審議会資料解説

第113回 制度検討作業部会

2026年4月3日の制度検討作業部会の資料を整理しています。

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会議情報

2026.04.03 第113回 制度検討作業部会

出典:資源エネルギー庁「第113回 制度検討作業部会」

資料一覧

資料3 長期脱炭素電源オークションについて 開く

第4回入札に向け、水素・アンモニア・CCSの要件を精緻化 低炭素燃料の確認方法や価格競争ルールを見直しへ

長期脱炭素電源オークションは、脱炭素電源への新規投資を促すために2023年度から始まった制度であり、落札した電源は固定費水準の容量収入を原則20年間得られる。発電所や蓄電池などの建設には大きな初期投資が必要であり、市場収入だけでは投資回収の見通しを立てにくい。そのため、長期的な収入の予見可能性を与えることで、脱炭素電源への投資を後押しする仕組みである。

まず、水素・アンモニアの事前審査については、第4回入札から「低炭素の水素・アンモニア」であることを支援対象の前提にする方向が示されている。水素・アンモニア政策小委員会では、事前審査の基準骨子案として、対象を低炭素水素・アンモニアに絞ること、日本企業による上流出資の見込みがあること、供給事業と利用事業のそれぞれで主要設備のうち最低1つが日本の産業競争力強化に寄与することなどが議論され、概ね合意されたとされている。単に水素やアンモニアを使えばよいのではなく、低炭素性と産業政策上の意義をあわせて確認する方向である。

CI値の扱いも重要な変更点である。CI値とは、Carbon Intensity、つまり水素・アンモニア1kgの製造に伴って排出されるCO2量を示す指標である。第4回入札から低炭素水素・アンモニアのみを支援対象にするのであれば、発電に使われた燃料が本当に低炭素要件を満たしているかを確認する必要がある。現行制度では、水素・アンモニア案件に対して、年間で7割以上は実際に水素・アンモニアを使用するという「年間最低混焼率リクワイアメント」を課し、これを下回る場合には容量確保契約金額を1割または2割減額するペナルティを設けている。

ただし、今後は単に「水素・アンモニアでどれだけ発電したか」だけでは不十分になる。資料では、年間最低混焼率の確認にあたって、「水素・アンモニアで発電した混焼率」に、「当該年度中に取得した水素・アンモニアのうち、CI値の要件を満たした低炭素水素・アンモニアの比率」を掛けた値で確認する案が示されている。たとえば、発電量ベースでは水素・アンモニア混焼率が高くても、そのうち低炭素要件を満たす燃料の割合が低ければ、制度上の評価は下がることになる。なお、この見直しは過去落札案件には遡及適用しないとされている。

脱炭素化ロードマップにおける燃料の扱いも見直される。長期脱炭素電源オークションの対象となる火力、水素・アンモニア、CCS、LNG専焼の案件には、2050年に向けた脱炭素化ロードマップの作成が求められている。資料では、第4回入札から低炭素水素・アンモニアのみを対象とすることを踏まえ、水素・アンモニアによって2050年の脱炭素化を達成しようとする場合には、燃料欄に「グレー」「ブルー」「グリーン」といった色の分類ではなく、「低炭素水素」または「低炭素アンモニア」と記載させる方向が示されている。

過去の落札案件についても、ロードマップの修正を求める方向である。「ブルー・グリーン水素・アンモニア」を前提に落札した案件は、基本的に価格差に着目した支援制度の支援を受けることを想定しており、その支援対象が低炭素水素・アンモニアであることから、「低炭素水素・アンモニア」に修正する。「グレー水素・アンモニア」を前提に落札した案件は、低炭素水素・アンモニアへ転換する道筋を示すことが求められる。LNG専焼の落札案件も、燃料種に水素・アンモニアを記載している場合には、低炭素水素・アンモニアに修正する方向で整理されている。

落札後の市場退出については、水素・アンモニア・CCS特有の事情が考慮されている。資料では、水素・アンモニア・CCS案件について、落札後8か月以内に、水素・アンモニア供給事業やCO2輸送・貯蔵事業のFID(最終投資決定)ができなかった場合に限り、市場退出ペナルティを免除する案が示されている。

ただし、この免除措置を恒久的に広く認めるわけではない。水素・アンモニアについては、将来的に世界で複数の上流案件が立ち上がり、調達先を変更しやすくなる段階に入れば、こうした配慮措置の必要性は低くなる。そのため、黎明期が終わったと認められる回の入札からは、免除措置を削除する方向が示されている。一方で、CCSは排出事業者と貯蔵地点の結びつきが強く、貯蔵事業者の変更が難しいため、免除措置を黎明期に限定しない案となっている。

価格競争の見直しも大きな論点である。水素・アンモニア・CCS案件では、固定費だけでなく、水素・アンモニアの燃料費やCCSの可変費の一部も支援対象となり、応札価格に算入できる。さらに、応札価格に含めた可変費は、物価や為替などの客観的な指標によって、制度適用期間中に自動補正できる仕組みになっている。特に水素・アンモニアの製造・輸送費のうちOPEX部分は、調達国の消費者物価指数、CPIの変化率で制度適用期間にわたり自動補正される。

この仕組みでは、入札時の応札価格だけで価格競争をすると、実際の国民負担とずれる可能性がある。たとえば、ある案件Aは入札時のOPEXが700億円/年で、調達国のインフレ率が5%、別の案件Bは入札時のOPEXが750億円/年で、調達国のインフレ率が3%だとする。入札時だけを見ればAの方が安いが、20年間インフレが続くと、AのOPEX総額は2.5兆円、Bは2.1兆円となり、制度適用期間全体ではBの方が安いということが起こり得る。資料では、このような場合に、単に入札時の応札価格だけで競争させるのではなく、インフレ継続時の影響試算額を価格競争に取り入れる案が示されている。

また、入札時の価格だけで競争すると、事業者が水素・アンモニアの製造・輸送費のうちOPEX比率を意図的に高くし、落札後の自動補正で利益を得るおそれもあるとされている。これを防ぐため、制度適用期間にわたって調達国のCPIで自動補正される費用項目について、過去10年平均のCPIが続いたと仮定して補正値を算出し、その補正後の価格で入札時の価格競争を行う案が示された。将来予測値ではなく過去の実績値を使うのは、恣意性を排除するためである。CCSについては、米国生産者物価指数と貯留対象国の企業物価指数を用いる方向とされている。

制度適用期間については、現在は20年を基本としつつ、20年より長期とすることも可能とされている。しかし、制度適用期間を長くすればするほど、1年当たりの建設費回収額は小さくなる一方、金利などの資本コストが増加し、支援総額に占める資本コストの割合が大きくなる。長期脱炭素電源オークションの制度趣旨は、巨額の初期投資の回収に長期的な収入の予見可能性を与えることであり、支援総額の中で資本コストの割合が過度に高まることは望ましくないと整理されている。

そのため、資料では制度適用期間の上限を40年とする案が示されている。実際に第1回入札と第2回入札では、40年を超える案件は存在しなかったとされている。長期の支援期間を認めれば、単年度の回収負担は小さく見えるが、その分、資本コストを含めた支援総額が膨らむ可能性がある。今回の案は、長期収入の予見可能性を与えるという制度の目的を維持しつつ、支援期間が過度に長期化することを防ぐためのものといえる。

再エネに対する規律としては、風力発電設備の廃棄等費用の積立てが扱われている。長期脱炭素電源オークションで導入される太陽光発電については、FIT/FIP制度と同様に、制度適用期間の最後10年間で廃棄等費用を広域機関に積み立てることが義務づけられている。FIT/FIP制度では、風力発電についても2027年度から廃棄等費用積立制度による積立が始まるため、長期脱炭素電源オークションで導入する風力発電についても、廃棄等費用を広域機関に積み立てることを義務づける案が示されている。

ただし、海洋再エネ整備法に基づく公募案件は例外とする方向である。海洋再エネ整備法に基づく案件では、公募占用指針に基づき、廃棄等費用の確保について具体的な金額や方法まで厳格な確認が行われる。そのため、FIT/FIP制度では廃棄等費用積立制度の対象外とされている。長期脱炭素電源オークションで落札した海洋再エネ整備法に基づく公募案件についても、この扱いと整合させ、廃棄等費用の積立て義務の対象外とする案が示されている。

資料4 非化石価値取引について 開く

2026年度の非化石証書調達目標を設定 2025年度は非FIT証書不足に備えFIT証書の代替調達を認める方向

非化石価値取引とは、非化石電源で発電された電気が持つ「CO2を出さない価値」を証書化し、市場で取引できるようにする仕組みである。非化石価値は、電気そのものとは別に、「非化石電源から作られた電気である」という環境価値を表す。小売電気事業者は、非化石証書を購入することで、高度化法上の非化石電源比率の達成に使うことができる。

高度化法とは、エネルギー供給事業者に対して、非化石エネルギーの利用拡大を求める法律である。電力分野では、小売電気事業者に対し、販売する電気に占める非化石電源の比率を高めることを求める制度として機能している。非化石証書は、この義務を達成するための実務上の手段になっている。2021年度以降、非化石価値取引市場は、需要家も参加できる「再エネ価値取引市場」と、小売電気事業者が高度化法上の目標を達成するための「高度化法義務達成市場」に分かれており、高度化法上の目標達成に使える証書は、基本的に高度化法義務達成市場で扱われる非FIT非化石証書に限定されている。

FITとは、固定価格買取制度のことである。再生可能エネルギーで発電された電気を、国が定めた価格で一定期間買い取る制度であり、太陽光、風力、小水力、バイオマス、地熱などが対象になる。FIT証書は、このFIT電源から生じる非化石価値を証書化したものである。一方、非FIT証書は、FIT制度の対象ではない非化石電源から生じる証書である。非FIT証書には、再エネ指定ありと再エネ指定なしがあり、再エネ指定ありは大型水力や卒FIT電源など、再エネ指定なしは原子力などが主な対象になる。

今回の資料で扱われている中間目標値とは、高度化法の対象となる小売電気事業者が、その年度にどれだけ非FIT証書を外部から調達すべきかを示す目標である。最終的な非化石電源比率の目標だけでは、各年度でどの程度証書を調達すべきかが分かりにくいため、年度ごとに中間的な目標を置いている。第3フェーズでは、N年度の4月頃に、N年度の供給計画とりまとめをもとに供給想定量と需要想定量を最新化し、速報値として公表した需給バランスを用いて確報値を設定することになっている。確報値とは、前年度時点で出した速報値に対して、より新しい供給計画を反映して設定する正式版の目標値である。

資料では、2026年度の供給計画とりまとめをもとに、2026年度の非化石電源、つまりFITと非FITを合わせた供給量を約3,351億kWhと見込んでいる。このうちFIT発電量想定量は約1,446億kWh、非FIT供給想定量は約1,905億kWhである。そこから内部取引量約510億kWh、自発的取引量約126億kWhを差し引き、外部供出可能量は約1,270億kWhとされた。需要想定量は約8,159億kWhで、速報値と同じ需給バランス1.05を使うと、2026年度の外部調達比率は約14.8%、外部調達必要量は約1,209億kWhとなる整理である。

外部供出可能量とは、非FIT証書のうち、市場や相対取引を通じて外部の小売電気事業者が調達できると見込まれる量である。非FIT証書の一部は、旧一般電気事業者などのグループ内で使われる内部取引に回る。また、需要家向けの自発的な取引に使われる分もある。そのため、非FIT供給想定量のすべてが高度化法対象事業者の外部調達に使えるわけではない。資料では、非FIT供給想定量から内部取引量と自発的取引量を除いたものを、外部供出可能量として整理している。

(なお、この14.8%という数値は、後続の資料で修正されている。第1回安定供給WGの資料では、第113回制度検討作業部会で報告された2026年度中間目標値について、第3フェーズにおけるGF設定基準値の漸減措置が、対象事業者の内部取引可能量の計算に反映されていなかったと説明されている。その修正により、内部取引量は約510億kWhから約425億kWhへ減少し、外部供出可能量は約1,270億kWhから約1,354億kWhへ増加した。その結果、外部調達比率は約14.8%から約15.8%へ修正されている。

この修正は、非化石証書制度の中で、旧一般電気事業者などがグループ内で使える証書量をどこまで認めるかに関わる。GF設定基準値は、非FIT証書が特定の事業者グループ内で使われすぎず、外部にも供出されるようにするための基準である。第3フェーズでは、このGF設定基準値の漸減措置があるため、内部取引できる量が減り、その分、外部に供出される証書が増える。113回資料ではこの部分の反映が漏れていたため、最新の整理では2026年度の外部調達比率は15.8%として見る必要がある。)

もう1つの大きな論点は、2025年度のFIT証書による代替調達である。高度化法上の目標達成には、基本的に非FIT証書を使う。しかし、非FIT証書の外部供出量が十分でない場合、小売電気事業者が義務達成に必要な証書を調達できなくなる可能性がある。このため、非FIT証書の需給が不足する場合に限り、FIT証書を代替的に使えるようにするかが議論されている。資料では、2025年度の想定需給バランスが1を下回る可能性があるため、第2回の需給バランスアンケートを実施したとされている。

第2回アンケートは、2025年度の中間目標対象事業者63者のうち、今後の販売電力量が高度化法義務の基準を下回る見通しの3者を除く買手60者と、2024年度に一定量以上の非化石証書を発行した発電事業者などのうち、外部供出が可能と回答した売手20者を対象に行われた。回答は、中間目標対象事業者55者、売手16者から得られている。買手側には、販売電力量見込み、必要な非FIT証書の調達量、市場調達量、相対調達量などを確認し、売手側には、非FIT証書の供出量、市場約定量、相対販売量、第4回オークションへの供出予定量などを確認している。

このアンケート結果を踏まえると、2025年度の想定需給バランスは0.90から最大0.95程度となる見込みである。需給バランスは、外部供出予定量を外部調達予定量で割ったもので、1を下回る場合は、供給される非FIT証書が小売電気事業者の調達予定量に届かない可能性を意味する。第1回アンケート時点では0.81から1.03と幅が大きかったが、第2回アンケートでは、非FIT証書が不足する可能性がより明確になった。

そのため、資料では2025年度についても、FIT証書による代替調達を認める方向が示されている。2024年度にも、需給バランスが確実に1を下回るかを事後的に確認してから判断すると、判断のタイミングが遅くなり、小売電気事業者の義務達成に大きな影響を与えるとして、アンケート結果をもとに代替調達が認められた。2025年度も同様に、アンケート結果をもとに代替調達を認める案となっている。

ただし、代替調達は無条件に認められるわけではない。資料では、第4回非FITオークションにおいて、再エネ指定ありと再エネ指定なしの両方で、必要調達量を1.3円/kWhで入札することを条件に、FIT証書による代替調達を認める案が示されている。つまり、まずは非FIT証書市場で上限価格まで入札し、調達努力を行うことが求められる。そのうえで、それでも非FIT証書が不足する場合に、最終的な救済措置としてFIT証書による代替調達を認めるという設計である。

価格についても、2024年度と同じ考え方が踏襲されている。過去の整理では、FIT証書による代替調達を行う場合、その価格は非FIT証書の上限価格以上とされていた。2025年度も、非FIT市場の上限価格である1.3円/kWh以上を調達単価とする方向である。これは、すでに非FIT証書を上限価格で調達した事業者との公平性や、義務対象事業者への過度な負担を避ける観点からの整理である。

FIT市場への影響については、限定的と整理されている。FIT市場では、現時点で供給が需要を上回っており、FIT証書の供出量が急激に減少したり、需要が大きく増えたりすることは見込まれていない。資料では、2025年度最終オークションにおけるFIT証書の売れ残りは約640億kWhと推計される一方、非FIT証書の需給ひっ迫に伴う代替調達の想定必要量は最大で約130億kWhと試算されている。このため、FIT証書を代替調達に使っても、FIT市場全体への影響は限定的と見られている。

補足:小売電気事業者に非FIT証書の調達を求めているのは、高度化法の義務達成市場が、非FIT非化石電源の価値をきちんと取引させるための市場だから。非FIT証書の由来となる電源は、主に原子力や大型水力など。これらの電源はFIT制度の対象ではないため、FIT賦課金で支えられていない。そのため、非化石価値を証書として取引し、小売電気事業者がそれを購入することで、非FIT非化石電源の価値を市場で評価する仕組みになっている。