2023年度のBL市場の全商品約定量は年換算90.0億kWhだった。燃調付き商品の導入と並行して、相対卸の進展やエリア間値差も取引条件を変えてきた。一定の相対契約が増えるとBL市場への供出量を控除する仕組みがあり、買い手が利用できる調達経路によって、市場の役割も変わる。〔S06、pp.5–14〕
商品追加後の約定量と参加事業者数
資源エネルギー庁の第十八次中間とりまとめが示す、2019~2023年度の約定量は次のとおりである。2023年度は1年固定価格商品、1年燃調付き商品、2年燃調付き商品の合計を年換算している。〔S06、pp.5–6〕
| 入札年度 | 公表約定量 | 商品構成・集計単位 |
|---|---|---|
| 2019 | 46.8億kWh | 1年固定価格商品 |
| 2020 | 29.1億kWh | 1年固定価格商品 |
| 2021 | 65.5億kWh | 1年固定価格商品 |
| 2022 | 94.5億kWh | 1年固定価格商品 |
| 2023 | 90.0億kWh/年 | 1年固定・1年燃調・2年燃調の年換算 |
出典は第十八次中間とりまとめ、p.6。各入札年度の新規約定分を示す。2023年度は2年商品を1年分に換算した数値を含む。
2023年度のうち1年固定価格商品の約定量は60.7億kWhだった。同年度には燃調付き商品も約定しており、商品の内訳と受渡期間が前年までと変わっている。〔S06、pp.5–6〕
事業者数にも変化があった。とりまとめは、買い手の応札事業者数が2022年度より総じて減少し、約定事業者数は総じて増加したと記載している。資源エネルギー庁は、より多くの新電力に電源が行き渡ったと説明した。〔S06、p.8〕
2023年度第3回の売り入札量には、固定価格商品で未約定だった電気を燃調付き商品へ再投入した分が含まれる。同じ電気が別の商品で再び売り注文となるため、商品別・回次別の売り入札量を合計すると重複が生じる。〔S06、p.7〕
相対契約の増加はBL市場への供出量に反映される
内外無差別な卸売は、発電部門から自社・グループ内の小売部門への卸売と、外部の小売事業者への卸売について、競争条件をそろえる取組である。BL市場の創設目的と共通する部分があり、相対契約では数量、期間、受渡形状を個別に交渉できる。〔S06、pp.8–10〕
BL市場の供出量には、一定の条件を満たす相対契約等の量を控除する仕組みがある。対象となる相対契約が増えると、制度上求められるBL市場への供出量が減り得る。2023年の政府資料も、供出量減少の背景に、適格相対契約等による控除の増加を挙げている。〔S04、pp.6、23–25〕
新電力がBL市場から相対契約へ調達を移す場合、BL市場の取引量は減るが、相対契約を通じて電気を確保できる。供出量の変化と小売事業者の調達状況は、BL市場と相対契約の両方で把握することになる。
2024年のとりまとめでは、内外無差別が確認されたエリアについて、適格相対契約による控除上限を70%まで引き上げる考え方が整理された。対象エリアでの内外無差別な卸売の確認を条件に、相対契約の実績を供出量へより大きく反映する措置だった。〔S06、pp.9–10〕
小規模事業者には信用力や取引規模の制約がある
2024年のとりまとめに収録された事業者調査では、内外無差別な卸売の進展に応じたBL市場の供出量縮小に理解を示す新電力があった。移行期間やBL市場の存続を求める意見もあり、信用力や取引規模によって相対契約を利用しにくい事業者の存在が指摘された。〔S06、pp.8–10〕
既存事業者側からは、相対卸が進む中で、BL市場への供出措置を縮小・廃止するよう求める意見が出た。調達先を選べる事業者と、相対契約への移行が難しい事業者では、BL市場の継続に対する要望が異なっていた。〔S06、pp.8–10〕
相対契約の締結には、価格の条件とともに、信用審査、最低取引量、担保、交渉や契約にかかる費用が関わる。同じ価格基準で卸売を受けられても、必要な信用条件や取引規模を満たせるかによって、契約の利用可能性は変わる。
相対卸への移行後に新電力がどれだけ調達できたかは、各社の契約量と調達先の変化に表れる。事業者規模別の参加状況や契約条件は、BL市場への供出量を変更する際の影響を把握する指標となる。
需要地との価格差が実質的な調達費に加わる
地域間連系線の容量等には制約があるため、スポット市場で地域ごとに異なる価格が付くことがある。BL取引でも、取引の基準となるエリアと実際の需要地との価格差が、買い手の実質的な費用に関わる。JEPXは、このエリア間値差を清算する仕組みを設けている。〔S13、BL取引の節/S14、p.1〕
買い手が値差を別途負担する条件を仮定すると、基準エリアの契約価格12円/kWhに需要地との値差5円/kWhが加わる場合、実質負担は17円/kWhとなる。清算や手数料を省いた費用関係の試算である。
契約価格を固定しても、需要地との値差を負担する条件では、最終的な調達費が変わる。燃料費を固定する効果と、地域間の価格差による費用を、契約上どのように分担するかが問題になる。
市場区分と値差清算を段階的に変更した
2022年には、エリア間値差による損失側の補償が導入され、その後、利益側の徴収も含む仕組みが整えられた。2023年度の取引では、市場区分も変更された。当初の北海道・東日本・西日本から、北海道を含む東日本、九州を除く西日本、九州の3区分となった。〔S06、pp.11–13〕
地域を分けると、分割された地域の条件をそれぞれの商品へ反映しやすくなる。各市場に集まる売買注文量は分かれ、同じ市場の中に残るエリア間値差は別途負担や清算の対象となる。
JEPXの値差清算には、年間の差額と閾値の関係、清算財源による制限等が設けられている。買い手に残る負担は、発生した値差と清算対象額との差によって決まる。〔S14、p.1〕
間接送電権は、地域間の価格差に対応するヘッジ手段である。政府資料は、経過措置終了後の発行量増加の見込みに言及していた。BL市場の購入量に対応させて利用するには、対象区間、受渡期間、数量、取得価格が関わる。〔S04、p.26/S06、pp.12–14〕
2026年度のJEPX公表スケジュールでは、基準エリアは東京と関西の二つに整理された。北海道は東京側、九州は関西側に含まれる。2026年8月31日の規程改定公告では、値差清算の期間延長も示された。〔S12、p.1/S15、2026年8月31日公告〕
市場を広域化して売買注文を集めると、地域ごとの費用差をどこで清算するかが契約条件に関わる。清算制度の財源と対象範囲、間接送電権の取得量や価格によって、需要地で負担する調達費が変わる。
排出量取引の費用算定をめぐり第1回を中止
JEPXは2026年8月21日、同月31日に予定していた年度第1回のBL取引を中止すると公表した。理由は、排出量取引制度の卸取引上の扱いに関する議論だった。〔S11〕
8月26日に意見募集されたBL市場ガイドライン改定案には、排出枠に関する費用と無償割当の関係などが示された。新たな費用を卸価格へ反映する際に、発電事業者が実際に負担する額をどう算定するかという論点である。〔S16、pp.12–14〕
BL市場の調達条件は、商品自体の改修と、相対契約・地域間価格差・排出枠費用の変化を受けてきた。供出量、契約価格、清算後の支払額に作用する仕組みはそれぞれ異なる。次回は、中長期取引市場で検討される調達時期と商品条件を、これらの経過と比較する。
第3回「燃料高騰時の地域差と、固定価格・燃調付き商品の改修」を読む
第5回「中長期取引市場で検討される供給力確保と商品条件」を読む
参照資料
- S04 資源エネルギー庁「第十二次中間とりまとめ」、2023-07-11、pp.5–18、23–26。 資料を開く
- S06 資源エネルギー庁「第十八次中間とりまとめ」、2024-08-16、pp.4–14。 資料を開く
- S11 JEPX「2026年度第1回ベースロード取引の中止について」、2026-08-21、本文。 資料を開く
- S12 JEPX「2026年度ベースロード取引スケジュールのご案内」、2026-06-25、pp.1–2。 資料を開く
- S13 JEPX「取引規程」、2026-08-31改定版、BL取引の節。 資料を開く
- S14 JEPX「ベースロード市場 値差の補填・徴収の考え方」、2025-06-27改定版、p.1。 資料を開く
- S15 JEPX「取引に関するお知らせ」、2026-08-31、規程改定の公告。 資料を開く
- S16 資源エネルギー庁「ベースロード市場ガイドライン改定案」、2026-08-26、pp.12–14。 資料を開く
