |
|---|---|---|
| 発電・燃料 | 火力や再エネを運用し、燃料を調達 | 島ごとに必要な供給力と予備力を確保 |
| 送配電 | 送電線・変電所・配電線を維持 | 海域に点在する島、台風、設備復旧への対応 |
| 小売・総合エネルギー | 電気・ガス、空調などのサービス | 家庭、ホテル、商業施設などの需要に対応 |
| 建設・関連事業 | 設備工事、保守、通信、不動産など | 地域の施工力と生活・事業の基盤を支える |
統合報告書2025では、本島を含む38の有人島へ供給し、電力系統は11に分かれていると説明しています。系統とは、発電所と電気を使う場所をつなぐ電力網です。それぞれで発電量と使用量を合わせる必要があります。 〔 資料2 〕
2 本土復帰と電気事業の一元化
沖縄電力は、沖縄が本土に復帰した1972年5月15日、琉球電力公社の業務を引き継いで営業を始めました。設立時は政府と沖縄県が出資する特殊法人でした。当初は発電・送電を主体とする沖縄電力と5つの配電会社に分かれていましたが、1976年に事業を一元化しています。 〔 資料2 〕
| 年 | 出来事 | 経営への影響 |
|---|---|---|
| 1972年 | 本土復帰に伴い沖縄電力が営業開始 | 琉球電力公社の業務を承継 |
| 1976年 | 5配電会社の事業を統合 | 県内の電気事業を一元化 |
| 1988年 | 民営化 | 民間会社として設備投資と経営を継続 |
| 1989年 | 全島電化を達成 | 未供給地域への供給を整備 |
| 1994年 | 具志川の石炭火力が運転開始 | 石油への依存を下げる |
| 2012年 | 吉の浦1号機が運転開始 | LNGを電源に追加 |
| 2015年 | 総合エネルギー事業を開始 | 電気とガスを組み合わせたサービスへ |
| 2024年 | 牧港ガスエンジン発電所が運転開始 | 石油からLNGへ転換し、出力調整力も確保 |
石油に依存していた時期には、オイルショックによる燃料高騰で経営が悪化し、1980年には債務超過に陥りました。その後、石炭の導入や原油価格の安定で収支を改善し、1988年の民営化につながりました。燃料を分散することは、料金と財務の両方に関わる長年の課題です。 〔 資料2 〕
3 観光・暮らしの需要と離島への供給
沖縄は、家庭やホテルなどの民生用需要の比重が大きい地域です。観光客の動き、宿泊施設や商業施設の稼働、夏の気温が需要に関わります。基地返還跡地の開発も、電気・ガスなどを面的に供給する機会として位置づけられています。 〔 資料2 〕 〔 資料3 〕
2025年度の販売電力量は72.1億kWhで、前年度より1.8%減りました。夏場の気温が前年より低めだったことに加え、他の小売事業者への契約切り替えが影響しています。観光などの地域経済と、自社の契約・販売量の両方を見る必要があります。 〔 資料1 〕
沖縄県の島々は東西約1,000km、南北約400kmの海域に広がっています。小さな島にも発電設備や燃料、保守の人員が必要です。燃料輸送、設備更新、台風への対応に必要な費用と人員を、島ごとに確保します。 〔 資料2 〕
新たな経営計画では、デジタル関連分野や都市開発が長期の需要を増やす可能性を挙げています。設備の接続や燃料の供給を早めに準備しながら、具体的な開発計画と需要の時期を見極める必要があります。 〔 資料3 〕
4 独立した系統で供給力と調整力を確保
沖縄は他エリアと送電線で連系しておらず、各系統の中で使う電気を確保します。発電所の故障や検査に備えた予備の供給力を持ち、需要や太陽光の変化に応じて出力を調整する必要があります。 〔 資料2 〕
地形や需要規模の条件から大規模な水力・原子力を持たず、電源の中心は火力です。石炭、LNG、石油を使い分け、太陽光や風力なども受け入れています。LNGを導入した吉の浦や、出力を調整しやすいガスエンジンは、燃料の分散と再エネへの対応に関わる設備です。 〔 資料2 〕
小さい系統では、太陽光の発電が急に変わると周波数の維持が難しくなります。蓄電池や発電機の制御を組み合わせて、晴天・曇天の変化や需要の増減に対応する必要があります。来間島や波照間島などで蓄積する運用技術は、再エネを増やすための基盤になります。 〔 資料2 〕 〔 資料3 〕
燃料は船で運ぶため、発電設備と港湾・貯蔵設備を一体で運用します。燃料の調達条件、在庫、発電所の検査時期を合わせて管理することが、島の供給を保つ条件です。 〔 資料2 〕
5 燃料費の減少と関連事業が増益に寄与(PL)
| 項目 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,365.4 | 2,201.8 |
| 営業利益 | 73.2 | 92.9 |
| 経常利益 | 56.7 | 81.7 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 43.2 | 62.3 |
| 支払利息 | 19.3 | 26.5 |
出典: 〔 資料1 〕
2025年度・連結、単位:億円
- 営業利益 92.9
- 経常利益 81.7
- 最終利益 62.3
出典: 〔 資料1 〕
2025年度の売上高は2,201.8億円、経常利益は81.7億円でした。販売量と燃料費調整額の減少などで売上は減りましたが、燃料費や購入電力料が減り、経常利益は前年度より44.2%増えました。 〔 資料1 〕
電気事業の営業利益は56.3億円、建設業は13.9億円、その他事業は31.5億円でした。その他には、設備の導入・運用を含むエネルギーサービスなどが含まれます。グループ内外の工事やエネルギーサービスの業績も、全体の利益に寄与しています。 〔 資料1 〕
火力の比重が大きいため、燃料価格と電気料金への反映時期が損益を動かします。そこに販売量、発電所の補修、工事・サービスの利益が加わります。電源を更新して燃料使用量を減らすことと、地域の顧客へサービスを広げることが収益改善の方向です。 〔 資料1 〕 〔 資料3 〕
6 自己資本比率25%を回復して次の投資へ(BS)
| 項目 | 2025年3月末 | 2026年3月末 |
|---|---|---|
| 総資産 | 5,004.1 | 5,224.8 |
| 固定資産 | 4,293.2 | 4,472.9 |
| 建設仮勘定及び除却仮勘定 | 279.4 | 440.0 |
| 負債合計 | 3,768.6 | 3,896.2 |
| 純資産 | 1,235.5 | 1,328.7 |
| 自己資本比率 | 24.3% | 25.0% |
出典: 〔 資料1 〕
2026年3月末の総資産は5,224.8億円、純資産は1,328.7億円でした。2022年度の大幅赤字で傷んだ財務を回復させるため、2023〜2025年度に利益を積み上げ、目標としていた自己資本比率25%に到達しました。 〔 資料1 〕
建設仮勘定及び除却仮勘定は279.4億円から440.0億円に増えました。設備への支出が増え、有利子負債も増加しています。支払利息は19.3億円から26.5億円へ増えており、設備費に加えて資金調達費用も経営に関わります。 〔 資料1 〕
新計画では、2030年度までは投資の拡大で資産が増えることを見込み、自己資本比率20%以上を安定的に確保する方針です。2035年度末には25%以上を目指します。現在の資本を基に設備更新を進め、投資後の利益で財務を強めるという計画です。 〔 資料3 〕
7 設備投資と借入で現金が動く(CF)
キャッシュフロー(CF)は、事業、投資、資金調達による現金の出入りです。2025年度の営業CFは273.0億円、投資CFは350.6億円の支出でした。両者の合計は77.6億円のマイナスです。 〔 資料1 〕
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 営業活動によるCF | 273.0 |
| 投資活動によるCF | −350.6 |
| 財務活動によるCF | 83.4 |
| 期末の現金及び現金同等物 | 192.2 |
2025年度・連結、単位:億円
- 営業活動によるCF 273.0
- 投資活動によるCF −350.6
- 財務活動によるCF 83.4
出典: 〔 資料1 〕
営業CFは、消費税の還付と納付の影響などで前年度より減りました。投資CFは設備投資の増加などで支出が増え、有利子負債の増加を含む財務CFは83.4億円の収入となっています。期末の現金及び現金同等物は192.2億円でした。 〔 資料1 〕
中期計画では、2030年度の営業CFを350億円以上、投資額を年間450億円程度とする姿を示しています。電源や送配電の更新を事業収入と外部調達で支え、収益を改善していく方針です。 〔 資料3 〕
8 牧港のLNG新電源と再エネの受入れ
牧港火力発電所では、既設の重油火力に代わる出力13.5万kWの高効率LNGコンバインドサイクルを建設し、2032年度中の運転開始を目指します。将来のアンモニアなどの燃料にも対応できる仕様を計画しています。2026年10月5日には、環境への影響を調べ、予測・評価する方法を示す「方法書」を経済産業大臣と沖縄県知事へ届け出・送付し、環境影響評価の手続きを進めています。 〔 資料3 〕 〔 資料7 〕
| 対象 | 進めること | 事業上の役割 |
|---|---|---|
| 牧港のLNG新電源 | 重油火力の代替を建設 | 供給力の維持、発電効率とCO₂排出の改善 |
| 太陽光・蓄電池 | 屋根などへの導入と制御の高度化 | 限られた土地を使い、再エネの変動に対応 |
| 島の系統運用 | 来間島・波照間島などで技術を蓄積 | 小規模系統で再エネを受け入れる能力を高める |
| 吉の浦の水素混焼 | 実証技術を実際の系統で活用 | 出力を調整する電源でCO₂削減技術を検証 |
| 天然ガス・エネルギーサービス | ガスパイプライン沿線などの需要を獲得 | ホテル・施設などの省エネと燃料転換を支援 |
2026年8月には、吉の浦マルチガスタービン発電所で、りゅうせきが製造する県産水素を用いた混焼発電を始めました。既存の実証で得た技術を使い、運転データの蓄積と技能の継承を進めています。水素やアンモニアの本格利用には、燃料の調達・供給設備と経済性を整えることも必要です。 〔 資料3 〕 〔 資料6 〕
新計画は、2040年度にCO₂排出量を2005年度比48%削減する目標を示しています。LNGへの転換、地域の木質バイオマス、再エネと蓄電池などを組み合わせ、独立系統の安定性を保ちながら削減を進める方針です。 〔 資料3 〕
9 台風の復旧と島ごとの供給を支える
沖縄では台風に耐える設備と、被害後に復旧する体制が欠かせません。2003年の台風14号では宮古島で電柱や風力設備などに大きな被害を受けました。強い風に耐える設備、資機材の確保、現場へ人員を送る体制を整えることが、電力供給の仕事に含まれます。 〔 資料2 〕
台風が近づく前には、飛来物による設備被害を減らす働きかけや、停電への備えを案内しています。停電が起きた後は、復旧見通しや被害状況を伝える必要があります。離れた島や高齢者も情報を受け取れるよう、複数の連絡手段を維持することが重要です。 〔 資料2 〕
工事の担い手を確保し、作業員の安全を守ることも継続的な課題です。新計画では、配電工事で通電部分へ直接触れる方法から、絶縁工具などを介して作業する方法を標準にする方針を示しています。工事の標準化と時期の平準化を進め、設備の保守を続けやすくする取り組みです。 〔 資料3 〕
電源更新や燃料転換では、費用、CO₂削減、安全性、島の運用条件を地域へ説明する必要があります。家庭や観光施設が使う電気の料金と、長期に供給を維持するための投資を結びつけて考えることが、沖縄電力に求められる役割です。
10 燃料の変動に対応しながら設備を更新
2026年度第1四半期は、経常損失71.0億円、最終損失72.9億円となりました。燃料費調整制度による収入減と、燃料費・購入電力料の増加が影響しています。2026年6月末の自己資本比率は22.8%でした。 〔 資料4 〕 〔 資料5 〕
7月31日に公表した2026年度の通期予想は、経常利益50億円、最終利益34億円です。中期計画では、2030年度に経常利益100億円水準、2035年度に150億円以上を掲げています。設備の維持と更新を進めながら、事業で得る利益と現金を増やす計画です。 〔 資料3 〕 〔 資料4 〕
今後は、牧港の建設工程、燃料調達と料金収入、再エネを受け入れるための設備、営業CFと負債の動きを合わせて見ると経営の状況をつかめます。沖縄電力の中心的な仕事は、島ごとの供給を維持し、地域の暮らしと成長に必要なエネルギーを長期に確保することです。
参照資料
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資料1
沖縄電力 2026年3月期決算短信
2026年4月30日。本文pp.2–3、5–10。連結PL・BS・CF、販売電力量、事業別利益。
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資料2
沖縄電力 統合報告書2025
本文pp.7–10、28–38、52–54、90。歴史、独立系統、電源、地域需要、発送電一貫体制。
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資料3
おきでんグループ経営ビジョン・中期経営計画2026–2030
2026年7月31日。本文pp.8–15、24–32。需要、CO₂削減、財務目標、牧港の新電源とガス事業。
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資料4
沖縄電力 2027年3月期第1四半期決算短信
2026年7月31日。連結実績と2026年度予想、2026年6月末の自己資本比率。
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資料5
沖縄電力 2026年度第1四半期決算の概要
2026年7月31日。本文p.2。燃料費・購入電力料と収入の増減。
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資料6
吉の浦マルチガスタービン発電所で県産水素を用いた水素混焼発電を開始
2026年8月4日。実証技術を使った水素混焼発電と運転データの蓄積。
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資料7
牧港火力発電所新1号機建設計画 環境影響評価方法書の届出・送付及び縦覧・説明会等の実施について
2026年10月5日。方法書の届出・送付、出力13.5万kW、2032年度の運転開始予定。