同時市場とは
現在は、電気(kWh)を卸電力取引所、調整力(ΔkW)を需給調整市場で別々に取引しています。同時市場は、この二つを一体で扱う市場の設計案です。需要予測や送電線の制約、発電所を動かすための費用を考慮し、どの電源で発電し、どの電源に調整の余力を持たせるかを一緒に決めます。
需給調整市場との違いは、調整力だけでなく、電気をつくる計画も合わせて決める点です。入札内容や価格の決め方も変わるため、単に二つの市場を同じ時刻に開くという意味ではありません。
「いつから始まるのか」について、9月14日の第25回資料では開始日は示されていません。詳細業務設計と実現可能性の検証が続いています。導入に向けた最新の検討状況と、現行市場との比較を確認できます。
なぜ検討されているのか
市場が分かれている
発電所の能力を「電気として売るか」「調整力として確保するか」を別々に判断するため、市場間で供給力の取り合いが起こる可能性があります。
価格高騰の経験
2020年度の冬には、需要増と燃料制約でスポット市場の売り入札が不足し、価格が大きく高騰しました。市場に出されなかった電源が最終的に調整力として使われた例もありました。
再エネの拡大
天候で発電量が変わる太陽光・風力が増え、調整力の必要量は2034年度に現在の119〜129%になる見通しが示されています。
起動停止を含む計算
起動時間、最低出力、出力変化速度などの制約を入れ、需要を満たす電源の組合せと出力を計算します。
3つの市場で構成される
第二次中間取りまとめで示された方向
前日市場
中心となる市場。現在のスポット市場と需給調整市場を置き換え、翌日24時間を30分ごとの48コマで取引。発電費用が小さくなるように起動する電源と発電量を決める
直前市場
実需給の約1時間前に開催。新しい電源の起動は原則行わず、動いている電源の出力配分を調整。インバランス回避の取引を想定
発電事業者には、発電余力の全量入札と電源情報の登録を求める方針
約定価格と費用精算
シャドウプライス
需要が1kWh増えたときに発電費用がいくら増えるか(追加1kWhの供給に必要な費用)で電力価格を算定する考え方です。
Three-Part Offer
起動費・最低出力費用・増分費用の3つに分けて入札する方式。電源の実際の費用構造を市場に反映できます。
アップリフト
市場価格だけでは起動費などを回収できない電源に、不足分を個別に補償する仕組み。負担のしかたは検討中です。
差分精算
前日市場で決まった量から後の市場で量が変わった場合、変化分だけをその市場の価格で精算します。
いまの仕組みとの違い
| 同時市場(検討中) | 現在の仕組み | |
|---|---|---|
| 取引の対象 | 電気(kWh)と調整力(ΔkW)を同時に約定 | 電気はスポット市場、調整力は需給調整市場で別々に取引 |
| 電源の起動判断 | 市場全体で一体的に計算(SCUC・SCEDの考え方) | 各事業者がそれぞれ判断 |
| 入札のしかた | 発電余力の全量入札が原則。起動費などを分けるThree-Part Offer | 任意の量・価格で入札 |
| 価格の算定 | シャドウプライス+アップリフト | スポット市場はブラインド・シングルプライスオークション |
導入に向けた検討はどこまで進んだか
2021年12月の勉強会から議論が始まり、2024年11月に中間取りまとめ、2025年10月に第二次中間取りまとめが公表されました。2026年6月29日の第24回検討会では「同時市場の検討に係る業務設計・技術研究会」の設置が示され、第1フェーズとして電源起動・出力配分の技術研究と、入札・約定・精算などの詳細業務設計を進める段階に入っています。
9月14日の第25回では、技術研究の進め方の変更が提案されました。年度末までに一定の結果を出す前提のシミュレーションは実施せず、海外市場の調査や技術者へのヒアリングを通じた実現可能性の評価に重点を置く方向です。準備後にシミュレーションへ使える期間が約1か月と見込まれ、十分な検証が難しいことが理由です。
同時市場の導入を取りやめるという説明ではありません。年度内の完了を条件としないシミュレーションの内容と実施時期は改めて検討し、入札・約定・精算などの詳細業務設計も進めるとしています。この資料から市場の開始日が決まったとは読めません。
出典:第25回検討会・資料3(2、4、9、11ページ)。配布資料に示された事務局の提案を整理しています。
検討会資料と解説
同時市場検討会(会議体の解説)
kWhとΔkWを同時に約定させるしくみを検討している会議です。第二次中間取りまとめまでの流れを見られます。
会議体を見る →
第24回 同時市場検討会 資料解説
第1フェーズの技術研究と詳細業務設計の進め方を、資料別に整理しています。
解説を読む →
第二次中間取りまとめ 資料解説
同時市場の基本的な考え方から価格算定まで、当サイトがわかりやすく解説しています。
解説を読む →
経済産業省「第24回 同時市場の在り方等に関する検討会」
第24回で示された当初方針を確認できます。9月の変更は上の第25回資料を参照してください。
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用語集・解説記事一覧
市場や制度に関する他の用語の解説をまとめて見られます。
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