マルチプライス方式は、ひとことで言うと、落札した案件ごとに、それぞれの入札価格がそのまま適用される方式です。シングルプライス方式のように市場全体で一つの共通価格を使うのではなく、約定した案件ごとに価格が分かれます。JEPXの業務規程では、マルチプライスオークション方式をペイアズビッド方式として位置づけています。
考え方はシンプルです。たとえば、Aが10円、Bが12円、Cが15円で応札し、3件とも落札した場合、マルチプライス方式ではAは10円、Bは12円、Cは15円で扱われます。つまり、安く入れた人は安い価格、高く入れた人は高い価格のままです。これが、落札者全員に同じ価格を適用するシングルプライス方式とのいちばん大きな違いです。JEPXの非化石価値取引の資料でも、FIT証書側はマルチプライスオークションとして整理されています。
電力制度の中では、この方式は主に案件ごとの事情が大きく違う市場で使われやすいです。たとえば、長期脱炭素電源オークションでは、落札された電源の応札価格がそのまま約定価格になるマルチプライス方式が採られています。これは、新設や改修の内容、電源種、投資額が案件ごとにかなり違うため、共通価格よりも、各案件の提示価格をそのまま使う考え方が合いやすいからです。予備電源制度でも、落札電源の応札価格が約定価格となるマルチプライス方式が用いられています。
一方で、マルチプライス方式は電力市場のどこでも使われているわけではありません。たとえばJEPXのスポット市場、間接送電権取引、ベースロード市場はシングルプライス方式ですし、容量市場のメインオークションも原則はシングルプライス方式です。ただし、容量市場では、市場競争がかなり限られたエリアで価格が大きく跳ねる場合に、一部でマルチプライス的な扱いが入ることがあります。
マルチプライス方式は、落札した案件ごとに自分の入札価格がそのまま適用される方式です。市場全体の共通価格を使うシングルプライス方式と違い、案件ごとの価格差がそのまま残ります。電力制度では、長期脱炭素電源オークション、予備電源制度、FIT非化石証書の取引などで使われています。