会議情報
2026.03.26 第22回 同時市場検討会
資料別の解説
資料3 市場価格算定方法(検証B)に関する進捗報告について 開く
資料3では、同時市場で電源をどう約定させ、価格をどう決めるかが検証されている。
今回の資料で重要なのは、「小売想定需要」と「TSO想定需要」の扱いである。小売電気事業者は、家庭や企業などに電気を売る会社であり、自社の顧客がどれくらい電気を使うかを見込む。TSO(一般送配電事業者)は、送電線や配電線を運用し、エリア全体の需給を安定させる役割を持つ。
同時市場では、需要の見込みをもとに、どの発電所を起動するかを決める。需要の見込みが小さすぎると、必要な電源が起動されない可能性がある。需要の見込みが大きすぎると、発電所を多く起動しすぎる可能性がある。発電所は、起動や停止に時間がかかるものもあるため、単純にその場で増やしたり減らしたりできない。
資料3では、2024年度のデータを使い、小売想定需要とTSO想定需要の精度が改めて確認された。前日想定需要では、2021年度と同じ傾向が見られ、平均するとTSO想定需要の方が小売想定需要よりも精度が高い。ただし、2021年度と比べると差は縮小しており、小売側の精度が上がっていると整理されている。ゲートクローズ時点の分析では、前日時点よりもTSO想定需要の誤差が小さくなり、前日からゲートクローズまでの改善率もTSOの方が高い傾向が示されている。ゲートクローズとは、発電計画や需要計画を提出する締切時点であり、現行制度では実需給の1時間前に設定されている。
資料では、価格計算と電源起動をどう組み合わせるかについて、複数の案が検討されている。案①は、小売想定需要とTSO想定需要を使い分けながら、安定供給に必要な電源を確保し、小売想定需要に基づいて価格や出力量を決める考え方である。案②は、価格算定と実際の電源運用を別々に計算し、その差分を取引上の調整分として扱う考え方である。
今回の検証では、案①についてさらに細かい案が検討された。たとえば、案①-1は、小売想定需要側の計算とTSO想定需要側の計算のどちらかで起動している電源をすべて起動する考え方である。案①-2は、TSO想定需要に基づく起動状態を基本にし、不足がある場合に追加起動する考え方である。案①-3と案①-4は、調整力として確保している余力も使いながら、小売想定需要との差を処理する考え方である。
検証結果では、平均的な需要誤差を見込んだケースで、案①-1、案①-2、案①-3・4の順に、再エネ抑制量と運用コストが高くなる傾向が示された。再エネ抑制とは、太陽光や風力が発電できる状態でも、需給や送電線の制約により発電量を下げることを指す。案①-1は多くの電源を起動するため、計算しやすい一方で、再エネ抑制量や運用コストが大きくなりやすい。案①-3・4は、再エネ抑制量や運用コストが小さくなりやすいと整理されている。
需要予測を大きく外したケースでは、高需要の断面で小売想定需要がTSO想定需要よりかなり小さい場合、追加起動なしでは解が得られないケースが確認された。案①-4では、その場合にTSO取引が必要になると整理されている。TSO取引とは、安定供給のために一般送配電事業者が行う取引を指す。
資料3全体では、案①を中心に検討を進めつつ、計算上・実務上の課題を確認する内容になっている。資料の最後では、今回得られた各案の特徴や委員の意見を踏まえ、引き続き検討を進める方針が示されている。
資料4 電源起動・出力配分ロジックの技術検証(検証A)の進捗報告について 開く
資料4では、同時市場の計算ロジックに送電ロスをどう入れるかが検証されている。
送電ロスとは、発電所から需要地まで電気を送る途中で失われる電気のことである。送電線には電気抵抗があるため、発電した電気の全てが需要地に届くわけではない。発電所の場所や送電線の使われ方によって、ロスの大きさは変わる。
同時市場では、どの発電所を動かすかを計算する。送電ロスを細かく見込むと、より実態に近い電源運用を計算しやすくなる。一方で、計算が複雑になる。資料4では、この送電ロスをどこまで細かく計算に入れるかが検証されている。
資料では、SCUCとSCEDという計算が出てくる。SCUCは、どの発電所を起動するかを決める計算である。SCEDは、起動している発電所をどれくらい出力させるかを決める計算である。発電所には、起動に時間がかかるもの、最低限出さなければならない出力があるもの、出力を急に変えにくいものがある。こうした条件を入れて計算するため、同時市場のシステムはかなり複雑になる。
検証では、小規模な系統モデルと、広域連系系統モデルが使われている。広域連系系統モデルとは、複数の電力エリアをつなぐ送電網を考慮したモデルである。結果として、小規模なモデルでは各案に一定の収束性が見られたが、送電ロスを細かく扱う案②では、軽負荷期に計算が難しくなった。広域連系系統モデルでは、重負荷期にも収束性が大きく低下したとされている。\
その改善策として、送電ロスの影響が比較的大きい直流送電設備を含む地域間連系線だけを細かく扱い、その他の送電線のロスは定数として扱う案②’が検討された。これにより、収束性の改善が確認されている。
発電コストと送電ロス量の評価では、出力配分の段階で送電ロスを精緻に見込めれば、電源態勢の組み方による発電コストの大きな差は見られなかったと整理されている。資料では、評価断面Bで、案①’から案②’にした場合、発電コスト全体は1.1億円、0.36%減少し、再エネ出力制御量は291MWh減少した例も示されている。
資料5 同時市場に関する論点の今後の検討の進め方について 開く
資料5では、資料3と資料4の検証結果を踏まえ、今後の検討方針が示されている。主な論点は、電源約定で小売想定需要とTSO想定需要をどう扱うか、送電ロスをどう扱うか、業務設計・技術研究会のメンバーをどうするかである。
電源約定については、同時市場の役割とTSOの役割分担が整理されている。同時市場は、kWhとΔkWを同時に取引し、需給バランスや送電線の容量も考慮した電源態勢を示す。TSOは、同時市場の約定結果を踏まえ、ゲートクローズ以降の系統運用と需給運用を行う。
資料では、今後の検討方針として、案①をもとに検討を進めることが相当ではないかとされている。案①は、小売想定需要にTSO想定需要を加味して起動電源を決め、小売想定需要に基づいて出力量を配分する方法である。
安定供給のため、TSOが例外的に電源約定の結果に介入する仕組みも検討するとされている。たとえば、前日市場の後にTSOの想定需要から見て必要がある場合、電源の追加起動や起動結果の修正を認める要件、時間前市場への反映方法が論点になる。資料では、NYISOの例として、前日市場以降に過剰起動の懸念がある場合、緊急運用マニュアルに従って電源解列を行う仕組みが紹介されている。
案①に技術的な課題や実務上の課題が見つかった場合には、案②を改めて検討する方針も示されている。その場合には、TSOの収支や実務への影響を慎重に見るとされている。小売とTSOの需要想定の精度を高める仕組みも、並行して検討する。
送電ロスについては、同時市場で扱う範囲との関係が整理されている。現時点では、同時市場の計算対象として、上位2電圧の基幹系統を扱う方向で検討が進められている。上位2電圧とは、電力系統の中でも高い電圧で大きな電気を送る送電網を指す。資料では、同時市場で送電ロスを細かく扱う効果は、この基幹系統の範囲に限られると整理されている。
送電ロスを細かく扱う意義は、系統制約を事前により正確に見て、混雑処理費用を下げることにある。一方で、計算負荷が大きくなり、収束性の問題が生じる。約定計算の結果に応じてロス率が変わる場合、事業者の計画作成や精算の仕組みも変える必要がある。資料5では、精緻な送電ロスの取扱いは同時市場の約定に必須の機能とまでは言えないが、効果もあるため、将来的な拡張も含めて検討を続ける方向が示されている。