2022年度のBL市場の全国約定量は94.5億kWhとなり、当時の過去最多を記録した。うち西日本が90.4億kWhを占め、東日本と北海道の合計は4.1億kWhだった。供出価格に織り込む燃料費の想定にも事業者間で大きな差が生じた。2023年度には燃料費調整付き商品が加わり、その後、固定価格商品の算定指標も見直された。〔S04、pp.5–18/S06、p.6〕
全国約定量の約96%を西日本が占めた
2022年度の約定量94.5億kWhは、前年度の65.5億kWhを上回った。地域別では西日本に約95.7%が集中し、約定価格も東日本と西日本で異なっていた。〔S04、pp.5–6/S06、p.6〕
| 2022年度の回次 | 東日本の約定価格 | 西日本の約定価格 |
|---|---|---|
| 第1回 | 33.06円/kWh | 20.00円/kWh |
| 第2回 | 37.67円/kWh | 25.11円/kWh |
| 第3回 | 31.00円/kWh | 23.50円/kWh |
| 第4回 | 25.30円/kWh | 20.00円/kWh |
出典は第十二次中間とりまとめ、p.6。固定価格商品の各市場の約定価格。
第2回の約定価格は東日本37.67円/kWh、西日本25.11円/kWhだった。各回とも東日本の方が高く、約定量は西日本に集中している。燃料価格が高騰した年度の取引結果には、こうした地域差があった。〔S04、pp.5–6〕
将来の燃料費を固定価格に織り込む
固定価格で翌年度以降の電気を売る発電事業者は、受渡期間中の燃料費を契約時点で見積もる。販売単価を据え置く契約なら、実際の燃料費が想定を上回った分は売り手の負担となる。
買い手は、購入単価を先に決めることで、その後の燃料価格上昇による追加負担を避けられる。燃料価格が下がった場合にも約定した単価を支払うため、契約時点の価格判断が調達費を左右する。売り手が高い燃料費を見込み、買い手が値下がりを見込む状況では、双方が希望する取引価格に差が生じる。
第十二次中間とりまとめは、2022年度の供出上限価格に含まれる燃料費想定が、事業者間で大きく異なったことを示している。第1回の石炭価格の想定には、4万4,278円/tから12万1,479円/tまで幅があった。価格変動リスクを含めた算定上の想定値である。〔S04、pp.9–10〕
燃料費の見積りが大きく変われば、供出価格も変わる。固定価格商品では、燃料費の想定水準と、値上がりに備えて見込む額が売買の成立条件に関わる。監視上も、燃料調達費の見通しや価格変動への備えを、ガイドラインの算定方法に沿って計算しているかが論点となった。〔S04、pp.9–10/S06、p.6〕
燃料費調整がない商品条件への指摘は、2021年の意見募集で既に出ていた。翌2022年度には、燃料価格の変動に備える費用の見積りが、事業者間で大きく異なる状況になった。〔S03、p.3/S04、pp.9–10〕
燃調付き商品は、燃料費の変動を事後清算する
2023年度には、従来の1年固定価格商品に加え、燃料費を事後調整する1年商品と2年商品が導入された。2年商品の受渡期間は2年間である。〔S04、pp.10–18〕
燃料費の事後調整では、燃料指標の変化に応じて取引額が変わる。売り手は、将来の燃料費の上振れを当初価格に見込む必要が小さくなる。買い手の支払額には、受渡期間中の燃料指標の変動が反映される。
小売側の料金契約に同じような燃料費調整があれば、仕入れと販売の変動部分を対応させやすい。顧客への販売料金を固定している場合、燃調付きの調達では仕入れ費用が変わる。仕入れと販売の双方に燃調が付いていても、指数や算定期間、反映時期、上限が異なれば差額が生じる。
政府は、燃料費調整付きの商品を加える際、固定価格商品も維持した。価格を固定する需要と、燃料費を調整する需要に対応し、商品間の取引分散も考慮した構成だった。〔S04、pp.10–13〕
受渡期間を2年とし、基準価格を共通にした理由
受渡期間の検討では、小売事業者への調査で、1年超から3年未満の調達希望と実績に差があることが示された。売り手側には、容量停止計画の調整が実需給の2年前に行われるため、3年目以降の稼働状況を入札時に見通しにくい事情があった。こうした調達需要と運転計画を踏まえ、2年商品が設けられた。長期商品への供出割合15%も、調査で示された希望する調達構成を基に設定された。〔S04、p.14〕
価格については、2年間で同じ基準価格を使う案と、年度ごとに基準価格を見直す案が比較された。年度ごとに見直す方式なら、売り手の費用変化を反映しやすい。買い手は、2年目の価格が未確定の状態で調達を決めることになる。相対契約では受渡し前に当事者間で協議する方法があるが、取引相手が匿名となるBL市場では、その協議を組み込むことが難しいと整理された。〔S04、pp.15–16〕
買い手に2年目のキャンセルを認める案も検討された。政府資料は、キャンセルを認めると、売り手が長期の燃料確保や費用回収を見込みにくくなり、契約が1年で終了する可能性や制度の複雑化が生じるとした。そのうえで、基準価格を2年間共通とし、燃料費を事後調整する方式を採用した。〔S04、pp.15–16〕
毎年の価格見直しやキャンセルの条件を加えると、買い手は契約後の変化に対応しやすくなる。その条件は、売り手が燃料を手配し、費用の回収を見込む際にも影響する。2年商品の検討では、この関係を踏まえて複数の方式が比較された。
入札前に分かる調整係数にも制約があった
燃調付き商品では、燃料指標の変化に対して取引額をどれだけ調整するかを、係数で定める。制度検討では、事業者ごとに異なる係数を扱い、入札前に最小値・最大値・加重平均値等を示す方法が整理された。売り手数が少ない場合には、公表範囲にも配慮する仕組みだった。〔S04、pp.16–18〕
買い手は入札前に係数の範囲を把握できるが、実際に適用される係数は約定先の構成に関わる。燃料指標が動いたときに支払額がどれだけ変わるかを見積もる際には、係数の情報も影響する。
2023年の意見募集では、事後調整単価の開示から入札までの検討期間が最短10日間では短いとの指摘が出た。政府は、取引の実施状況を踏まえて対応する考え方を示した。燃調付き商品の導入時には、入札前に買い手へ示す情報の範囲も論点になっていた。〔S05、意見7〕
燃調付き商品は導入翌年度から約定量が減った
JEPXの公表結果を集計すると、2023年度の燃調付き商品は、1年商品113.4MW、2年商品220.6MWが約定した。2024年度は1年商品の関西30MWのみとなり、2年商品は未約定だった。2025年度の当該結果通知に掲載された燃調付き商品は、すべて未約定だった。〔S08–S10、各p.1〕
| 入札年度 | 1年燃調付き商品の約定量 | 2年燃調付き商品の約定量 |
|---|---|---|
| 2023 | 113.4MW | 220.6MW |
| 2024 | 30.0MW | 0MW |
| 2025 | 0MW | 0MW |
対象は燃料費調整付き商品。数量は受渡期間中の電力をMWで示している。1年商品と2年商品の受渡期間はそれぞれ1年間、2年間となる。
燃調付き商品は導入年度に約定し、その翌年度以降は利用量が減った。燃料費の事後調整によって、契約時に将来の燃料費を固定する負担は変わる。年間の引取量、買い手の需要見通し、相対契約との条件差、地域間の価格差は、引き続き調達判断に関わる。
固定価格商品では燃料費の算定方法を見直した
第十八次中間とりまとめによると、2023年12月26日に公表された第3回の監視結果では、大規模発電事業者の1社について、燃料費の価格変動リスクの見積方法が、ガイドライン所定の算定方法とは認められない事例があった。〔S06、p.6〕
2024年の見直しでは、固定価格商品の燃料費の算定に、原則として燃料先物価格を合理的な指標として用いる考え方が整理された。将来費用の見積りに用いる指標を定め、算定根拠を比較しやすくする対応だった。〔S06、BL市場に関する章〕
燃料費をめぐる改修は、燃調付き商品による負担の分担と、固定価格商品の見積方法の見直しという形で進んだ。商品が増えた後には、相対卸の進展やエリア間値差も利用条件を変えている。次回は、BL市場の取引量と、他の調達経路・受渡地域の変化を取り上げる。
第4回「相対卸の進展とエリア間値差で変わった調達条件」を読む
参照資料
- S03 資源エネルギー庁「第四次中間とりまとめに関するパブリックコメントについて」、2021-06-11、pp.1–3、意見5–7。 資料を開く
- S04 資源エネルギー庁「第十二次中間とりまとめ」、2023-07-11、pp.5–18、23–26。 資料を開く
- S05 資源エネルギー庁「第十二次中間とりまとめに関するパブリックコメントについて」、2023-07-11、pp.1–4。 資料を開く
- S06 資源エネルギー庁「第十八次中間とりまとめ」、2024-08-16、pp.4–14。 資料を開く
- S08 JEPX「2023年度実施 ベースロード取引市場長期商品 取引結果通知」、2023年度、p.1。 資料を開く
- S09 JEPX「2024年度実施 ベースロード取引市場長期商品 取引結果通知」、2024年度、p.1。 資料を開く
- S10 JEPX「2025年度実施 ベースロード取引市場長期商品 取引結果通知」、2025年度、p.1。 資料を開く
