AIニュース(2026年8月30日〜9月5日分)
OpenAI(ChatGPT)
9月3日 新世代モデル「GPT-6 Astra」を公開
OpenAIが新しい世代のモデルGPT-6 Astraを公開しました。同社は「世界でもっとも知的で、もっとも意図に沿ったモデル」と位置づけ、コンピュータ操作、ブラウザ操作、ソフトウェア工学、サイバーセキュリティ、科学、専門業務で最高水準だとしています。数学のFrontierMath Tier 4で98%、ARC-AGI-3で99.9%、ExploitBenchで100%を記録し、いずれも上限に近い水準です。ARC Prize FoundationのGreg Kamradt氏は、ARC-AGI-3の96%のレベルで人間の行動効率の基準線を上回り、事実上の人間並みに達したとコメントしています。
比較の数字も公表されました。科学研究の作業を扱うTerminal-Bench Science 0.1では64.6%で、Claude Fable 5.1の52.6%を上回り、API費用の見積もりは約31%低いとしています。専門業務のAgents' Last Examでは59.3%で、Claude Opus 5の55.5%、GPT-5.6 Solの53.6%を上回り、出力トークンはOpus 5比で約65%少ないとしています。ターミナル作業のTerminal-Bench 4.0は57.9%(GPT-5.6 Solは37.3%、Claude Fable 5.1は55.8%)、大学院水準の科学的推論を測るGPQA Diamondは96.0%でした。CADコードを生成するBenchCADでは幾何一致95.9%で、費用はGPT-5.6 Sol比で約43%低いとしています。
速さも改善したとしています。コンピュータ操作のOSWorld 2.0の遅延模擬では、1タスクあたり約40分で72.6%(GPT-5.6 Solは約75分で65.7%)となり、所要時間が約47%短くなりました。あわせてCodexの実行環境も更新し、Mind2Webでの作業完了がGPT-5.6 Solの体験に比べて1.9倍速くなったとしています。Codexでは、文脈の上限に達したときに要約で圧縮する代わりに、文脈をまたいでメモを残し過去のやり取りを検索できる方式が実験機能として入りました。
提供は段階的です。公開当日は限られた組織のみで、その後数日かけてChatGPTのPlus、Pro、Business、Enterpriseと、OpenAI API、Microsoft Azure、AWS Bedrockへ広げるとしています。ChatGPTのリリースノートには、指示の解釈が誤っている可能性を検知した場合に会話を一時停止または停止して利用者に判断を委ねる安全監視が加わったことも記載されています。
9月3日 サイバー能力が社内基準の「Critical」に到達
OpenAIは、Astraのサイバー能力が自社のPreparedness Frameworkでいう重大(Critical)のしきい値に達したと公表しました。本番の安全策を外した状態での試験では、既知の脆弱性を実際に動く攻撃コードへ変換できるかを測るExploitBenchで100%(GPT-5.6 Solは78.5%)、ExploitGymで42.4%(同30.3%)でした。過去3か月の脆弱性だけで作った社内評価では、評価の最中に未知のゼロデイ脆弱性を2件みずから発見して使用し、OpenAIは両方を開発元へ開示したとしています。ソフトウェアのバイナリを解析するSRE-Benchは1回で88.0%、4回以内で99.2%(GPT-5.6 Solは55.9%と68.7%)でした。
公開されている版では、脆弱性の実証コードを作るような高度な作業は拒否する設定です。防御側の用途としては、安全なコードレビューや修正の適用に使えるとしています。OpenAIは同じ9月3日に、防御を担う組織向けの取り組みDaybreakを公表し、今後数週間かけて制限を緩めた版へのアクセスを広げ、脆弱性と実証コードの検証、マルウェア解析、検知の開発といった用途を可能にするとしています。
9月1日 ChatGPTが電子カルテと公的な医療データにつながる
ChatGPT for Healthcareに、電子カルテのEpicと接続する仕組みと、公的な医療データを扱うHealthcare Public Dataプラグインが加わりました。Epic連携では、許可された範囲の患者情報をChatGPTへ取り込み、前回受診からの変化、確認すべき検査結果、薬の変更や専門医の助言、未処理の紹介や積み残しを尋ねられます。電子カルテの画面の中にChatGPTを組み込む使い方にも対応します。公的データ側はPubMed、DailyMed、CMS Coverageなどを対象とし、米国の対象利用者向けに9つのアプリをまとめた形で提供されます。これらは読み取り専用で、患者のカルテにはアクセスしません。
8月31日 ChatGPT Adsが年換算売上10億ドルに
広告事業のChatGPT Adsが、開始から200日未満で年換算の売上高10億ドルに達したと公表されました。数万の広告主が使い、40か国以上で提供しています。同日以降、Ads Managerからの直接購入がインド、欧州、中東、北アフリカでも可能になりました。OpenAIは、広告は消費者向けの定額課金、法人向け提供、従量課金APIと並ぶ収益の柱の一つで、広告付きの無料枠が、週間10億人を超える利用者へChatGPTを届ける支えになっていると説明しています。広告は回答と明確に分けて表示し、回答内容には影響せず、広告主が個人の会話にアクセスすることはないとしています。
8月31日〜9月3日 ChatGPTの機能更新
8月31日は複数の更新がありました。写真や指示からステッカーの組を作ってiMessageやWhatsAppで使える機能が全利用者のモバイルへ、音声会話の内容をiPhoneのロック画面やDynamic Islandに表示する機能が加わりました。デスクトップ版の内蔵ブラウザでは、対応サイトが提供するツールをWebMCPという仕組みで直接使えるようになり、ブラウザ拡張の対応先にMicrosoft Edge、Brave、Opera、Vivaldiが加わりました。9月3日には、ZendeskとOneNoteのプラグインがベータで追加され、ChatGPT Sitesを社外の指定した相手へ公開せずに共有できるようになっています。
Anthropic(Claude)
9月1日 「Claude Fable 5.1」と「Claude Mythos 5.1」を公開
Anthropicが、コーディングと知識労働に向けた新しいモデルを2つ公開しました。Fable 5.1とMythos 5.1は中身が同じモデルで、違うのは安全策の水準です。Fable 5.1は一般に提供され、Mythos 5.1は信頼できる利用者に限る枠組みでのみ提供されます。Mythos 5.1の安全策は、サイバーセキュリティと生命科学の作業を支えることを狙って設計されたものです。
価格が下がりました。トークンで課金される場合、典型的な作業でFable 5より約25%安くなります。すでに処理して保存した入力をもう一度読むキャッシュ読み取りの単価を下げたためで、エージェント的な作業では節約幅が最大で約45%になるとしています。データの取り扱いでは、顧客が完全に管理するクラウド基盤へデータを置くEnterprise Frontier Safeguards(EFS)という仕組みを用意し、今秋から段階的に提供します。それまでの間、対象顧客はデータを一切保持しない設定でFable 5.1を使えます。
安全策は誤検知を減らす方向で見直されました。サイバーセキュリティでは、無害な内容を誤って弾く割合が従来より60%少なくなっています。Fable 5.1はソフトウェアの脆弱性を見つける用途に使えるようになりましたが、その脆弱性を突く攻撃コードの開発には使えません。生物学については米国政府と組んだアクセスプログラムを設け、Mythos 5.1の高度な生物学の能力へ道を開くとしています。科学者向けの登録受付を近く始める予定です。
性能の比較も公表されました。科学研究の作業を扱うTerminal-Bench-Science 0.1でFable 5.1は52.6%(Fable 5は24.7%、Opus 5は29.0%、GPT-5.6 Solは22.4%)、ターミナル作業のTerminal-Bench 4.0で55.8%(Mythos 5.1は60.9%、Fable 5は42.0%、Opus 5は52.3%)、知識労働のGDPval-AA v2で1853点(Fable 5は1723点、Opus 5は1824点)、業務自動化のAutomationBenchで31.4%(Fable 5は17.1%、Opus 5は26.9%)でした。努力の水準を低・中に落とすと、Fable 5と同等かそれ以上の結果をより安い費用で出せるとしています。既定はClaude CodeがHigh、Claude CoworkとClaude.aiがMediumです。
投資会社Millenniumは、100万回に1回ほどしか起きない社内システムのまれなクラッシュについて、4〜5年のあいだ誰も説明できず他のモデルでも見つけられなかった原因を、Fable 5.1が外部ベンダーのライブラリを逆アセンブルしてコアダンプと突き合わせ、そのライブラリの不具合まで辿り着いたとコメントしています。
9月1日・8月31日 安全性と社内体制の取り組みを公表
モデル公開と同じ日に、顧客と一緒に企業向けの安全策を作る取り組み(Enterprise Frontier Safeguards)についての記事が出ました。前日の8月31日には、整合性(アライメント)とセキュリティの取り組みを改善する方針も公表されています。
Google(Gemini)
9月2日 「Gemini 3.8 Flash」と「Gemini 3.8 Flash Cyber」を公開
Googleが新しいFlash世代のモデルを2つ公開しました。3.7 Flashの公開から3週間後で、6週間で3回目のFlashの公開になります。Gemini 3.8 Flashは推論とコーディングで同社最高としつつ、速度と低価格は3.7 Flashのままで、価格も3.7 Flashと同じ導入価格の100万入力トークンあたり0.75ドル、100万出力トークンあたり3.75ドルに据え置かれました。長い工程のソフトウェア工学を測るDeepSWE v1.1では、費用がはるかに安いまま多くの大型モデルを上回るとしています。金融のVals Finance Agent V2、法務のHarvey's Legal Agent Benchmarkでも3.7 Flashと他の最前線モデルを上回り、HLE-Verifiedは54.9%でした。
性能が上がった理由として、Googleは「3.8 Flashはより多く働く」と説明しています。複雑な作業では推論の手順を余分に踏み、道具を繰り返し呼ぶため、努力の水準を上げるとトークンの使用量が増えることがあります。計算資源の効率を優先する用途では、努力の水準を下げるか、引き続き対応する3.7 Flashを使うよう案内しています。
もう1つのGemini 3.8 Flash Cyberは、脆弱性の検出と修正の自動化に特化した版です。新設のFairwind Programを通じて、信頼できる防御側にだけ提供されます。脆弱性発見の業界標準ベンチマークCyberGymで最前線水準を示し、3.5 Flash Cyberと、これより大幅に大きい最前線モデルを上回ったとしています。C/C++に偏る同ベンチマークだけでは実務を測れないとして、20のプログラミング言語にまたがる社内ベンチマークでも評価しています。同じ日に、政府と企業向けの先回り型のサイバー防御に関する記事も公表されました。
9月1日 動画理解をエージェント型に切り替え
動画を分析する仕組みが、固定のコマ数で丸ごと読み込む方式から、必要な場面だけを自分で探して見に行く方式へ変わりました。従来は既定で毎秒1コマの割合で取り込んでいたところ、モデルが目的に応じて「どこを、どの速さで、どの手段(映像・音声・文字起こし)で見るか」を決め、必要な部分だけを読み込みます。標準的な動画分析のベンチマークで、費用が最大66%、トークン使用量が最大88%減り、精度は最大7%上がったとしています。10分の手順動画から90分の講義、数時間の録画まで、長い動画ほど効果が大きいとしています。
対象はGemini 3.7 Flash、3.6 Flash、3.5 Flash-Liteの3モデルで、Google AI StudioのGemini APIとGemini Enterprise Agent Platformから、アップロードした動画とYouTubeの動画に対して使えます。1秒未満の場面の特定、長い動画からの検索、異常検知、正確な計数などが挙げられています。
9月4日 音楽生成の「Lyria 3.5」をGeminiアプリとAPIで提供
音楽生成モデルの新版Lyria 3.5が、Geminiアプリと Gemini APIで使えるようになりました。歌声の表現力と編曲が改善し、より高い音質で作れるとしています。アプリではジャンルを選ぶか言葉で説明し、歌ものか演奏だけかを選べます。背景音楽や誕生日向けの曲などのテンプレートが用意され、曲の長さも短いものと長いものから選べます。提供は全世界のウェブとモバイルアプリで、Google Flow Music、Google AI Studio、Google Vidsでも使えます。
Microsoft(Copilot)
対象期間 リリースノートと公式ブログの更新なし
Microsoft 365 Copilotのリリースノートは、8月11日から25日までの変更をまとめた8月25日付の更新が最新で、対象期間に新しい更新はありませんでした。Microsoft Copilot Blogにも対象期間の投稿はありません。8月25日付の内容(ExcelのEdit with CopilotがPythonを実行できるようになった件など)は前号で扱っています。
その他
9月1日〜4日 SpaceXAIがGrok Botを企業向けに広げる
xAIから社名表記が変わったSpaceXAIが、常時稼働のエージェント群Grok Botの企業向け提供(Grok Bot for Enterprise)を9月3日に公表しました。同じ日に、エージェントが常駐する前提での設計についての記事、9月4日には調達業務にGrok Botを充てた事例が出ています。9月1日には最前線モデルの生物安全保障に関する記事も公表されました。対象期間に新しいGrokモデルの公開はなく、Grok 4.6の公開は8月14日です。
9月3日 Alibabaが「Qwen-Drive-1.0」と「Qwen3.8-Flash-Next」を公開
Alibabaが同じ日にオープンウェイトのモデルを2つ公開しました。Qwen-Drive-1.0は自動運転向けの視覚言語基盤モデルで、3次元の知覚と視覚的な質問応答を事前学習の段階で統合し、経路計画まで扱いながら、事前学習した視覚言語モデルの構造には手を加えていないとしています。基盤はマルチモーダルのQwen3.5-4Bで、鳥瞰図の知覚を担う部分など2つの外部モジュールを付ける構成です。Qwen3.8-Flash-Nextはマルチモーダルの混合エキスパート(MoE)モデルで、次世代のQwen4で使うアーキテクチャの先行版という位置づけです。
対象期間 新しいモデルの公開は8件
OpenAI、Anthropic、Google、Meta、xAI(SpaceXAI)、Mistral、ByteDance、MiniMax、Moonshot AI、DeepSeek、Alibaba、Runway、Suno、Udioの公式発表とリリースノートを対象期間の日付で確認しました。新しいモデルの公開は、OpenAIのGPT-6 Astra、AnthropicのClaude Fable 5.1とMythos 5.1、GoogleのGemini 3.8 FlashとGemini 3.8 Flash CyberおよびLyria 3.5、AlibabaのQwen-Drive-1.0とQwen3.8-Flash-Nextです。最前線の3社が5日のあいだに新世代を出した週になりました。MetaとMistralは対象期間に公式発表がなく、DeepSeekの最新更新(DeepSeek-V4-Flash-Vision-Exp、8月21日)とQwen3.8-Max(8月26日)、Grok 4.6(8月14日)は、いずれも対象期間の前の公開です。
確認した資料
OpenAI「GPT-6 Astra: A new generation of intelligence」
OpenAI「Daybreak for Frontline Defenders」
OpenAI「Healthcare organizations can now connect EHR and additional industry data to ChatGPT」
OpenAI「A milestone in expanding access to AI」
OpenAI「ChatGPT — Release Notes」
Anthropic「Introducing Claude Fable 5.1 and Claude Mythos 5.1」
Anthropic「Developing Enterprise Frontier Safeguards with our customers」
Anthropic「Improving our alignment and security efforts」
Anthropic「Claude Release notes」
Google「Introducing Gemini 3.8 Flash and 3.8 Flash Cyber」
Google「Introducing agentic video understanding with Gemini」
Google「Create your best tracks yet with Lyria 3.5 in Gemini.」
Google「Proactive cyber defense for governments and enterprises」
