TERAWHAT 電力を、わかりやすく。

特集 旧一電の地域と経営

会社を知る 第6回 関西電力

関西電力
原子力の運用と電源・通信への大型投資

関西電力の歴史、原子力7基の役割、通信・不動産を含む事業を紹介。2025年度のPL・BS・CFと2040年への投資計画、安全と公正な競争に関する課題を解説します。

公開日:

目次
  1. 1 電気・通信・不動産を持つグループ
  2. 2 黒部の水力から原子力7基体制へ
  3. 3 大都市の需要と発電所の立地地域
  4. 4 原子力の稼働と保守が電源運用の中心
  5. 5 電力に加え通信・不動産も利益を生む(PL)
  6. 6 利益の蓄積で自己資本比率が35.1%へ(BS)
  7. 7 事業で得た現金を投資と返済に配分(CF)
  8. 8 2040年までに15兆円の投資を計画
  9. 9 安全と公正な競争を事業運営に定着させる
  10. 10 足元の利益と長期投資をどうつなぐか
  11. 参照資料

関西電力は、関西の都市や工場へ電気を届けるとともに、福井県の原子力、黒部川の水力、国内外の火力などを運営してきました。原子力7基の運用が発電費用に大きく関わり、情報通信や不動産も利益を生んでいます。今後は電源の更新と送配電網の整備に加え、データセンターなどへの大型投資を計画しています。収益力を次の設備へ結びつける力と、安全・公正な事業運営を続ける仕組みが問われています。

財務の数値は、2025年度(2026年3月期)の連結決算を基本としています。

1 電気・通信・不動産を持つグループ

関西電力は大阪を本拠に、発電、電気・ガスの販売、海外エネルギー事業などを担います。送配電設備は関西電力送配電が運用し、オプテージは光回線や携帯通信、データセンターを展開しています。関電不動産開発は住宅、オフィス、物流施設などを扱います。 〔 資料2 〕

事業の構成と収益の主な要因
事業 主な仕事 収益に関わる要因
エネルギー 発電、電気・ガス販売、海外事業 原子力の稼働、燃料・市場価格、販売契約
送配電 地域の送電・変電・配電設備を運用 電力需要、設備費、需給調整費用
情報通信 光回線、携帯通信、データセンター 契約数、通信量、設備利用率
不動産 住宅分譲、賃貸、開発・運営 販売・賃貸の状況、物件の取得と売却

電力設備を整備してきた技術、人材、土地、通信網が、事業を広げる基盤になっています。2026年度からは不動産を独立した事業区分とし、企業向けのエネルギー関連サービスをエネルギー事業へまとめました。成長分野ごとの成果を把握しやすくする組み替えです。 〔 資料2 〕 〔 資料4 〕

2 黒部の水力から原子力7基体制へ

1951年の設立後、関西電力は電力不足への対応と産業の成長に合わせて大規模電源を開発しました。1963年に竣工した黒部川第四発電所は、その歴史を代表する水力です。1970年には美浜で原子力の営業運転を始め、福井県の発電所と関西の需要地を結ぶ供給体制を整えました。 〔 資料2 〕

事業基盤が変わった主な節目
年 出来事 現在とのつながり
1951年 関西電力の設立 関西地域への電力供給を担当
1963年 黒部川第四発電所の竣工 大規模水力の運用・保守技術を蓄積
1970年 美浜発電所で営業運転開始 原子力を主要電源へ
1995年 阪神・淡路大震災 都市の災害対応と復旧体制を経験
2004年 美浜3号機で2次系配管破損事故 点検・保守と安全管理の見直し
2020年 送配電部門の法的分離 関西電力送配電による運営へ
2023年 原子力7基の再稼働が実現 複数炉の検査・運用を組み合わせる体制へ

通信分野では、2004年に関西全域で家庭向け光回線と固定IP電話を提供する体制を整えました。2023年にはCyrusOneとの合弁会社を設立し、大規模データセンターへ参入しています。電気と通信の双方で、需要の変化に合わせた設備投資を続けてきました。 〔 資料2 〕

3 大都市の需要と発電所の立地地域

関西には大阪・神戸・京都などの都市が集まり、オフィス、商業施設、住宅、工場が電気を使います。2025年度の小売販売電力量は1,162.7億kWhで、前年度を0.7%上回りました。他社への販売を含む総販売電力量は1,521.9億kWhとなっています。 〔 資料1 〕

電源の立地は需要地の外にも広がっています。福井県の原子力、富山県の黒部川の水力など、立地地域で設備を運営し、送電線を通じて電気を届けます。発電所の安全、地域の雇用や工事、使用済燃料への対応は、設備を長く使ううえで地域と共有する課題です。 〔 資料2 〕

送配電では、古くなった設備を更新しながら、大規模な工場やデータセンターが使う電気を届ける準備を進めます。都市では変電所や地中ケーブルの工事を既存の生活・交通と調整し、山間部では台風や豪雨に備えた保守と復旧体制を確保する必要があります。 〔 資料2 〕

データセンターへの投資には、建物に電気を供給する仕事と、情報通信の設備・接続サービスを提供する仕事があります。グループはこの両方を持つため、電力容量、通信の接続先、立地条件を組み合わせて事業を展開しています。 〔 資料2 〕 〔 資料3 〕

4 原子力の稼働と保守が電源運用の中心

再稼働済みの原子炉は、美浜3号機、高浜1〜4号機、大飯3・4号機の7基です。2025年度の原子力発電量は460.1億kWhでした。同年度の水力は128.7億kWh、火力は353.1億kWhで、他社からの受電と組み合わせて供給しています。 〔 資料1 〕 〔 資料2 〕

原子力は燃料価格の変動を受けにくく、稼働によって火力燃料や市場からの調達を減らせます。設備の点検や故障で止まると、その分の供給を別の電源で確保する必要があります。関西電力は検査工程や作業時期の平準化に取り組み、運転期間を現行の最長13カ月から、まず最長15カ月へ延ばす検討を進めています。 〔 資料2 〕

2026年9月17日には、美浜3号機で出力上昇中の点検時に、配管の空気抜き弁周辺から水が滴下していることを確認し、翌18日に原子炉を停止しました。関西電力は、配管を覆う保温材の外装板が逆向きに取り付けられ、雨水が入り込んで配管の外側から腐食が進んだと推定しています。 〔 資料6 〕

対象の配管はステンレス製へ交換し、外装板の取付方向を作業要領に明記しました。10月9日の発表では、10日に原子炉を起動して調整運転を始め、11月4日に本格運転を再開する予定を示しています。 〔 資料7 〕

美浜の後継機については、地形・地質などを把握し、設置可能性を検討する自主的な現地調査を進めています。将来の電源更新には、規制対応、建設費、工期、立地地域との協議を具体化する段階が続きます。 〔 資料2 〕 〔 資料5 〕

5 電力に加え通信・不動産も利益を生む(PL)

連結損益計算書の主な項目(億円)
項目 2024年度 2025年度
売上高 43,371.1 40,566.4
営業利益 4,688.8 4,375.6
経常利益 5,316.9 5,185.3
親会社株主に帰属する当期純利益 4,203.6 3,800.5
支払利息 350.4 426.8

出典: 〔 資料1 〕

営業利益・経常利益・最終利益

2025年度・連結、単位:億円

マイナス プラス
営業利益 4,375.6
経常利益 5,185.3
最終利益 3,800.5

出典: 〔 資料1 〕

2025年度の売上高は4兆566.4億円、経常利益は5,185.3億円でした。小売の販売量は増えましたが、燃料費調整額や他社販売収入の減少などで売上が減っています。燃料費や購入電力料も減少し、経常利益の減少幅は前年度比2.5%となりました。 〔 資料1 〕

2025年度の区分では、エネルギー事業の利益は3,773.7億円、送配電は630.7億円、情報通信は470.9億円、生活・ビジネスソリューションは390.4億円でした。送配電は需給調整に伴う費用の減少などで増益となり、生活・ビジネスソリューションは不動産販売などが寄与しました。 〔 資料1 〕

関西電力は、発電所の運用と電気販売による大きな利益に加え、回線・通信サービスや不動産からも利益を得ています。電力では燃料や電源の稼働、通信では顧客と設備利用、不動産では販売・賃貸の状況というように、事業によって業績を動かす要因が異なります。 〔 資料1 〕 〔 資料2 〕

6 利益の蓄積で自己資本比率が35.1%へ(BS)

連結貸借対照表の主な項目(金額は億円)
項目 2025年3月末 2026年3月末
総資産 96,526.6 98,546.5
固定資産 76,816.3 80,720.6
建設仮勘定及び除却仮勘定 3,096.1 3,941.4
負債合計 65,452.0 63,519.0
純資産 31,074.5 35,027.4
自己資本比率 31.8% 35.1%

出典: 〔 資料1 〕

2026年3月末の総資産は9兆8,546.5億円でした。固定資産は8兆720.6億円、建設中の設備などを計上する建設仮勘定及び除却仮勘定は3,941.4億円となっています。電源・送配電に加え、通信や不動産の資産を持つ構成です。 〔 資料1 〕

純資産は3兆5,027.4億円へ増え、自己資本比率は31.8%から35.1%へ上昇しました。利益を積み重ねて投資を支える資本を増やす一方、負債合計は減少しています。支払利息は426.8億円となり、前年度から増えました。 〔 資料1 〕

新たな経営計画では、自己資本比率を30%台半ばに保ちながら大型投資を進める方針です。設備を長く使って回収する発電・送配電と、資産の売却も組み合わせる不動産では、資金を回収する時期が異なります。事業ごとの収益と投資残高を管理することが、投資余力を保つ条件になります。 〔 資料3 〕

7 事業で得た現金を投資と返済に配分(CF)

キャッシュフロー(CF)は、事業、投資、資金調達による現金の出入りです。2025年度は営業CFが6,523.8億円、投資CFが5,719.2億円の支出で、合計は804.6億円のプラスでした。 〔 資料1 〕

2025年度の連結キャッシュフロー(億円)
項目 金額
営業活動によるCF 6,523.8
投資活動によるCF −5,719.2
財務活動によるCF −2,902.2
期末の現金及び現金同等物 7,412.9
事業・投資・資金調達による現金の動き

2025年度・連結、単位:億円

マイナス プラス
営業活動によるCF 6,523.8
投資活動によるCF −5,719.2
財務活動によるCF −2,902.2

出典: 〔 資料1 〕

財務CFは2,902.2億円の支出となり、期末の現金及び現金同等物は7,412.9億円でした。営業で得た現金を投資に回し、資金調達・返済や配当を含めた配分を行った結果です。 〔 資料1 〕

2026〜2028年度の計画では、営業CFを1兆5,000億円以上確保し、借入などで8,900億円、資産売却などで3,800億円以上を調達する想定です。維持投資に1兆5,000億円、成長投資に1兆円、株主還元に2,700億円以上を配分します。運営による収入に、資産の入れ替えと外部調達を組み合わせた計画です。 〔 資料3 〕

10月9日には、脱炭素化に向けた事業に使途を限定するトランジション・ボンドについて、5年債217億円と4年債235億円、計452億円の募集条件を決めました。払込日は10月20日です。資金使途には、原子力設備の点検・修理や安全性向上、火力の高効率化、送配電設備の更新などを含めています。 〔 資料8 〕

8 2040年までに15兆円の投資を計画

経営計画2026では、2026〜2040年度の投資規模を15兆円としています。最初の3年間は2.5兆円です。電源の更新・開発、送配電設備の維持と高度化、情報通信、不動産などに資金を配分します。 〔 資料3 〕

大型投資で進めること
分野 主な方向 実行時に必要なこと
電源 原子力の将来更新、効率の高いLNG火力、再エネ 安全審査、燃料確保、工期・建設費の管理
送配電 設備更新と新たな需要への接続 工事人材、資機材、需要の場所と時期の把握
情報通信 データセンターと接続サービス 電力・通信容量の確保、利用企業の獲得
不動産 住宅・賃貸・海外事業 取得価格、賃貸収入、開発・売却の管理

2026〜2028年度平均の目標には、純利益2,700億円以上、ROE8%以上、ROIC3.3%以上を掲げています。ROEは自己資本に対してどれだけ利益を得たか、ROICは事業に投じた資金に対してどれだけ利益を得たかを示します。投資額と同時に、投資後の利益を管理する計画です。 〔 資料3 〕

9 安全と公正な競争を事業運営に定着させる

2004年の美浜3号機事故は、配管の点検・管理を含む安全確保の重さを示しました。関西電力は事故の教訓を安全方針や人材教育に反映しています。設備の経年化が進む中、検査対象の把握、作業の品質、現場の情報共有を続ける必要があります。 〔 資料2 〕

経営面では、金品受取り問題、新電力の顧客情報の不適切な取扱い、独占禁止法違反行為を受けた改善を進めてきました。事業部門による管理、管理部門による確認、内部監査という役割分担を整え、組織風土の改革にも取り組んでいます。 〔 資料2 〕

送配電会社は、小売の競合企業も利用するネットワークを運営します。顧客情報の管理や公平な接続・託送対応を徹底することが、グループ全体への信頼に関わります。大型投資の判断でも、利益の見通しとリスクを経営層へ正確に伝える仕組みが必要です。 〔 資料2 〕

使用済燃料については、2025年2月に見直した対策の工程に沿って対応を進めています。原子力の運転、燃料の保管・搬出、立地地域への説明を一連の仕事として進めることが、長期の事業運営を支えます。 〔 資料2 〕

10 足元の利益と長期投資をどうつなぐか

2026年度第1四半期は、経常利益528.2億円、最終利益1,370.6億円となりました。最終利益には、きんでん株式の一部売却に伴う1,050.8億円の特別利益が含まれています。2026年度の通期予想は7月31日時点で、経常利益2,900億円、最終利益3,100億円です。 〔 資料4 〕

今後は、原子力の安全な運用による収益を維持し、電源の更新と新しい需要へ投資できるかが中心になります。通信・不動産が生む利益、資産売却で確保する現金、建設中の設備に必要な支出を合わせて見ると、計画の進み方を追えます。

関西電力に求められるのは、関西の生活と産業への安定供給、発電所の立地地域での安全確保、公正な市場運営です。そのうえで、電気と通信の需要増を収益へ結びつけ、長期間使う設備へ資金を回すことが経営の課題になります。

参照資料

  1. 資料1 関西電力 2026年3月期決算短信

    2026年4月30日。本文pp.2–12、17–19。連結PL・BS・CF、販売・発電実績、事業別利益。

  2. 資料2 関西電力 統合報告書2026

    本文pp.3–4、21、27–34、52、72。沿革、事業構成、原子力、地域・安全、内部統制。

  3. 資料3 関西電力グループ経営計画2026

    2026年3月。本文pp.11、23–28。2040年までの投資、2026–2028年度の資金配分と財務目標。

  4. 資料4 関西電力 2027年3月期第1四半期決算短信

    2026年7月31日。表紙、本文pp.5、8–9。四半期実績、通期予想、きんでん株式の売却益。

  5. 資料5 美浜発電所後継機の自主的な現地調査計画の変更

    2026年9月9日。後継機の設置可能性を調べる現地調査。

  6. 資料6 美浜発電所3号機の空気抜き弁周辺からの水の滴下に関する原因と対策

    2026年10月2日。雨水の侵入による配管腐食の推定原因と、配管交換・施工管理などの対策。

  7. 資料7 美浜発電所3号機の原子炉起動および調整運転の開始予定

    2026年10月9日。補修・再発防止策と、10月10日の原子炉起動・調整運転開始、11月4日の本格運転再開予定。

  8. 資料8 トランジション・ボンドの発行について

    2026年10月9日。5年債217億円・4年債235億円の募集条件、10月20日の払込日と資金使途。