会議情報
2026.06.05 第2回 電力安定供給WG
資料別の解説
資料3-1 中長期の厳気象H1需要時の需給見通しについて 開く
資料3-1では、2028年度から2035年度までの電力需給見通しが示されている。
ここで重要になるのが「厳気象H1需要」と「予備率」である。厳気象H1需要とは、厳しい暑さや寒さの日に想定される高い電力需要を指す。H1は、ある期間の中で最大級の需要を表す考え方である。予備率は、需要に対して供給力がどれくらい余っているかを示す数字である。予備率3%以上が、一つの目安として使われている。
今回の試算では、2026年度供給計画のデータをもとに、発電所の休廃止、長期脱炭素電源オークションの落札結果、連系線の活用、発電所の補修、太陽光・風力・水力の供給力などを反映している。供給計画とは、電気事業者が国に提出する、将来の需要や供給力の見通しである。
結果として、ベースケースでは、2029年度の東北・東京エリアでH1予備率が3%を下回る見通しとなった。資料では、2029年度の東北・東京エリアで合計100万kW程度の供給力が不足していると示されている。100万kWは、大型火力発電所1基分に近い規模である。
資料では、供給計画だけでは将来の不確実性を十分に反映しきれない点も説明されている。発電所の休廃止は、事業者の経営判断や地元調整を経て計画に入る。2026年度中に休廃止となる火力電源371万kWのうち、126万kWは2026年度供給計画で初めて計上された。将来の休廃止が、早い段階では見えにくいことを示している。
リスクケースとして、古い火力発電所が追加で休廃止する場合、非効率石炭火力が2029年度末に廃止される場合も試算されている。非効率石炭火力とは、同じ電気を作るのに多くの燃料を使う石炭火力を指す。資料では、火力発電所の廃止までの稼働期間が平均45年程度であることを踏まえ、経年45年を超える火力電源の休廃止もリスクとして扱っている。
資料3-2 今後の供給力確保について 開く
資料3-2では、資料3-1の需給見通しを踏まえ、今後どのように供給力を確保するかが整理されている。
供給力とは、必要なときに電気を供給できる力のことである。発電所の出力、需要を減らす仕組み、蓄電池からの放電などが含まれる。需要を減らす仕組みはDRと呼ばれる。DRはデマンドレスポンスの略で、電気が足りない時間帯に、工場やビルなどが電気の使用を減らす取り組みである。
資料では、2030年度実需給までと2031年度以降を分けて考える方向が示されている。2030年度までは、容量市場のメインオークションがすでに終わっているため、既存の容量市場を前提に、予備電源や短期供給力確保策を中心に対応する方向である。2031年度以降は、容量市場の制度や既存市場の見直しも含めて検討する方向が示されている。
予備電源とは、普段は市場で動いていないが、需給が厳しいときに使えるよう確保しておく発電所である。短期供給力確保策は、実需給が近づいた段階で追加の供給力を確保する仕組みである。電源の新設には時間がかかるため、当面の不足リスクには既存設備の活用も関係する。
資料では、火力発電の休廃止が進む可能性も意識されている。第7次エネルギー基本計画では、火力全体で安定供給に必要な発電容量を維持・確保する方針が掲げられている。火力発電はCO2排出の課題がある一方で、需要が高い時間や再エネの発電量が少ない時間に供給力として使われるため、休廃止の進み方が需給見通しに影響する。
資料4 長期脱炭素電源オークションについて 開く
資料4では、長期脱炭素電源オークションの第4回入札に向けた制度見直しが扱われている。
長期脱炭素電源オークションとは、CO2を出しにくい電源や蓄電池などへの新規投資を促す制度である。事業者が入札し、落札した電源は、原則20年間、固定費に対応する収入を得られる。固定費とは、発電所を建てる費用、維持管理費、人件費など、発電量に関係なく必要になる費用を指す。
過去3回の入札では、脱炭素電源が合計1,330万kW、LNG火力が合計1,010万kW落札した。LNG火力とは、液化天然ガスを燃料にする火力発電である。石炭火力よりCO2排出量が少ないため、電源移行期の供給力として扱われている。
今回の論点の一つは、第4回入札でLNG専焼火力をどれくらい募集するかである。LNG専焼火力は、LNGだけを燃料にして発電する火力発電を指す。資料では、第4回入札で600万kWを募集する案が示されている。第5回以降は、550万~800万kW/年程度の幅で、応札状況や需要見通しを見ながら判断する方向である。
供給力提供開始期限も論点になっている。これは、落札した電源がいつまでに供給力として使える状態になる必要があるかを示す期限である。LNG専焼火力については、期限を11年、環境アセスメントが済んでいる場合や不要な場合は7年に変更する案が示されている。環境アセスメントとは、発電所などを建てる前に、環境への影響を調べる手続きである。
LDESの期限も扱われている。LDESは、長時間エネルギー貯蔵のことで、長い時間にわたって電気をためて使う設備を指す。資料では、LDESの供給力提供開始期限を7年に変更し、資本コストを5%にする案が示されている。資本コストとは、発電所や蓄電池に投資するお金を集めるためのコストで、金利や投資家が求める利益を反映する考え方である。
金利上昇への対応も論点になっている。現在の制度では、応札価格に入れられる資本コストの上限は、建設期間に応じて4~6%とされている。資料では、足元の金利上昇を踏まえ、落札価格の自動補正における金利補正の式を見直す内容が示されている。
相対契約の規律も扱われている。相対契約とは、発電事業者と小売電気事業者などが、取引所を通さずに直接結ぶ契約である。長期脱炭素電源オークションでは、落札電源が市場などから得た収入の約9割を還付する仕組みがある。そのため、落札電源の収入を意図的に小さく見せる契約になっていないかを確認する必要がある。資料では、無差別規律や市場価格規律に基づき、相対契約を確認する考え方が示されている。
資料5 容量市場について 開く
資料5では、容量市場の追加オークションで予定していた供給力の扱いが議論されている。
容量市場とは、将来の供給力をあらかじめ確保するための市場である。発電所やDRなどは、将来の一定期間に供給力として使える状態を維持する対価として、容量収入を受け取る。小売電気事業者などが支払う容量拠出金が原資になる。
容量市場では、実需給の4年前にメインオークションを行う。これまでは、実需給が近づいた段階で追加オークションを行う前提で、H3需要の2%分をメインオークションでは調達しない扱いにしていた。H3需要とは、厳しい気象条件を想定したH1需要よりは標準的な高需要を表す需要想定である。
今回の資料では、このH3需要2%分をメインオークションで全量調達する方向が示されている。背景には、メインオークションで落札しなかった電源が、追加オークションを待たずに休廃止するリスクがある。追加オークションの時点で参加できる電源が足りなくなる兆候も示されている。
発動指令電源の扱いも確認されている。発動指令電源とは、需給が厳しいときに、指令を受けて需要を減らしたり、発電したりする供給力である。資料では、メインオークションでは発動指令電源の応札容量が増えている一方、追加オークションでは応札容量が上限を大きく下回っていることが示されている。
今回の見直しは、追加オークションに頼る部分を小さくし、早い段階で必要な供給力を確保する方向の変更である。供給力不足のリスクが高まっている中で、電源の退出を防ぎ、将来の供給力をより確実に押さえる狙いがある。
資料6 需給調整市場について 開く
資料6では、需給調整市場の取引状況が確認されている。
需給調整市場とは、電気の需要と供給のずれを調整する力を取引する市場である。電気は、需要と供給がずれると周波数が乱れる。そこで、短い時間で出力を増減できる発電所、蓄電池、DRなどを使ってバランスを取る。こうした調整に使う力を調整力という。
資料では、前日取引化の影響が確認されている。前日取引化とは、調整力の取引を実需給の前日に行う仕組みである。今回の資料では、前日取引化前、前日取引化直後の期間①、その後の期間②を比べて、募集量と応札量、応札価格、約定価格を確認している。
複合商品では、期間②も応札量は前日取引化前より増えている。ただし、時間帯によっては応札量が募集量に届かないコマが残っており、不足率は増加した。一次でも、応札量は増えたものの、応札未達の状況が大きく改善したとは言いにくいと整理されている。一次とは、周波数の変化にすばやく反応する調整力である。
資料では、火力発電の高価格応札が増えている点も論点になっている。応札価格には、機会費用、起動費、未回収固定費などが関係する。機会費用とは、ある市場に応札することで、別の市場で得られたかもしれない利益を失うことによる費用である。起動費は、発電所を起動するためにかかる費用である。未回収固定費は、発電所の維持に必要な固定費のうち、ほかの収入で回収できていない部分を指す。
一次の応札価格では、14円以上の応札の割合が、前日取引化前12.1%、期間①11.6%、期間②9.8%と示されている。上限価格付近の応札がどの程度あるかは、市場の競争状況を見るうえで重要な材料になる。
資料6全体では、前日取引化で応札量が増えた面はあるが、時間帯による不足や高価格応札の理由をさらに確認する必要があると整理されている。蓄電池やDRなどの参加が増えれば、調整力の供給源が広がる。今後は、応札行動、募集量、上限価格、燃料価格や国際情勢の影響を分けて確認することになる。