会議情報
2026.08.26 第8回 排出量取引制度小委員会
資料別の解説
資料3(1)排出枠取引市場の基本設計開く
排出枠取引市場は、GX推進法に基づきGX推進機構が設置・運営し、2027年度秋頃に開設する。安定的かつ円滑な運営のため、機構が主体的な役割を担いつつ、業務の一部を市場運営に専門性や経験を持つ事業者へ委託する案が示された。委託先に求める要件は今年度の議論を踏まえて後日検討する。
取引ルールは、2023年10月に東京証券取引所が開設したカーボン・クレジット市場を参照した。同市場は週5日・1日2回の節立会で全期間平均70.2%の約定率を確保しているが、排出枠取引市場は開設当初の流動性が限られる可能性があるとして、節立会を1日1回へ絞る。
| 項目 | 事務局案 |
|---|---|
| 開設日数 | 週5日(平日) |
| 約定時間 | 午後1回 15:00(注文時間 8:00〜14:59) |
| 約定方式 | 板寄せ方式(単一価格で一括約定) |
| 売買単位 | 1t-CO2 |
| 呼値の単位 | 1円 |
| 制限値幅 | 基準値段の±90% |
制限値幅は誤発注を防ぐための必要最小限の措置と位置づけた。急激な価格変動には、短期は市場参加者の拡大・節立会の頻度・売却促進策で、中長期は上下限価格による価格安定化措置で対応する。上下限価格の発動要件は次回以降に議論する。
資料本体:資料3(PDF) 関連解説:GX-ETSと電力業界
資料3(2)市場参加者の範囲と要件開く
本市場は制度対象者の義務履行の円滑化を目的とし、金融投資を目的とする市場ではない。このため市場開設当初は韓国と同様に実需に基づいた取引を基本とし、制度対象者以外の参加者は必要最小限に限る。開設後の取引状況を踏まえて段階的に見直す。
| 類型 | 要件 | 取引可能範囲 |
|---|---|---|
| 制度対象者 | 制度対象でなくなった後も、保有口座に排出枠がある間は参加可。新規取得は不可 | 自己勘定売買・委託売買 |
| 委託を受ける親会社等 | 子会社または関連会社である制度対象者から委託を受けて売却・調達を行う内国法人。兄弟会社は不可 | 委託売買のみ |
| 取引の円滑化に寄与する事業者 | カーボン・クレジット市場で前年度に午後立会の約定時刻まで売り買い双方の気配提示を同時に行った日数が年間営業日数の50%以上。直近2年度の取引量が取引実績を持つ事業者の平均以上。金商法または商先法に基づく取引所の取引資格を保有 | 自己勘定売買・委託売買 |
委託を受ける親会社等に自己勘定取引を認めないのは、子会社の義務履行と直接関係のない取引が行われ、余剰排出枠の売却収益が制度対象者の脱炭素投資に充てられない事態を避けるためである。市場外の相対取引を制限するものではない。
参照したカーボン・クレジット市場の取引実績は、2024年度が取引総量113万9,336t-CO2・事業者平均1万5,951t-CO2、2025年度が63万1,732t-CO2・1万108t-CO2だった。非制度対象者による排出枠の滞留を防ぐ保有上限の要否と、市場の監視方法は今後の論点として残る。
資料3(3)中東情勢を踏まえた割当調整措置の検討開く
国内の経済活動に大きな影響を及ぼす事案が起きた場合、制度上は割当ての調整措置を講じられるが、発動には経済産業大臣の告示が必要になる。今般の中東情勢は2026年2月末に始まり、一部の業種で事業活動への影響が生じている可能性があることから、適用の要否を検討する。
1点目は基準活動量・基準排出量の算定である。基準年度(2023〜2025年度)中に事案が発生した場合、大臣が認めれば影響を受けた年度の活動量を前年度実績とみなして算定できる。2026年3月の活動量が平時と比べて著しく減っている事業者が想定される。
2点目は割当年度の調整である。直近2年度の活動量平均が基準活動量から7.5%以上変動すると基準活動量を更新するが、大臣が認めれば引き下げを免除し、その年度は活動量の実績ベースで割り当てられる。免除しない場合、後年度の割当量まで減るおそれがある。
追加的な対応の必要性も論点とした。政府の要請で同一業種内の特定の事業者が他社の減産分を補ったのに増加率が7.5%未満にとどまり、割当量が調整されないまま排出枠が不足する場合には、当該業種の全事業者を活動量の実績ベースで割り当てる措置も考えられるとした。今後、各業種の実態を精査する。
資料本体:資料3(PDF) 関連解説:カーボンプライシング
資料3(4)制度の執行状況と今後の予定開く
2026年4月1日に改正GX推進法・施行令・施行規則、実施指針、上下限価格の告示など9本の関係法令を施行し、事業者向けの8本のマニュアルを公開した。6月1日には届出・報告の受付と排出枠の口座管理を行う専用システム「ERMS」をリリースしている。
排出目標量と排出実績量を確認する登録確認機関は、2026年1月から登録申請の受付を開始し、8月26日時点で21社の申請に対し14社を登録済み。日本品質保証機構、日本能率協会、日本海事協会、EY新日本有限責任監査法人、あずさ監査法人などが含まれる。GX推進機構のポータルサイトには8月25日時点で826件の問合せがあった。
制度対象者は9月30日までに、制度対象である旨の届出と移行計画の提出を行う必要がある。移行計画は秋冬頃に公表される。
次回以降は上下限価格の発動要件、割当量等の公表、売却促進策、市場機能の監視方法、化石燃料賦課金の算定方法などを議論し、年末頃を目途に取りまとめる。