日本の電力を考えるうえで、現在の大きな前提は、電気を安定して確保しながら、脱炭素も進めなければならないということです。
最新の第7次エネルギー基本計画は、2025年2月18日に閣議決定されました。また、エネルギー白書2025は、2025年6月13日に閣議決定・国会報告された内容として公表されています。ここでは、この2つの資料をもとに、日本の電力の現状と課題を整理します。
増える電力需要
これまで日本では、人口減少や省エネの進展によって、電力需要は大きく伸びにくいと見られてきました。しかし、最近は見方が変わりつつあります。
第7次エネルギー基本計画では、DXやGXの進展によって電力需要が増える可能性が示されています。特に、データセンター、半導体工場、EV、電化の進展などが、今後の電力需要を押し上げる要因になります。
火力発電への依存は大きい
日本の電力は、今も火力発電への依存が大きい状況です。2023年度の電源構成では、火力発電が約68.6%を占めています。一方、再生可能エネルギーは22.9%、原子力は8.5%です。2050年度までにカーボンニュートラルを達成すると宣言している日本は、脱炭素化を進める必要があります。2040年度の見通しでは、再エネを4〜5割程度、原子力を2割程度、火力を3〜4割程度とする方向が示されています。
火力発電は出力を調整しやすい電源です。そのため、再エネの発電量が少ない時間帯や、電力需要が高い時間帯を支える役割があります。
一方で、火力発電は燃料を海外から輸入する必要があります。LNG、石炭、石油の価格が上がれば、電気料金にも影響します。ロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギー価格が大きく動いたことで、日本のエネルギー供給体制の弱さが改めて意識されました。
エネルギー自給率の低さが課題
日本は、エネルギー資源に乏しい国です。エネルギー白書2025の解説では、日本のエネルギー自給率は15.3%と低く、海外から輸入する化石エネルギーへの依存が大きいと説明されています。
これは電力にも直結します。火力発電の燃料を海外に頼っている以上、国際情勢、燃料価格、為替、輸送ルートの混乱が、電気料金や安定供給に影響します。
第7次エネルギー基本計画でも、日本はすぐに使える資源に乏しく、地理的制約もあるため、エネルギー安定供給の確保が常に最優先課題だとされています。
増える再エネの課題
太陽光や風力は、天候によって発電量が変わります。晴れている昼間には発電量が増えますが、夜や無風の時間帯には発電できません。そのため、蓄電池、火力、揚水発電、需要側の調整、地域間連系線などを組み合わせて、電力の需給を合わせる必要があります。
また、再エネの適地は地域によって偏ります。北海道や東北には風力の適地がありますが、大消費地は東京・大阪・名古屋などに集中しています。そのため、発電した電気を需要地に送るための送電網整備も重要になります。
政府方針は「原子力推進」
第7次エネルギー基本計画では、再エネと原子力を共に最大限活用する方向が示されています。
背景には、2040年に向けて電力需要が増える可能性があります。データセンター、半導体工場、電化、生成AIなどにより、今後はこれまで以上に多くの電力が必要になると見込まれています。
その中で、CO2を出さない電源を十分に確保できるかが、日本の産業競争力にも関わる問題になっています。
電力の課題は「安定供給・価格・脱炭素」の同時達成
日本のエネルギー政策は、S+3Eを基本にしています。これは、安全性を大前提に、安定供給、経済効率性、環境適合性をバランスさせる考え方です。第7次エネルギー基本計画でも、この原則がエネルギー政策の基本的視点とされています。
電力でいえば、課題は次の3つに集約できます。
1つ目は、安定供給です。電気は大量に貯めにくく、需要と供給を常に一致させる必要があります。需要が増える中で、必要な発電設備や送電網を確保しなければなりません。
2つ目は、価格です。燃料価格が上がれば電気料金に影響します。再エネや原子力を増やすにも、送電網、蓄電池、安全対策、設備投資の費用がかかります。脱炭素を進めながら、国民負担をどう抑えるかが課題になります。
3つ目は、脱炭素です。2050年カーボンニュートラルに向けて、火力発電への依存を下げ、再エネや原子力などの脱炭素電源を増やす必要があります。ただし、再エネだけで安定供給を支えるには、系統整備や調整力の確保が不可欠です。
