審議会資料解説

第24回 同時市場検討会資料解説

同時市場の検討が、制度の骨格を決める段階から、システムで実現できるかを検証し、実際の業務を設計する第1フェーズへ進みました。

更新日:2026.06.30

← 審議会資料解説の一覧へ戻る

会議情報

2026.06.29 第24回 同時市場の在り方等に関する検討会

出典:資源エネルギー庁「第24回 同時市場の在り方等に関する検討会」

資料別の解説

資料3 「同時市場の検討に係る業務設計・技術研究会」の設置について 開く

同時市場は、電気そのものの取引と、需給のずれに対応する調整力の確保を一体で計算する構想である。2025年10月の第二次中間取りまとめまでに、市場の基本構造や価格算定、精算の方向性が整理された。

これまで電源起動・出力配分ロジックの技術検証会が、どの発電所を起動し、各発電所にどれだけ発電させるかを計算するSCUC・SCEDの実現性を調べてきた。技術検証会は2026年3月までに計16回開催され、残った論点は新しい研究会へ引き継がれる。

新設される「同時市場の検討に係る業務設計・技術研究会」は、海外事例の調査、電力関係事業者へのヒアリング、システムの技術研究を一つの場で進める。制度案を実際の入札、約定、計画作成、精算などの業務へ落とし込み、システムとして動かせるかを確認する役割を担う。

研究会には有識者、電力関係事業者、システムベンダーなどが参加する。事業者の運用情報やシステムの詳細を扱うため会合は非公開とし、資源エネルギー庁と電力広域的運営推進機関が共同で事務局を務める。検討の進捗は、同時市場検討会へ報告される。

第24回では、実装に向けた検証体制が正式に動き始めた。今後は研究会で得られた結果を基に、実現が難しい機能の見直しや業務ルールの具体化が進む。

資料本体:資料3(PDF)

資料4 第1フェーズにおける技術研究の進め方 開く

資料4は、同時市場の約定処理システムを日本で実現できるか、シミュレーションで確かめる計画を示している。北米ではSCUC・SCEDを使う市場が運営されているが、日本は系統規模、送電線の構成、発電所の立地、燃料調達の条件が異なる。海外の仕組みをそのまま導入できるとは限らないため、日本固有の条件を反映した検証が必要になる。

ERCOTをモデルケースに選定

北米のPJM、NYISO、CAISO、ERCOTを比較し、技術研究のモデルケースには米国テキサス州のERCOTが選ばれた。日本との系統規模の類似性に加え、システム導入が比較的新しく、中心となるシステムベンダーを確認しやすい点が理由である。海外調査ではERCOTを中心に扱い、必要に応じてほかの市場も参照する。

優先して検証する4つのテーマ

技術研究は、約定処理に強く影響する機能から始める。現時点のテーマ案は次の4項目である。

技術研究のテーマ案

テーマ主に確認する内容
前日SCUC24時間分の起動・出力配分を計算し、処理時間、解が得られるか、結果が妥当かを確認する
週間運用7日分の計算と、週間計画から前日計画へ電源状態を引き継ぐ処理を確認する
蓄電リソースの最適運用揚水発電や蓄電池の充電残量を示すSOC制約を含め、計算負荷と運用結果を確認する
送電ロス送電時に失われる電力を約定計算へ反映する方法と、計算の収束性への影響を確認する

前日SCUCは2026年10月、週間運用と蓄電リソースは11月を目安に検証する案が示された。研究テーマは、ERCOTの運用方法の追加調査やシステムベンダーとの協議を踏まえて修正される可能性がある。

通常時から厳しい需給状況まで再現

シミュレーションでは、標準的な需給、再エネが余る状況、需給ひっ迫、系統混雑、複数の問題が重なる状況の5種類を想定する。処理時間、計算が適切な解に到達するか、需給バランスや送電制約を守れているかを確認する。

想定する検証シナリオ

シナリオ想定する状況
基準ケース需要量と再エネ出力が平年並み
再エネ余剰ケース太陽光・風力の出力が高く、出力抑制や下げ余力の確保が必要
需給ひっ迫ケース需要増加、再エネ出力低下、発電機停止などで供給余力が低下
系統混雑ケース連系線や主要送電線の制約で地域間の混雑が発生
複合ケース再エネ余剰または需給ひっ迫と、系統混雑が同時に発生

計算が所定時間内に終わらない場合は、送電網モデルを簡略化する、制約条件を見直す、入札情報をまとめるといった対応を検討する。計算を軽くした際に、安定供給や市場結果の妥当性が損なわれないかも確認する必要がある。

2026年9月から本格的な技術検証を始め、2027年2月頃に研究結果と今後の対応方針をまとめる予定である。成果は研究レポートと業務フローに整理し、次年度以降のシステム要求定義や詳細設計へつなげる。

資料本体:資料4(PDF)

資料5 第1フェーズにおける詳細業務設計の進め方 開く

資料5は、第23回で列挙された検討事項を、優先順位や論点同士の前後関係に沿って組み直している。第1フェーズでは11の論点セットを設け、事業者ヒアリング、制度検討、海外調査、技術検証を組み合わせて業務ルールを具体化する。

第1フェーズの論点セット

区分検討する内容
A前日・時間前・直前市場の開催時刻、回数、取引単位、約定結果の通知
B発電所が登録する運転パラメータと、火力などの運転制約
C売買入札、自己計画電源、市場間の入札変更、電源差替
D発電・販売計画の作成、約定結果の自動反映、起動通知
E需給・系統制約、自己計画電源への制約、TSOによる例外的な介入
F市場間の差分精算、調整力の約定と価格、性能に応じた評価
G入札・市場価格の規律、市場支配力の判定、取引監視
H市場価格で回収できない費用を補うアップリフトの対象と負担配分
IDERの入札・価格算定、需要抑制の基準値、複数設備のまとめ方
J揚水発電・蓄電池の充放電、入札、運用、随意契約
K次期中給システムや広域機関システムとの役割分担とデータ連携

市場を開く時刻と回数

前日市場は現在の午前10時締め切り以外の選択肢も検討する。時間前市場は前日夕方に1回、当日に2回の合計3回程度を基本案とし、現在のザラバ市場を併存させるかも確認する。直前市場は1日24回または48回とする案があり、直後の30分枠だけを扱うか、その先の時間帯まで取引できるようにするかが論点になる。

電源の制約と計画への反映

発電所ごとの出力上限・下限、起動時間、出力変化速度など、約定計算に必要な情報をどこまで登録させるかを決める。自己計画電源へ制約をかける可能性が高い時期や地域の見通しを公表する仕組み、送電線混雑時の処理、一般送配電事業者が例外的に市場結果へ介入する条件も検討する。

約定結果を発電・販売計画へ自動反映する方法は、事業者の作業を減らす効果が期待される。一方、システム障害時の対応や計画提出の責任分担を明確にする必要があるため、技術面と制度面の両方から確認する。

精算、価格規律、費用回収

前日市場から直前市場までの取引差分をどのように通算して精算するか、調整力の性能を価格へどう反映するかをケーススタディで確認する。価格の上限・下限、市場支配力の判定方法、監視主体の役割は、電力・ガス取引監視等委員会とも連携して検討する。

アップリフトは、安定供給のために起動した発電所が市場価格だけでは回収できない費用を補う仕組みである。補償する費用項目と、費用を誰がどの割合で負担するかを整理する。資料では、1日を通算して未回収額を計算する方向が示されている。

再エネ、蓄電池、関連システム

DERは需要家側に設置された太陽光、蓄電池、需要抑制などの小規模な設備を指す。最低入札量、複数設備をまとめた入札、需要抑制量を測る基準値、市場外で動く設備の把握方法を検討する。揚水発電と蓄電池は、充電残量や池の運用制約を約定計算へ組み込み、事業者の運用と両立できるかを技術検証する。

同時市場システムは、一般送配電事業者が需給運用に使う次期中給システムや、広域機関のシステムとデータをやり取りする。第1フェーズでは、各システムの役割、必要な情報、更新頻度を整理する。市場を運営する組織には、安定運営、中立性、透明性、高度なシステム開発能力、必要な人材と経営基盤が求められる。

論点セットの検討は2026年7月以降、技術研究と並行して進む。一部の論点は進捗に応じて2027年度以降へ持ち越す可能性がある。第24回では、実装に必要な作業を順序立てた工程表が示された。制度の最終決定は今後の検討を経て行われる。

資料本体:資料5(PDF)