一般会計と分けて経理する理由
特別会計は、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)にもとづいて置かれます。同法第1条は「一般会計と区分して経理を行うため、特別会計を設置するとともに、その目的、管理及び経理について定めることを目的とする」としています。同法第2条が列挙する18の特別会計のうち、6番目に挙がっているのがエネルギー対策特別会計です。
管理する大臣は1人ではありません。同法第86条は、内閣総理大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、環境大臣が法令で定めるところに従って管理すると定めます。会計全体の計算整理は経済産業大臣が担い、その他は勘定と所掌事務の区分に応じて各大臣が分担します。
4つの勘定に分かれている
同法第87条は、エネルギー対策特別会計を4つの勘定に区分すると定めています。2026年4月1日の改正で、それまでの3勘定に先端半導体・人工知能関連技術勘定が加わりました。
| 勘定 | 主な役割 | 2027年度概算要求 |
|---|---|---|
| エネルギー需給勘定 | 省エネ、再生可能エネルギー、燃料の安定供給などエネルギー需給構造の高度化に関する対策 | 5,149億円(2026年度当初4,420億円) |
| 電源開発促進勘定 | 電源立地地域への交付金や、電源の利用に関する対策 | 2,167億円(同1,713億円) |
| 原子力損害賠償支援勘定 | 原子力損害賠償・廃炉等支援機構への出資など | 1,170億円(同759億円) |
| 先端半導体・人工知能関連技術勘定 | 先端半導体・人工知能関連技術に関する対策(2026年4月1日から) | 概算要求書で独立した勘定として計上 |
勘定をまたぐお金の動きも法律に書かれています。先端半導体・人工知能関連技術勘定の歳入には、一般会計からの繰入金のほか、財政投融資特別会計の投資勘定からの繰入金と、エネルギー需給勘定からの繰入金が挙げられています。エネルギー分野の会計に半導体・AIの勘定が同居する形は、この繰入れの関係で結ばれています。
入口にある電源開発促進税
電源開発促進税法(昭和49年法律第79号)第1条は、課税の目的をこう定めています。「原子力発電施設、水力発電施設、地熱発電施設等の設置の促進及び運転の円滑化を図る等のための財政上の措置並びにこれらの発電施設の利用の促進及び安全の確保並びにこれらの発電施設による電気の供給の円滑化を図る等のための措置に要する費用に充てるため、一般送配電事業者等の販売電気には、この法律により、電源開発促進税を課する」。
納める人は電気を使う人ではありません。第3条は「一般送配電事業者等は、その販売電気につき、電源開発促進税を納める義務がある」と定めます。課税標準は販売電気の電力量(第5条)で、税率は販売電気1,000キロワット時につき375円(第6条)。1kWhあたり0.375円にあたります。送配電会社が納めたこの税は、託送料金を通じて電気料金へ乗ります。
ただし、税収が特別会計へ直行するわけではありません。特別会計に関する法律第1条の2は、租税収入が特別会計の歳出の財源とされる場合でも、いったん一般会計の歳入とし、必要な金額を一般会計から繰り入れることで国全体の財政状況を一般会計で総覧できるようにする、という基本理念を掲げています。実際、電源開発促進勘定の歳入の筆頭は「一般会計からの繰入金」です。
規模はどれくらいか
経済産業省が2026年8月31日に提出した令和9年度(2027年度)概算要求では、エネルギー対策特別会計の要求額は2兆6,351億円です。2026年度当初予算の2兆5,333億円から増えます。このうちAI・半導体産業基盤強化フレームの5,272億円とGX推進対策費の1兆2,594億円は「強く豊かな日本」投資枠にも再掲されており、それらを除いた部分が8,485億円(2026年度当初6,893億円)です。
経済産業省関連の合計は7兆7,859億円で、エネルギー対策特別会計はその一部にあたります。概算要求の資料には「四捨五入や一部再掲を行っている関係で、合計が一致しない場合がある」と注記されています。
何に使われているか
2027年度概算要求のうち、エネルギー対策特別会計に計上される主な事業を挙げます。金額は要求額です。
| 事業 | 2027年度概算要求 |
|---|---|
| 電源立地地域対策交付金 | 842億円(2026年度当初794億円) |
| 大規模系統整備等事業 | 368億円(新規) |
| エネルギー構造高度化・転換理解促進事業費 | 73億円(同73億円) |
| 再生可能エネルギー主力電源化へ向けた太陽光発電の課題解決のための技術開発事業 | 32億円(同31億円) |
| 再生可能エネルギー事業規律強化事業 | 4.0億円(同4.0億円) |
電源立地地域対策交付金は、発電所が立地する市町村や周辺地域へ配る交付金で、電源開発促進勘定の歳出の柱です。2027年度に新規で立つ大規模系統整備等事業の368億円は、7月に成立した改正電気事業法で設けられた、経済産業大臣が地域内送電線等の整備計画を認定し電力広域的運営推進機関が資金を貸し付ける枠組みと対になる動きです。
読むときに気をつける3点
第一に、再掲に注意します。同じ金額が「投資枠」と「エネルギー対策特別会計」の両方に載ることがあります。合計を足し算しても資料の総額と合わないのはこのためで、資料自身が注記しています。
第二に、勘定を確かめます。同じ「エネルギー対策特別会計」でも、電源立地の交付金は電源開発促進勘定、再エネや省エネはエネルギー需給勘定と、財布が違います。2026年度からは先端半導体・人工知能関連技術勘定も加わりました。
第三に、概算要求は要求であって決定ではありません。各省が8月末に財務省へ出した段階の数字で、年末の予算編成を経て政府案が固まります。金額を示さずに要求する事項要求も含まれます。