今回の要点
工場などが出すCO₂の量に応じて、企業が排出枠を用意する排出量取引制度では、削減によって余った枠を売ったり、将来へ持ち越したりできます。第10回は、枠が企業内にたまり過ぎて取引しにくくなることを防ぐため、持ち越し量と将来の割当を結び付ける事務局案を扱いました。
一定量は企業が将来の不足に備えて持てるようにし、それを超える余剰のうち売却していない分を、後の年度の割当から差し引く案です。企業ごとの割当量を公表する時期については、3つの方法を比較しています。
会合は10月27日開催。本文は配布資料の案に基づきます。議事録での結論と、制度上の最終決定は今後確認します。
2029年度の割当から、持ち越す量を調整する案
使わなかった排出枠を次の年度以降へ持ち越すことを「バンキング」と呼びます。企業が必要に応じて備えを持てることは大切ですが、多くの企業が余った枠を持ち続けると、枠を必要とする企業が買いにくくなる課題があります。
事務局は、2026〜2030年度の期間について、2029年度の割当から控除を始める案を示しました。初年度分の割当が2027年度秋になることも考慮した設計です。2031年度以降の扱いは、効果を確かめて検討する方針です。
持ち越せる基準は、2年前の割当量の15%
差し引く量は、①2年前の年度までの累積の割当量から累積の排出実績を引いた余剰、②当該年度8月末までの売却分、③持ち越し可能量、の3つで計算する案です。①から②と③を引き、結果がプラスならその量だけ割当を減らします。ゼロ以下なら控除はゼロとします。
持ち越し可能量は、2年前の年度の割当量の15%とする案です。この基礎となる割当量からは、リーケージリスクへの配慮、GX関連技術の研究開発への配慮、過年度の構造的変化に伴う調整量を除きます。
15%という案は、生産活動の変化による割当の調整が、2年平均で7.5%以上変わった場合に行われることと関係しています。調整が行われない範囲でも、2年分の不足に備えられるようにする考え方です。
累積の割当には、みなし保有などの枠や、事業所の新設・閉鎖、生産活動、災害による後年度の調整も含めます。それぞれの調整がどの年度に属するかをそろえて計算します。
市場での売却から、買い入れた量を引いて評価する
控除の計算に使う売却分は、排出枠取引市場での累積売却量から、市場の内外で買った累積量を引く案です。売却にはリバースオークションによる売却、購入には制度対象になる前に買った量も含めます。
企業同士で直接売買する相対取引の売却は、現時点の案では評価対象に含めていません。大口の相対取引を評価へ含めることは、取引を確認できる仕組みや市場の監視と合わせて、今後検討する位置付けです。
委託取引は委託した企業の取引として扱います。共同で申告する企業グループはグループ単位で計算し、グループ内だけの売買を余剰削減の売却として数えない案です。
企業の割当量を公表する方法は、3案を比較
企業ごとの排出量は、排出枠を納める手続きの後、対象年度の2年後に公表する考え方を示しています。割当量については、取引の透明性と、企業の生産活動などに関わる情報を守ることの両面から、公表の仕方を比較しています。
①企業ごとの割当量を手続き後すぐに公表する、②業種ごとに集計してすぐに公表する、③企業ごとの割当量を数年分まとめて後から公表する、という3案です。③では2026〜2030年度分を2035年度にまとめる例を挙げています。今回の配布資料は比較案で、公表方法の選択は残っています。
今後確認すること
持ち越し量の調整と情報公表は、今後も議論する予定です。資料は年内の取りまとめを目指す工程を示し、排出枠取引市場の開設は2027年度秋を予定しています。控除の計算方法と公表案が最終的にどう整理されるかを追います。
排出量取引制度小委員会