カーボンプライシングとは
CO2を出すことに値段を付け、排出量に応じた金額を負担させる仕組みの総称です。値段が付くと、排出を減らす設備や燃料のほうが費用面で有利になり、脱炭素の投資が採算に乗りやすくなります。
日本が採る方式は「成長志向型カーボンプライシング構想」と呼ばれます。負担をすぐに課すのではなく、先に投資支援を厚くして、負担は後から低い水準で始めて徐々に引き上げる、という順序が特徴です。根拠法は2023年に成立した脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法、令和5年法律第32号)です。
先に支援、後から負担という順序
負担は当初低く始める
内閣官房の資料は「炭素排出に係る負担を直ちに導入するのではなく、GXに取り組む期間を設けた後に、当初低い負担で導入し、徐々に引き上げる」と説明しています。
移行債の償還財源になる
化石燃料賦課金と有償オークションの収入は、先行して発行したGX経済移行債の将来の償還財源として位置づけられています。
3つの制度と導入スケジュール
| 排出量取引制度(GX-ETS) | 化石燃料賦課金 | 特定事業者負担金 | |
|---|---|---|---|
| 開始 | 2026年度(令和8年度) | 2028年度(令和10年度) | 2033年度(令和15年度) |
| 負担する人 | CO2の直接排出量が年10万トン以上の事業者 | 化石燃料の輸入事業者等 | 発電事業者 |
| 負担のしかた | 排出枠は無償で割り当て。過不足を市場で売買する | 輸入する化石燃料に由来するCO2の量に応じて徴収 | 排出枠の一部を有償で割り当て、その量に応じて徴収 |
| 根拠条文 | GX推進法第32〜41条 | 同第11条 | 同第15条・第16条・第17条 |
3つは別々の制度ではなく、同じ構想の中で負担を段階的に広げていく設計になっています。
化石燃料賦課金は輸入の段階でかかる
2028年度から、経済産業大臣が化石燃料の輸入事業者等に対し、輸入等する化石燃料に由来するCO2の量に応じて賦課金を徴収します(GX推進法第11条)。支払い義務を負うのは輸入事業者等ですが、環境省の資料は「転嫁を通じて社会全体で化石燃料の使用に伴うコストを負担する仕組み」と説明しています。発電用の燃料も対象になるため、電気料金への転嫁を通じて需要家に及びます。
国内で使用しない燃料などは適用除外の措置が置かれます(第11条第2項、第15条)。2025年の改正法では、納付手続(第18条)、督促と滞納処分(第20条)といった徴収を実際に行うための技術的な事項が整備されました。
2033年度から発電事業者は排出枠を買う
発電事業者は2026年度の制度開始時点から排出量取引制度の対象です。2033年度以降、そのうちオークション対象の事業者について、排出枠の一部が有償になります。
排出枠の価格には上限と下限がある
経済産業大臣が産業構造審議会の意見を聴いて、毎年度、参考上限取引価格(上限)と調整基準取引価格(下限)を定めます。市場が上限に達して排出枠の取引が難しくなった場合は、参考上限取引価格を乗じた額を納付すれば、その分の排出枠を持っているものとみなされます(第40条第3項)。価格が下限を下回るときは、GX推進機構が排出枠を買い入れることができます(第117条第1項)。
市場を開設・運営するのもGX推進機構です(第111条第1項第6号イ)。償却時に排出枠が足りない事業者は、不足量に応じた未償却相当負担金を支払います(第41条第2項)。なお2033年以降は、価格下落対策のリバースオークションは行わず、有償オークションの入札価格に下限を設ける方法へ切り替える方針が示されています。