どんな制度か
災害で家屋が壊れたり、電気が使えなくなったりした需要家に対して、電力会社が料金の取扱いを緩める仕組みです。法律が内容を一律に定めているわけではありません。各社が約款や供給条件にもとづいて、災害ごとに内容と期限を決めて公表します。したがって同じ災害でも会社によって期限や割引の書き方が少しずつ違います。
措置は2つの層に分かれます。需要家が直接受けるのは小売電気事業者による電気料金の特別措置で、その裏側で一般送配電事業者が小売電気事業者に対して託送料金等の特別措置を講じます。小売側の「工事費負担金等相当額の免除」は、送配電側の免除が適用されることを条件にしている場合があり、2つは連動しています。
引き金は災害救助法の適用
各社の公表文はほぼ例外なく「災害救助法が適用された地域において」と書き出します。災害救助法は災害の規模に応じて市町村単位で適用され、適用された市町村の一覧は内閣府が公表します。つまり、自分の住む市町村が一覧に載っているかどうかが最初の分かれ目になります。
対象地域は後から増えます。公表文には「上記以外の市町村で災害救助法が適用された場合、または激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律にもとづく激甚災害の対象地域に指定された場合は、当該地域も特別措置の対象とする」という一文が入るのが通例です。公表時点の一覧に自分の市町村が無くても、後から入ることがあります。
2026年8月27日からの大雨では、8月27日の時点で富山県の高岡市・氷見市・小矢部市・射水市、石川県の羽咋市・志賀町・宝達志水町・中能登町の8市町が対象になりました。
小売側:電気料金の措置
需要家が受けられるのは、おおむね次の4つです。会社と災害によって期限は変わります。下の表は関西電力が令和8年熊本地震について公表した内容にもとづきます。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 支払期日の延長 | 該当する月の電気料金の支払期日(検針日の翌日から30日目)を1か月延長する。延長の対象は、支払期日が災害救助法の適用日以降となるものに限る |
| 電気料金の免除 | 被災日から継続して電気を使わなかった場合、その月の料金を免除する(特定小売供給約款)。日単位で見る扱いでは、使わなかった日1日ごとに基本料金の4%を割り引く(電気供給条件) |
| 使用不能設備の基本料金の免除 | 電気設備が災害のため一時的に使えなくなった場合、その使用不能設備に相当する基本料金を免除する |
| 工事費負担金等相当額の免除 | 一般送配電事業者の託送料金等の特別措置で「工事費負担金の免除」または「臨時工事費の免除」の適用基準に該当する場合、工事費負担金等相当額を申し受けない |
2つ注意点があります。第一に、契約している約款の種類によって適用される項目が変わります。関西電力の例では、電気特定小売供給約款の契約者には不使用「月」の免除が、電気供給条件の契約者には不使用「日」の割引が適用されます。第二に、特別高圧・高圧の需要家については、託送料金における割引相当額を基本料金から割り引く形になります。
不使用日の割引率が1日あたり4%という数字は、25日ぶんで基本料金1か月分に達する計算になります。1か月まるごと使わなければ、実質的に基本料金がなくなる水準です。
送配電側:託送料金の措置
一般送配電事業者は、小売電気事業者に対して託送供給等約款上の特別措置を講じます。北陸電力送配電が2026年8月27日からの大雨について公表した内容は6項目でした。対象は託送供給等約款によるものが中心ですが、電気最終保障供給約款と、再生可能エネルギー発電設備からの電力受給契約要綱にもとづく系統連系受電サービス料金にも同様の措置が及びます。
| 措置 | 内容と期限 |
|---|---|
| 料金算定日の延長 | 接続送電サービス料金、臨時接続送電サービス料金、予備送電サービス料金の供給側料金算定日を1か月延長する(4か月分) |
| 不使用日の料金の免除 | 被災時から引き続き全く電気を使わなかった場合、被災日が属する料金計算月から6か月後の月末までの間、1日ごとに基本料金の4%を免除する |
| 工事費負担金の免除 | 接続供給を廃止したのち、被災時の契約負荷設備の総容量または契約電力等を超えない内容で2027年2月末日までに新たに申し込んだ場合 |
| 臨時工事費の免除 | 2027年2月末日までに再建等のために臨時接続送電サービスを申し込んだ場合 |
| 使用不能設備相当分の免除 | 電気設備の一部が被災により使用不能となった場合、2027年2月末日まで、その相当分の基本料金等を申し受けない |
| 取付位置変更の工事費の免除 | 2027年2月末日までに引込線、計量器等の取付位置の変更を申し込んだ場合で、被災時の供給方法と同一のとき、原則として初回に限り工事費用を申し受けない |
不使用日の免除には打ち切りの条件があります。北陸電力送配電は「被災日以降、電気のご使用を確認した日以降は接続送電サービス料金等の免除の対象外とさせていただきます」としています。いったん電気を使い始めた時点で、その先は対象から外れます。
申し込みに要るものと、遡らない扱い
特別措置は自動では適用されません。需要家からの申し出が要り、申込書と罹災証明書等の提出を求められます。罹災証明書は住んでいる市町村へ発行を申請します。関西電力は「市町村へ罹災証明の発行申請等を行っていただき、当社コンタクトセンターまでお問い合わせください」と案内しています。
申し込みが遅れると取り戻せない部分があります。北陸電力送配電は料金算定日の延長について「お申し込みいただいた時点ですでに料金算定を実施している場合は、遡っての適用はいたしません」としています。被災の直後に電力会社へ連絡しておくことが、受けられる額に直結します。
実務で確認する4点
第一に、契約している小売電気事業者を確認します。特別措置を公表するのは契約先の小売電気事業者で、送配電会社ではありません。旧一般電気事業者以外と契約している場合は、その会社が措置を出しているかを確かめます。
第二に、公表の場所です。この種のお知らせは、各社サイトの「お知らせ」欄に載ることが多く、プレスリリース欄には出ないことがあります。報道でも扱いが小さくなりがちです。会社によっては供給区域外の需要家向けに別のお知らせを出しています(中部電力ミライズの「中部エリア以外」など)。
第三に、期限です。多くの措置には「2027年2月末日まで」「6か月後の月末まで」といった終期があり、災害ごとに設定されます。第四に、対象地域の追加です。激甚災害の指定が後から出た場合、当初の一覧に無かった市町村も対象に入ります。