会議情報
2026.05.13 第1回 安定供給WG
資料一覧
資料5 今後の供給力確保について 開く
課題は「電源が足りなくなる構造からの脱却」
出発点にあるのは、2026年度供給計画で、複数エリアにおいて供給信頼度の基準を超過する厳しい見通しが示されたことだ。今回の資料では、将来の供給力不足を今の制度でどこまで拾えるのかが問題にされている。
問題意識として挙げられているのは、供給計画だけでは将来のリスクを十分に見通せないことである。供給計画には、基本的に事業者の中でかなり確度が高まった計画が反映される。そのため、まだ正式に決まっていない火力発電所の休廃止や、データセンター、EV、電炉化、水素製造、DACなどによる需要増加は、十分に織り込まれない可能性がある。どちらも脱炭素に関係するが、電力需要を増やす要因にもなる。
特に大きいのは火力発電の休廃止である。2026年度供給計画では、火力発電所の休廃止が新増設を上回る規模で進み、2030年までに2025年度と比べて1,300万kWの休廃止が計画されている。さらに、現時点では休廃止計画に入っていないものの、2035年度時点で営業運転開始から50年を超える火力発電も約1,300万kW存在する。つまり、すでに見えている休廃止も多いが、今後さらに上振れする可能性もある。
一方で、新増設電源も存在する。資料では、2030年度以降、長期脱炭素電源オークションによるLNG火力のリプレースを中心に、2035年度には2025年度比で1,000万kW超が見込まれるとされている。ただし、その規模は今後のオークション募集量などに左右される。新設・リプレースが予定どおり進めばよいが、それだけで将来の需要増まで吸収できるとは限らない。
実際、2040年に電力需要が1兆1,000億kWhとなるケースでは、経年火力3,900万kWをすべてリプレースしても、なお供給力が1,300万kW不足するという試算が示されている。つまり、このままでは将来の電力の供給力不足が生じる可能性がある。
そのため、議論の対象は容量市場だけではない。日本ではこれまで、容量市場、長期脱炭素電源オークション、予備電源制度を組み合わせて供給力を確保してきた。容量市場は電源を維持するための固定費を支える仕組み、長期脱炭素電源オークションは新しい脱炭素電源への投資を後押しする仕組み、予備電源制度は非常時に備えて休止電源を維持する仕組みである。2025年度メインオークションでは1億6,608万kW、長期脱炭素電源オークションでは過去3回で約2,300万kW、予備電源制度では過去2回で約136万kWが落札している。
しかし、資料はこれらの制度にも限界があると整理している。容量市場では、上限価格があるため、約定後も供給信頼度を満たさないエリアが出る場合がある。また、容量市場で確保した電源が実需給までに退出し、供給力が剥落するケースもある。長期脱炭素電源オークションでは、制度上の投資インセンティブと事業者の投資判断が合わず、落札量が募集量に達しないケースがある。予備電源制度も、容量市場との関係で応札する経済的メリットが弱いとされている。
2030年度実需給までについては、容量市場のメインオークションがすでに終わっているため、既存の容量市場の枠組みを前提に、予備電源や短期供給力確保策を使って対応する方向が示されている。一方、2031年度以降については、容量市場の指標価格の水準や制度の在り方、長期脱炭素電源オークションの見直し、新設投資の促進、休廃止が検討される電源の活用などを含めて、制度全体を見直す方向が示されている。今後の議論では、長期脱炭素電源オークション、予備電源、短期供給力対策、既存火力の扱いまで含めた制度設計が焦点になる。
資料6 予備電源について 開く
予備電源制度、第3回募集へ 焦点は「休止電源をどう残すか」
予備電源制度とは、普段は動いていない休止電源を維持しておき、大規模災害や想定外の需要増加などで供給力が不足する場合に、追加供給力として立ち上げるための仕組みである。容量市場で通常の供給力を確保し、それでも足りない事態に備える「保険」に近い位置づけだ。
第3回募集では制度の大枠を大きく変えない一方で、第4回募集以降に向けて予備電源制度の位置づけを見直す流れが示された。供給力確保の在り方は、容量市場の見直しと一体で議論されており、予備電源制度もその議論と整合的に検討する必要があるとされている。
予備電源制度には難しいバランスがある。休止電源を維持するためには、事業者が応札しやすい条件にする必要がある。一方で、制度を手厚くしすぎると、本来は容量市場で供給力として残るべき電源が、容量市場から退出して予備電源側に回る誘因になりかねない。資料でも、予備電源制度が容量市場からの退出を促進するインセンティブとして機能することは避ける必要があると整理されている。
このため、第3回募集では、対象電源の要件は第2回募集と同じ内容を維持する方向が示された。単年度だけ不落札となった電源や、経済的ペナルティを支払って容量市場から退出した電源を対象に加えるかは、第4回募集に向けて容量市場の要件見直しと一体で検討する扱いとなった。
目安価格については、第3回募集案として14,860円/kWが示された。初回募集では応札がなかったため、第2回募集では目安価格を初回の6,429円/kWから14,399円/kWへ引き上げた結果、2社2電源の応札があった。第3回募集では、第2回と同じように容量市場メインオークション直近3回分の上限価格の平均を参照する案となっている。
ただし、価格を上げればよいという話ではない。予備電源は、通常時の供給力を確保する容量市場を壊さない範囲で設計しなければならない。資料では、容量市場の指標価格であるNetCONEの見直しも進んでいるため、予備電源の目安価格への反映は第4回募集以降に改めて検討するとしている。ここにも、予備電源制度を単独でいじるのではなく、容量市場全体の見直しと合わせて考える姿勢が出ている。
費用面では、2つの見直しが示された。1つは、経年改修費を応札価格に織り込めるようにすることだ。休止電源であっても、いざ必要になった時に立ち上げるには、事前の修繕や改修が必要になる場合がある。そのため、予備電源としての最低限のリクワイアメントを満たすために必要な経年改修費については、応札価格に含められるようになった。ただし、大幅な機能向上に資する設備投資まで認めるものではなく、必要性や妥当性は技術評価で確認する扱いである。
もう1つは、休止措置期間中の発電側課金を応札価格に織り込めるようにすることだ。第2回募集までは、休止状態を維持している期間の発電側課金は織り込み可能だったが、休止措置中に発生する費用は認められていなかった。第3回からは、休止措置期間中の発電側課金も、予備電源の休止維持に必要な費用として扱う方向が示されている。
短期立ち上げの扱いも見直しの対象になっている。これまでは、短期立ち上げの予備電源について、落札から実需給まで3か月程度で立ち上げを求める公募、たとえばkW公募等への応札が想定されていた。しかし、一般送配電事業者によるkW公募は暫定的な措置とされており、今後は新たな短期供給力確保策への応札を想定する方向が示された。
第3回募集のスケジュールは、2026年度に2027・2028年度向けの予備電源を募集する形である。資料では、2026年度夏頃に募集手続を開始し、評価・監視を経て、2026年度冬頃に落札決定とする案が示されている。
資料7 長期脱炭素電源オークション関連資料 資料7-1 容量市場 長期脱炭素電源オークション約定結果(応札年度:2025年度)の公表について 資料7-2 長期脱炭素電源オークションに係る応札価格の監視結果について 資料7-3 長期脱炭素電源オークションについて 開く
第3回長期脱炭素電源オークション、脱炭素電源は募集量未達 LNG火力は募集量を上回る
長期脱炭素電源オークションは、脱炭素電源への新規投資を促すため、落札電源に固定費水準の容量収入を原則20年間与える制度である。電源投資は建設費が大きく、投資回収にも長い時間がかかるため、将来の収入をある程度見通せるようにすることが制度の狙いである。
今回の第3回入札では、脱炭素電源の募集量500万kWに対して、落札量は426.1万kWにとどまった。一方、LNG専焼火力は募集量約293万kWに対して、303.8万kWが落札された。全体では応札量1,085.6万kW、落札量729.9万kW、非落札量355.7万kWとなった。
長期脱炭素電源オークションは、安定供給と脱炭素化を同時に進めるための制度だが、今回の結果を見ると、短期的な供給力確保ではLNG火力の役割がまだ大きい一方、脱炭素電源の投資は制度が想定する量に届いていない。
第1回入札では脱炭素電源の募集量400万kWに対して401万kWが落札され、LNG火力は募集量600万kWに対して575.6万kWが落札された。第2回入札では脱炭素電源の募集量500万kWに対して503万kWが落札され、LNG火力は募集量224万kWに対して131.5万kWが落札された。これに対し、第3回では脱炭素電源が500万kWに届かず、426.1万kWとなった。過去2回と比べても、脱炭素電源側の未達が目立つ結果である。
内訳を見ると、リチウムイオン蓄電池・揚水、新設揚水、リチウムイオン以外の蓄電池、原子力、既設原子力の安全対策投資、水素・アンモニア関連、バイオマスなどが落札されている。発電方式別では、揚水45.3万kW、蓄電池125.1万kW、アンモニア混焼への改修26.4万kW、水素専焼25.3万kW、バイオマス専焼10.1万kW、原子力の新設・リプレース138.1万kW、既設原子力の安全対策投資55.8万kW、LNG専焼火力303.8万kWが落札された。落札容量のうち、新設・リプレース等は約97%を占めた。
第3回入札の電源種別内訳
電源種
応札
落札
不落札
脱炭素火力
51.7万kW
51.7万kW
-
リチウムイオン蓄電池
152.5万kW
55.1万kW
97.4万kW
揚水リプレース等
63.2万kW
26.8万kW
36.4万kW
リチウムイオン以外の蓄電池
120.6万kW
70.0万kW
50.6万kW
揚水新設
18.6万kW
18.6万kW
-
既設原発
55.8万kW
55.8万kW
-
原発
138.1万kW
138.1万kW
-
バイオマス
10.1万kW
10.1万kW
-
脱炭素電源の合計
610.6万kW
426.1万kW
184.5万kW
LNG
475.0万kW
303.8万kW
171.2万kW
合計
1,085.6万kW
729.9万kW
355.7万kW
蓄電池・揚水への応札は多かった。脱炭素電源の応札量は募集量500万kWの約1.2倍にあたる約610万kWで、このうち蓄電池・揚水の応札容量は約355万kWと、募集上限80万kWの4倍超に達した。それでも、脱炭素電源全体では426.1万kWにとどまり、募集量に対して73.9万kWの未達となった。つまり、応札が多い電源種はあるが、制度全体として必要な脱炭素電源の量を十分に積み上げられたわけではない。
金額面では、脱炭素電源の約定総額は4,748億円/年、LNG火力は1,444億円/年となった。合計では、約定総量729.9万kWに対して、約定総額6,192億円/年である。また、他市場収益の還付を一定の前提で試算した後の約定総額は、脱炭素電源が3,420億円/年、LNG火力が810億円/年とされた。
応札価格については、電力・ガス取引監視等委員会が監視を行った。長期脱炭素電源オークションは、各応札電源の応札価格が約定価格となるマルチプライス方式であるため、事業者が過大な費用を応札価格に織り込むと、国民負担に直結しやすい。そのため、落札候補となる応札案件全件について、応札価格の算定方法や根拠資料の確認が行われた。
監視対象となったのは23者34電源である。その結果、18者26電源について、応札価格に含めることが認められない項目が確認された。通知を受けた事業者のうち17者25電源は、指摘を反映して応札価格を再提出し、適切に算定されていることが確認された。一方、1者1電源は、一部費用を応札価格に含められないことで投資回収が難しいと判断し、応札を取り下げた。
監視による金額影響は、応札価格からの減額が約4億円/年、応札取り下げに伴う減額が約80億円/年だった。監視の結果、建設費、系統接続費、固定資産税、人件費、発電側課金、事業税、その他コスト、可変費などで、過大算定や消費税分の織り込みなどが認められない項目として整理された。これは、制度が投資を支える一方で、費用の妥当性をチェックする仕組みが実際に機能していることを示している。
一方で、第4回入札に向けた制度見直しも始まっている。今回の資料で示された主な論点は、CCS付き火力のCO2回収率の定義である。現在の制度では、CO2回収率を「定格出力時のCO2発生量に対するCO2回収量の割合」として扱っている。しかし、CCS付き火力では、発電設備とCO2分離回収設備が別々に存在するため、発電所全体の出力とCO2回収設備の稼働が必ずしも連動しない。
そのため、資料では、CO2回収率を「定格出力時」ではなく、「想定年間CO2発生量に対する想定年間CO2回収量の割合」に見直す案が示された。現行の考え方では、発電所の出力が下がると、可変費支援の対象となるkWhも出力に連動して低下する。その結果、CO2分離回収設備の能力を十分に使えない可能性がある。見直し案は、CCS設備をより実態に近い形で評価し、設備能力を最大限活用しやすくする狙いがある。
第4回入札に向けては、上限価格、募集量、個別電源ごとの扱いなどが引き続き議論される予定である。
資料8 需給調整市場について 開く
需給調整市場、前日取引化後も応札未達は解消せず 上限価格の再引下げが論点に
需給調整市場は、一般送配電事業者が周波数を維持し、需要と供給を最後に一致させるための調整力を調達する市場である。2021年4月に取引が始まり、現在は応動時間や継続時間が異なる複数の商品区分で取引されている。複数の商品要件を満たす電源は、一次から三次①までを同時に応札する「複合商品」として参加できる。
今回の資料の焦点は、2026年3月13日の取引、つまり3月14日受渡分から始まった「前日取引化」が、需給調整市場の応札未達や価格高騰をどこまで改善したかである。以前は、三次①などで実需給の前の週に取引することによる不確実性があり、事業者が需給変動リスクを織り込むことで、応札未達や調達コストの高騰が課題になっていた。そのため、取引時期を前日に近づけ、取引単位も3時間から30分に見直した。
過去の制度検討作業部会では、前日取引化にあわせて、一次・二次①・複合商品の募集量と上限価格を見直す方針が整理されていた。具体的には、これまで余裕を持って多めに募集していた調整力を、前日取引化にあわせて、必要性の高い量に絞り(募集量を3σ相当から1σ相当に削減し)、上限価格を19.51円/ΔkW・30分から15円/ΔkW・30分へ引き下げた。そのうえで、競争状況が改善しない場合には、10円、7.21円/ΔkW・30分などへ段階的に引き下げる方向も示されていた。
資料では、前日取引化前の2026年2月14日から3月13日実需給分までの28日間と、前日取引化後の2026年3月14日から4月10日実需給分までの28日間が比較され、募集量と応札量の関係、応札価格の分布、余力の価格水準の3点が確認されている。
前日取引化前後の主な変化
商品・項目
前日取引化前
前日取引化後
評価
複合商品の平均応札量
1.02億ΔkW・h/日
1.25億ΔkW・h/日
応札量は増加
複合商品の不足率
14.6%
17.8%
不足率は上昇
一次の平均応札量
0.23億ΔkW・h/日
0.28億ΔkW・h/日
応札量は増加
一次の不足率
46.3%
36.3%
改善したが高水準
三次②の平均応札量
0.91億ΔkW・h/日
0.44億ΔkW・h/日
応札量は減少
三次②の平均約定単価
0.98円/ΔkW・30分
2.90円/ΔkW・30分
価格は上昇
三次②の不足率
2.5%
6.7%
不足率は上昇
複合商品では、前日取引化後に応札量が増え、日単位では募集量を上回ることが多くなった。しかし、応札時間単位で見ると不足が発生しており、不足率は14.6%から17.8%へ上昇した。つまり、見かけ上は応札が増えていても、必要な時間帯に必要な量が十分集まっているわけではない。
一次については、応札量が増え、不足率も46.3%から36.3%へ低下した。ただし、それでも不足率は高く、資料でも「応札未達の状況が大きく改善したとは言い難い」と整理されている。一次は周波数変動に素早く反応する重要な調整力であり、ここで応札未達が続いている点は大きい。
電源種別では、複合商品において火力の応札量が80.5百万ΔkW・h/日から104.6百万ΔkW・h/日へ増加した。一方、水力は16.0から13.6へ減少した。蓄電池は6.2から7.4へ増えたが、応札単価はなお高い水準にある。VPP/DRは応札量に大きな変化はなく、前日取引化後の応札単価は14.47円/ΔkW・30分と、上限価格に近い水準になった。
価格面でも、競争が十分に働いているとは言いにくい。複合商品では、7円/ΔkW・30分までの応札の累積割合が92.7%から88.4%へ低下し、10円までの応札の累積割合も95.7%から91.8%へ低下した。一方で、14円以上の応札量は0.91億ΔkW・hから1.55億ΔkW・hへ増加し、応札全体に占める割合も3.4%から4.8%へ上昇した。
一次でも同じような傾向が見える。7円までの応札の累積割合は84.8%から76.7%へ低下し、10円までの応札の累積割合も87.9%から82.0%へ低下した。14円以上の応札量は0.79億ΔkW・hから0.91億ΔkW・hへ増加した。応札全体に占める割合は12.1%から11.6%へわずかに低下しているが、上限価格付近の応札が引き続き約定できる状況にある。
この価格上昇には、スポット市場との関係もある。前日取引化後は、需給調整市場への応札前にスポット市場の価格が分かる。また、一部の事業者は余剰電力をまずスポット市場に全量応札することが求められるため、スポット市場で落札されなかった比較的高単価の電源が、その後に需給調整市場へ応札されることがある。資料では、比較対象期間においてスポット市場価格も全体的に上昇していたことが確認されている。
もう1つ重要なのが、余力との比較である。余力とは、発電計画やすでに確保済みの調整力を除いたうえで、一般送配電事業者の指令に応じて追加的に使える電源の出力である。資料では、2026年1月時点の余力の平均単価は0.93円/kW・30分であり、同じ2026年1月の複合商品の平均約定単価3.15円/ΔkW・30分より低廉だったとされている。前日取引化後の複合商品の平均約定単価は2.86円/ΔkW・30分だが、前日取引化後の余力単価はまだ集計中であり、今後比較するとされている。
今回の資料の結論は、かなり慎重である。前日取引化と募集量削減によって、応札量の増加や一次の不足率改善は見られた。しかし、一次の応札未達は解消されておらず、複合商品でも一部エリアでは応札未達が発生している。さらに、上限価格付近の応札が一部不落になりながらも引き続き約定できる状況であり、資料は「十分な競争が働いているとは評価しがたい」と整理している。
ただし、今回のデータは前日取引開始後1か月分に限られる。年度切替え時には事業者間の契約関係も変わる。また、今後は系統用蓄電池などの新規リソースの参入により、需給調整市場への応札量が増える可能性もある。そのため、直ちに追加措置を決めるのではなく、引き続き検証する方針が示されている。
それでも、競争が十分に働かない状況が続くなら、次の焦点は上限価格の段階的な引下げになる。第110回制度検討作業部会で整理されたとおり、一次・二次①・複合商品の上限価格を、現在の15円/ΔkW・30分から10円、さらに7.21円/ΔkW・30分などへ引き下げるかが検討対象になる。
調整力の調達コストを抑えるために上限価格を下げたい一方で、上限価格を下げすぎると蓄電池やDRなど新規リソースの参入意欲を削ぐ可能性もある。需給調整市場は、安定供給のための技術的な市場であると同時に、新しい調整力ビジネスを育てる市場でもある。その両立が、今後の制度見直しの中心になる。
資料9 非化石価値取引について 開く
2026年度の非化石証書調達目標、14.8%から15.8%へ修正 GF基準値の反映漏れが原因
非化石価値取引に関しては、2026年度の非化石価値取引に関する中間目標値の修正が示された。対象となったのは、高度化法に基づいて小売電気事業者に求められる非化石電源比率の目標値である。小売電気事業者は、この義務を履行するため、非化石電源の相対取引や高度化法義務達成市場を通じて、非FIT非化石証書を調達している。
今回修正されたのは、2026年度の中間目標値を算出する際に使う「外部調達比率」である。第113回制度検討作業部会では、2026年度の外部調達比率を約14.8%とする案が示されていた。しかし、その後の確認で、第3フェーズにおけるGF設定基準値の漸減措置が、対象事業者の内部取引可能量の計算に反映されていなかったことが判明した。
GF設定基準値とは、主に旧一般電気事業者が自社グループ内で使える非FIT証書の量を制限するための基準である。制度設計当初から非化石電源比率が高かった事業者が、非FIT証書を内部で多く使いすぎると、他の小売電気事業者が市場や相対取引で証書を調達しにくくなる。そのため、内部取引に一定の上限を設け、外部にも証書が供出されるようにしている。
このGF設定基準値は、第1フェーズでは22.8%、第2フェーズでは16.8%、第3フェーズでは14.8%へと下がってきた。基準値が下がると、内部取引できる量が減り、その分、市場や相対取引など外部に出てくる証書の量が増える。今回の修正は、この「GF設定基準値が下がったことによる内部取引量の減少」を計算に入れ直したものだ。
2026年度中間目標値の修正内容
項目
修正前
修正後
外部供出可能量
約1,270億kWh
約1,354億kWh
外部調達比率
約14.8%
約15.8%
外部調達必要量
約1,209億kWh
約1,290億kWh
需給バランス
1.05
1.05
需要想定量
約8,159億kWh
約8,159億kWh
修正後の計算では、2026年度の非化石電源からの供給量は約3,351億kWh、このうちFIT発電量想定量が約1,446億kWh、非FIT供給想定量が約1,905億kWhとされている。そこから内部取引量約425億kWh、自発的取引量約126億kWhを差し引くことで、外部供出可能量は約1,354億kWhとなる。これを前提に、需要想定量約8,159億kWh、需給バランス1.05を用いて、外部調達比率を約15.8%に修正する案が示された。
非FIT証書の外部供出量は、小売電気事業者が市場や相対取引でどれだけ証書を調達できるかに関わる。内部取引量を多く見積もれば、外に出る証書は少なくなる。今回の修正では、GF基準値の漸減を反映したことで、外部に出る証書量が増え、その結果として外部調達比率も14.8%から15.8%へ上がった。
ただし、今回の修正によって制度の方向性が大きく変わるわけではない。資料では、修正後の外部調達比率15.8%は、2025年度の外部調達比率約15.0%と比較して同程度の水準であり、GF基準値の漸減を考慮した結果として対前年で微増したものだと整理している。そのため、目標値の妥当性を大きく損なうものではないとされている。
修正の理由について資料では、速報値を算定した際に、実際の計算上でGF設定基準値の考慮が漏れていたこと、また確報値の計算時に速報値から前提が変化した数値を変更して計算した一方で、前提となる数値全ての確認が実施されていなかったことが原因だと説明されている。今後は、中間目標値の算定に用いる主要な諸元を十分に精査し、計算根拠を確認する方針だ。
今回の論点は、非化石証書の制度がかなり複雑になっていることも示している。小売電気事業者の目標値は、非化石電源の供給量、FIT発電量、非FIT供給量、内部取引量、自発的取引量、外部供出可能量、需要想定量、需給バランスといった複数の前提を組み合わせて算出される。そのうち1つの前提が抜けるだけで、外部調達比率が1%ポイント変わる。非化石証書は、単なる環境価値の取引ではなく、小売電気事業者の義務履行、証書価格、需要家向けメニュー、旧一電と新電力の調達環境にもつながる制度である。