自己託送は、ひとことで言うと、自分でつくった電気を、送配電ネットワークを使って、自分の別の拠点へ送る仕組みです。資源エネルギー庁は、発電用または蓄電用の設備を設置する者が、その設備で発電または放電した電気を、一般送配電事業者のネットワークを介して、自分の別の場所にある工場などへ送る送電サービスだと説明しています。制度としては2013年に制度化されました。
ここで大事なのは、自己託送は電気を他人に広く売る仕組みではないということです。基本は「自己から自己へ」の送電で、送電先になれるのは、自分自身の拠点か、一定の密接な関係がある相手の需要場所です。資源エネルギー庁の指針では、この密接な関係として、生産工程上の強い結び付き、親子会社などの資本関係、役員派遣などの人的関係、長期継続する取引関係などが示されています。
自己託送が使われる場面として多いのは、工場や発電設備を持つ企業が、離れた別の工場や事業所へ自家発電の電気を回したい場合です。送配電会社の実務資料でも、工場などに自家用発電設備を持つ需要家が、その電気を別の場所にある自社や密接な関係先の工場などへ送る制度だと説明されています。PPAのように第三者の発電事業者から長期で買う仕組みとは違い、自己託送はあくまで自分の電源を自分で使うための仕組みです。
この制度が注目される理由の一つは、遠隔地の再エネ電源を自社利用しやすくなることです。資源エネルギー庁は、2021年度の制度見直しの背景として、需要家が遠隔地から再エネ電気を直接調達したいというニーズの高まりを挙げています。この見直しでは、資本関係などがない相手でも、一定の条件を満たす組合を設立した場合には、密接な関係があるものとみなして自己託送を認める規定が新たに設けられました。
ただし、自己託送は申し込めば誰でもすぐ使えるわけではありません。いくつかの要件があります。送配電会社の実務資料では、主な確認事項として、発電設備が非電気事業用電気工作物であること、発電場所と需要場所が自己または密接な関係にあること、最終的に使う相手が自己託送契約者または密接関係者であること、計画値同時同量を守れることが示されています。
この「計画値同時同量を守ること」は、実務ではかなり重要です。自己託送でも、30分ごとに発電計画と需要計画を作って提出し、できるだけ計画どおりに運用する必要があります。もし計画と実績に差が出れば、発電側と需要側のそれぞれでインバランス料金の精算が発生します。送配電会社の資料でも、「インバランスが発生することを前提とした事業計画は受けられない」と明記されています。
つまり、自己託送は「自分の電気だから自由に流せる」という制度ではありません。送配電ネットワークを使う以上、一般の託送と同じように、系統への影響、契約手続、計画提出、インバランス精算などが関わります。実際、送配電会社は事前相談や要件確認を早めに行うよう案内しており、発電場所と需要場所の関係性や提出書類の確認を行っています。
費用の面では、自己託送もネットワークを使うので、当然ながら託送料金にあたる費用が発生します。さらに、計画どおりにいかなかった分にはインバランス料金もかかります。したがって、自己託送は「電気代が完全に無料になる仕組み」ではなく、小売を通さずに自家発電を離れた場所で使える代わりに、託送や需給管理のコストと責任を自分で負う仕組みと考えるのが近いです。
自己託送は、自分で発電した電気を送配電ネットワークで自分の別拠点へ送る制度です。第三者への一般的な販売ではなく、自己または密接な関係先への供給に限られます。再エネや自家発電の活用手段として使えますが、託送費用、計画提出、インバランス対応などの実務も必要です。PPAが「他者の電源を長期で買う仕組み」だとすれば、自己託送は「自分の電源を別の自分の拠点で使う仕組み」です。