審議会資料解説

第3回 中長期取引市場検討WG供出義務量とエリア指定入札

大規模発電事業者に市場へ出すことを求める電力量と、地域間の値差リスクを抑える新しい入札案を解説します。

更新日:2026.08.03

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会議情報

2026.08.03 第3回 中長期取引市場検討WG

出典:資源エネルギー庁「第3回 中長期取引市場検討ワーキンググループ」

資料別の解説

資料3 中長期取引市場の詳細検討(2)(供出量を高める方策等) 開く

第3回では、燃料費を後から調整する商品の数、地域をまたぐ取引の市場範囲に加え、大規模な発電事業者へ市場への供出を求める方法が議論された。いずれも事務局案であり、制度の確定内容ではない。

燃料費調整付き商品は上限を設けない案

第2回では、燃料価格の変化を後から反映する商品を最大2種類とする案が示されていた。今回は、LNGや石炭の長期調達契約で使う原油などの指標に連動する方法を採り、商品数には制度上の上限を設けない案へ見直した。

最低限取り扱う商品
商品ベースミドル
3年前1年物燃調付き/燃調なし設定しない
1年前1年物燃調付き/燃調なし燃調付き/燃調なし

具体的な商品の設定・廃止は、市場参加者のニーズと流動性を見ながら市場運営者が判断する。商品を増やしすぎると注文が分散するため、市場開設後に取引量を確認して見直す。

一つの取引画面で買い手がエリアを指定

市場範囲は、全国一つ、東西などの複数市場、9エリア市場の3案に加え、「エリア指定入札」が示された。取引画面は一つにまとめ、売り手が登録した電源のエリアは他の参加者へ表示しない。買い手は約定を希望するエリアを複数指定し、価格とエリアの両方が合う注文だけを成立させる。

同じエリアを指定して成立した取引として扱うため、受渡時の市場分断による値差の影響を受けにくい。一方、指定エリアによって約定相手が限られるため、実質的には9エリア市場に近くなる。約定後にエリアをいつ、どの単位で公表するかは、価格指標としての透明性と売り手の匿名性を両立させる課題となる。

500万kW以上に販売電力量の10%を求める

市場開設から当分の間、保有電源の最大出力が合計500万kW以上の発電事業者を原則の対象とし、電気事業者の販売電力量の10%を市場へ供出する考え方が前提となっている。500万kW未満でも特定エリアの卸供給で支配的な地位を持つ事業者を対象に含める案や、分社化後も対象として扱う案が示された。

2026年3月時点で500万kW以上に該当する事業者の供給力は、国内全体の約7割を占める。資料ではJERA、関西電力、電源開発、東北電力、九州電力などが該当事業者として示されている。

供給計画と実績発電量で各社へ配分

供出を求める総量は、小売電気事業者が供給計画に記載する年間需要電力量の合計を基に算定する。各対象事業者への配分は、発電事業者の供給計画にある送電端電力量の推定実績を基礎にする案である。

太陽光・風力などの変動性電源、揚水発電、蓄電池、FIT電源の発電量は、配分計算から控除する案が示された。FIP電源は売却先に制限がないため、控除しない。グループ会社の実績は出資比率を掛けて合算し、グループ内では供出量の割り振りを認める方向で検討する。

3年前商品と1年前商品へどう分けるか

供出量は実需給年度ごとに算定し、3年前商品と1年前商品へ配分する。小売側の供給力確保義務の検討に合わせて5対2に分ける案、3年前を8割・1年前を2割とする案、それぞれに最低割合を設ける案、全量を3年前に出して売れ残りだけ1年前へ回す案が示された。

1年前の時点で需要と供給力を再計算するかも論点になる。再計算しなければ発電側の予見可能性は高いが、需要変化を反映しにくい。再計算する場合は直近の供給計画を使える一方、必要な供出量が変わる。

売れ残っても適正な価格で出し続ければ履行

供出を求める期間は、販売期間の最初から最後までとする案と、年1回または複数回の一定期間に取引を集中させる案がある。一定期間とする場合は、相対契約の交渉時期や小売事業者の供給計画提出前に調達機会を設けられるかを考慮する。

義務の履行は、成立した売り注文と、価格規律に適合する注文を指定期間中に出し続けた量の合計で判定する案である。結果的に売れ残っても供出を満たしたものと扱い、アイスバーグ注文は画面に表示されない部分も含める。

3年前商品で売れ残った量を1年前商品へ改めて出すかは未決定である。再供出すれば小売側の調達機会は増えるが、発電側はその量を間の年度に相対契約へ回せない。再供出を求めなければ、発電側は運用と販売計画を立てやすい。

市場開始時は総量だけを定める案

ベース・ミドルなどの負荷パターン別、燃料費調整付き・なしの商品別に最低供出割合を設けるかも論点となった。市場開始時は総量だけを定め、1年間の運用後に売り注文が出ない商品があれば最低割合を導入する段階的な案が示された。

市場別・エリア別の供出量は、市場範囲の決め方と連動する。全国一つや複数市場なら総量のみとし、9エリア市場やエリア指定入札ならエリアごとの供出量を算定する可能性がある。次回以降は、値差を固定する手段や価格規律などの検討が続く。

資料本体:資料3(PDF)