2019年度第1回のBL市場では、買い入札量232.4億kWhに対し、約定量は地域別の公表値の合計で16.1億kWhだった。制度開始後には取引機会の追加や預託金負担の軽減が進められた。2021年には年間一定量という商品条件への意見と、追加回を任意供出とした場合の売り注文不足への懸念が示されていた。〔S03、p.3/S04、pp.5–7/S06、p.4〕
初回の買い入札に対する約定率は約7%
年度別の約定量は、2019年度46.8億kWh、2020年度29.1億kWh、2021年度65.5億kWhと推移した。ここでの年度は入札を実施した年度を示す。〔S06、p.6〕
2019年度第1回の地域別公表値を合計すると、売り入札量は627.9億kWh、買い入札量は232.4億kWh、約定量は16.1億kWhになる。約定量を売り入札量で割ると約2.6%、買い入札量で割ると約6.9%だった。公表された地域別数値の丸めにより、政府資料が示す全国約定率7.0%とはわずかに差がある。〔S04、pp.5–6〕
| 2019年度第1回 | 地域別公表値の合計・計算値 |
|---|---|
| 売り入札量 | 627.9億kWh |
| 買い入札量 | 232.4億kWh |
| 約定量 | 16.1億kWh |
| 約定量/売り入札量 | 約2.6% |
| 約定量/買い入札量 | 約6.9% |
出典は第十二次中間とりまとめ、pp.5–6。割合は掲載数値から算出した。
売り入札量に比べて買い入札量が少なく、買い注文の中にも未約定が多かった。取引の成立には、同じ地域の市場で売り手と買い手の価格・数量条件が合うことが必要になる。全国の注文量に差があっても、実際の約定は地域ごとの入札条件に従って決まる。
購入量を左右する条件には、買い手が許容する価格、他の調達先の条件、年間の需要見通しがある。売り注文を増やす対策と、買い手が利用しやすい商品や取引時期を設ける対策では、作用する条件が異なる。
需要が減ると、固定単価でも販売量当たりの費用は増える
年間一定量の商品を購入した小売事業者は、受渡期間を通じて電気を確保する。需要家の離脱や時間帯別の需要減少があると、確保した電気の一部が余剰になる。余剰分の売却価格が購入価格を下回れば、売却損が生じる。
購入単価を固定していても、小売事業者が顧客に販売できる電力量は変動する。余剰電力を安い価格で売ることになれば、残りの販売電力量で回収する調達費が増える。小売事業者にとっては、単価と購入量を併せて決める必要がある。
費用の関係を示すため、平年の1年間、毎時1MWを12円/kWhで購入し、電力量の20%が余剰となり、6円/kWhで売却されると仮定する。手数料等は含めない。
| 試算項目 | 数量・金額 |
|---|---|
| 年間購入電力量 | 876万kWh |
| 年間購入費 | 1億512万円 |
| 余剰電力量 | 175.2万kWh |
| 余剰分の売却収入 | 1,051.2万円 |
| 顧客への販売電力量 | 700.8万kWh |
| 売却収入を差し引いた調達費 | 9,460.8万円 |
| 顧客への販売電力量当たりの調達費 | 13.5円/kWh |
この条件では、購入単価12円/kWhに対し、顧客への販売電力量当たりの調達費は13.5円/kWhになる。需要が減ったときに負う費用を見込むと、買い手には年間の購入量を抑える誘因が生じる。
数量変更については、JEPXの2026年8月31日改定版の取引規程に、参入から1年未満の一定の新電力を対象とする例外がある。所定の条件と期限の下で数量変更等が認められる。〔S13、BL取引の節〕
2021年には年間商品と燃料費調整への意見が出ていた
2021年の第四次中間とりまとめ案に対する意見5は、商品が年間の24時間一定量に限られ、地域と取引回数も限られる点を指摘した。再エネの影響等でスポット価格が下がる場面にも触れ、週間・月間・昼間などの商品がある先渡市場に、BL市場の未約定分を供出する案を示した。〔S03、p.3〕
意見7も、年間一定量を引き取る条件と燃料費調整がない条件を、買い手のヘッジ手段という観点から問題にした。政府は、BL市場による電源アクセスの改善と競争条件の公平化という目的を説明し、意見を今後の制度設計の参考にすると回答した。〔S03、p.3〕
年間商品と買い手の需要とのずれ、固定価格に含まれる燃料価格変動への対応は、燃料高騰が進む2022年より前に提出意見となっていた。商品を増やす案として、既存の先渡市場を使う方法も挙げられていた。〔S03、p.3〕
先渡市場への未約定分の供出を考える場合、商品ごとの注文量と、同じ電気を複数の商品に出す際の管理が論点となる。週間・月間・昼間の商品は買い手の需要に合わせやすいが、注文は商品ごとに分かれる。供出済み数量や価格規律の監視も、取引先の市場に合わせた運用になる。
1月の追加回は、供出見込みを根拠に任意方式となった
初期の制度見直しでは、需要見通しが明確になる時期に購入できるよう、1月の追加オークションが設けられた。預託金負担の軽減も行われた。取引機会を増やす措置と、取引前に拘束される資金を減らす措置だった。〔S06、p.4〕
追加回の供出条件について、2021年の意見6は、需給が厳しいときに任意供出では十分な売り注文が出ないおそれがあるとして、供出の義務付けを求めた。〔S03、p.3〕
政府は、事業者ヒアリングから従来の約定量以上の供出が見込まれると説明し、任意供出を採用した。追加回を小売事業者の調達手段の多様化に資する制度と位置付け、取引環境を見ながら必要に応じて検討すると回答した。供出量の見込みが、任意方式を選ぶ際の根拠となっていた。〔S03、p.3〕
その後、2022年度第4回では、大規模発電事業者からの売り入札がなかった。同回の取引は新電力等の供出によって行われた。〔S04、p.5〕
任意供出では、追加回に売り注文を出すかどうかを発電事業者が判断する。導入時に供出が見込まれていても、各取引時点の売り注文量は変わり得る。買い手が需要を見通しやすい時期と、売り手が供出する時期を合わせることが、追加回の利用条件となる。
取引時期と資金負担を変えても、引取条件は残る
1月の追加回によって、買い手は需要見通しが明確になった段階で購入する機会を得た。預託金の軽減は、参加時の資金負担を減らした。年間一定量を引き取ることによる余剰リスクや、売り手と買い手の希望価格の差は、それぞれ購入量の判断に残った。
初期の制度改修は、購入時期と資金負担を調整する対応だった。2021年に提出された商品条件への意見に続き、2022年度には燃料価格の大幅な変動が固定価格商品の見積りに影響した。次回は、地域別の約定結果と、燃料費調整付き商品を導入した経緯を取り上げる。
第3回「燃料高騰時の地域差と、固定価格・燃調付き商品の改修」を読む
