TERA WHAT テラワット 日本の電力のいまを、わかりやすく。
卸電力市場

先渡市場

将来受け渡す電気の価格を前もって決めておくための市場

← トップページに戻る

先渡市場とは何か

卸電力市場の先渡市場は、ひとことで言うと、将来受け渡す電気の価格を前もって決めておくための市場です。 JEPXでは、先渡取引を「将来の1年間、1か月間または1週間を通じて受け渡される電気」を対象とする取引として位置づけています。 スポット市場が翌日の電気、時間前市場が当日の計画修正を扱うのに対し、先渡市場はもっと先の期間の価格をあらかじめ固定したいときに使われます。 JEPXの取引ガイドでも、先渡市場は将来受け渡される電気の価格を固定化したい、つまり価格ヘッジをしたい場合に適した市場だと説明されています。

この市場が使われるのは、将来の価格変動リスクを小さくしたい場面です。 発電事業者にとっては、先の売電価格をある程度固定できれば収入見通しを立てやすくなります。 小売電気事業者にとっては、先の調達価格を固定できれば、スポット市場の価格変動をそのまま受ける割合を減らせます。 JEPXの四半期報告でも、先物・先渡市場を通じて将来の価格変動リスクを回避することは、発電事業者の売電収入の安定化に有用であり、小売電気事業者もスポット市場がボラティリティの大きい市場であることを前提に、先物・先渡市場などを通じた適切なリスク管理を行う必要があると整理されています。

商品の種類

先渡市場で扱う商品は、受渡期間の長さと受渡しの型で分かれています。 受渡期間は年間・月間・週間の3種類、受渡しの型は0時から24時まで通して受け渡す24時間型と、平日の8時から18時に受け渡す昼間型の2種類です。 ただし、年間商品には昼間型はありません。 このため、JEPXの取引ガイドでは、先渡市場の商品は以下の5種類と整理されています。

取引できる期間も商品ごとに異なります。 月間商品は受渡し対象の月の前年同月の最初の営業日から、年間商品は受渡期間の最初の日が属する年の3年前の4月の最初の営業日から取引が始まります。 取引ガイドでも、先渡市場は最大で3年前から使える市場として示されています。

価格の決まり方:ザラバ方式

価格の決まり方は、スポット市場とは異なります。 スポット市場は1コマごとに共通価格を決めるシングルプライス方式ですが、先渡市場はザラバ方式です。 JEPXの取引規程では、先渡取引は商品ごとにザラバ方式で約定し、約定価格は約定した売買入札のうち先に入札された価格になると定められています。 立会は毎営業日に行われ、時間は前場が午前10時から正午、後場が午後1時から午後3時です。 未約定の注文は次の場に残ります。 つまり、先渡市場はその場で条件が合った相手と順次成立していく市場です。

受渡しの仕組み

先渡市場は将来の電気を扱う市場ですが、受渡しの仕組みは少し独特です。 取引規程では、先渡市場で成立した売買量は、受渡期間に入るとJEPXの翌日取引を通じて受け渡しを行うとされています。 売り越しならJEPXが前日に売り入札を代行し、買い越しなら買い入札を代行します。 その代行入札は、翌日取引で他の入札より優先して約定する価格で出されます。 つまり、先渡市場で将来の価格を先に決めておき、実際の受渡しはその期間のスポット市場を通じて行う仕組みです。

JEPXの業務規程では、先渡取引は「電気の実物卸取引」と位置づけられています。 先渡市場は、先物市場のように完全な金融決済だけで閉じる商品ではなく、実際の受渡しと清算の仕組みが組み合わさった市場です。

最近の取引状況

先渡市場は現在も存在しているものの、流動性は高くありません。 JEPXの令和7年度秋期(2025年10月1日〜12月31日取引分)の四半期報告では、先渡取引について「今期も総じて入札は低調であった」と総括されており、週間商品・月間商品・年間商品のいずれも約定なしでした。 同じ報告では、電力先物市場を活用したリスクマネジメントが進む中で、機能がより流動性の高い市場へ集約していくことは自然な流れだと整理されています。

監視

先渡市場も監視が前提の市場です。 JEPXの四半期報告では、先渡取引についても、仮装取引や作為的相場形成などの不公正な取引がないか監視しているとされています。 令和7年度秋期報告では、先渡取引について詳細調査0件、注意喚起0件、処分0件でした。 加えて、市場取引検証特別委員会は、発電部門でシェアの大きい事業者について、先渡取引の取引量増加に向けた相応の努力が見られるかも検証対象にしています。

先物市場との違い

名前が似ている先物市場とは少し性格が異なります。 JEPXの先渡市場は実物の卸取引で、受渡期間に入ると翌日取引を通じて実際の電気の受渡しが行われます。 これに対して先物市場は、将来の価格変動リスクを管理するためのデリバティブ市場であり、実際の電気の受け渡しは行われません。 たとえばEEXの日本電力先物は、日本の電力価格をヘッジするための商品として提供されています。

まとめ

卸電力市場の先渡市場は、将来の1週間・1か月・1年といった期間の電気の価格を前もって決めておくための市場です。 スポット市場や時間前市場が直近の需給調整に使われるのに対し、先渡市場は将来の価格変動リスクを抑えるために使われます。 価格はザラバ方式で決まり、実際の受渡しは翌日取引を通じて行われます。 現在は取引量が多い市場ではありませんが、JEPXの制度上は、価格ヘッジのための実物卸市場として位置づけられ、監視のもとで運営されています。

関連市場