審議会資料解説

第21回 同時市場検討会資料解説

同時市場の導入に向けた第1フェーズとして、業務設計、運営主体、技術研究をどう進めるかを整理しています。

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会議情報

2026.02.27 第21回 同時市場検討会

出典:資源エネルギー庁「第21回 同時市場の在り方等に関する検討会」

資料別の解説

資料3 第1フェーズにおける検討の進め方等について 開く

資料3では、同時市場の導入準備をどのように進めるかが整理されている。

同時市場については、2025年10月15日に第二次中間取りまとめが公表された。その中で、今後の検討は段階的に進める方針が示されていた。第1フェーズでは詳細業務設計を行い、第2フェーズでは同時市場のシステム開発に向けた要求定義を行う。

同時市場のシステムには、入札を受け付ける機能、市場参加者や発電所の情報を管理する機能、約定処理を行う機能、価格を計算する機能、決済・精算を行う機能、約定結果を通知・公表する機能、市場を監視する機能などが必要になる。

特に難しいとされているのが、約定処理である。同時市場では、発電所ごとの起動費、燃料費、出力の上げ下げの制約、送電線の容量、需要の見通しなどをまとめて計算する必要がある。資料では、この約定処理機能の開発が重要で、難易度も高いと整理されている。

第1フェーズの検討の進め方

2026年度から、第1フェーズの検討を始める方針が示されている。第1フェーズでは、主に3つの作業を行う。1つ目は詳細業務設計、2つ目は同時市場の運営主体の検討、3つ目は同時市場システムの実現可能性を確認する技術研究である。

詳細業務設計とは、同時市場を動かすための実務を具体化する作業である。たとえば、発電事業者がどの情報を出すのか、小売電気事業者がどのように入札するのか、約定結果をどの計画に反映するのか、精算をどのように行うのかを整理する。

運営主体とは、市場を実際に運営する組織のことである。市場のルール運用、入札の受付、約定結果の公表、システム運用、市場監視などを担う。今回の資料では、第1フェーズで運営主体の検討も進める方針が示されている。

技術研究では、同時市場のシステムが実際に作れるかを確認する。発電所の数が多く、制約条件も多いため、計算に時間がかかりすぎないか、現実の市場運用に使える速度で結果を出せるかが重要になる。

業務設計・技術研究会

資料3では、新たに「業務設計・技術研究会」を設置する方針が示されている。この研究会では、海外事例の調査、事業者へのヒアリング、技術研究の報告などを行う。

メンバーには、有識者、発電事業者、一般送配電事業者、小売電気事業者、新電力、電力市場関係者、システムベンダーなどが想定されている。

技術研究

技術研究では、同時市場システムの実現可能性を確認する。

同時市場のシステムには、入札受付、市場参加者・電源情報の管理、約定処理、価格算定、決済・精算、結果通知、市場モニタリング、情報公開、中央給電指令所のシステムとの情報連携などが必要になる。中央給電指令所は、電力の需給バランスを監視し、発電所の運転などを指令する拠点である。

約定処理では、SCUC・SCEDという計算が出てくる。SCUCは、どの発電所を起動するかを決める計算である。発電所は、スイッチを入れればすぐ最大出力で動くものではない。起動に時間がかかる発電所もあり、最低限出さなければならない出力もある。こうした条件を踏まえて、どの発電所を動かすかを決める。

SCEDは、起動している発電所をどれくらいの出力で動かすかを決める計算である。需要、燃料費、送電線の容量、調整力の必要量などを踏まえて、出力の配分を決める。

資料では、北米の電力市場で、電気と調整力をまとめて計算する仕組みが広く導入されていると説明されている。ただし、日本で検討している同時市場は、日本の制度や電力システムに合わせて作る必要がある。そのため、海外市場を調べたうえで、日本の制度との違いを確認し、技術的に難しい点を整理する方針になっている。

技術研究では、ソルバーを使ったシミュレーションも選択肢として示されている。ソルバーとは、複雑な条件の中から最適な答えを計算するソフトウェアである。たとえば、発電費用をできるだけ小さくしながら、需要を満たし、送電線の容量を超えず、必要な調整力も確保するような計算に使う。

研究結果を踏まえて、同時市場システムの実現可能性に関する簡易報告書を作成する方針も示されている。簡易報告書では、約定処理の中で難しい制約条件を整理し、実現可能性につながる考察結果や、計算が難しい場合の工夫を示すことが想定されている。

業務委託

第1フェーズでは、広域機関からコンサルティング会社へ業務委託を行う予定とされている。

コンサルティング会社への委託内容には、海外同時最適化システムの調査、技術研究テーマの設定、簡易報告書の作成、研究会や検討会の運営支援、詳細業務設計のためのヒアリング補助、業務フローの作成などが含まれる。契約期間は2026年度で、契約開始は2026年5月頃からが想定されている。

詳細業務設計

詳細業務設計では、第二次中間取りまとめを前提に、実務面の設計を進める。

資料では、検討項目として、入札義務・情報提供義務、小売入札需要と送配電想定需要に基づくSCUC、アップリフト、BG計画の作成・提出方法、揚水発電・DERの取扱い、取引規律・監視が示されている。

入札義務・情報提供義務では、発電事業者にどこまで市場への入札や情報提供を求めるかを整理する。第二次中間取りまとめでは、発電事業者に対し、原則として発電余力の全量供出と全電源の情報提供を求める方向が示されていた。

小売入札需要と送配電想定需要に基づくSCUCでは、どの需要をもとに発電所の起動計画を作るかが論点になる。小売入札需要は、小売電気事業者が市場で買いたいと入札した需要である。送配電想定需要は、一般送配電事業者が電力系統の運用のために見込む需要である。どちらをどのように使って、電源の起動や価格を計算するかを検討する。

アップリフトとは、市場価格だけでは回収できない発電コストを個別に補償する仕組みである。たとえば、ある発電所を安定供給のために起動させたものの、市場価格で得られる収入だけでは起動費などを回収できない場合がある。その不足分をどう補償し、誰が負担するかが論点になる。

BG計画は、発電や需要の計画をまとめるための単位である。BGはバランシンググループの略で、計画値と実績値の差を管理する単位として使われる。同時市場では電源単位で売り入札や約定を行うため、発電事業者は、BG計画とは別に電源単位の発電計画を作る必要があると整理されている。資料では、入札結果や約定結果をBG計画に簡単に反映できる仕組みも検討項目になっている。

揚水発電・DERの取扱いも論点である。揚水発電は、電気が余る時間に水をくみ上げ、必要な時間に水を落として発電する仕組みである。DERは、分散型エネルギー源のことで、住宅用太陽光、蓄電池、EV、需要を調整する設備など、各地に分散している小規模な電源や設備を指す。資料では、揚水発電の契約や調整力必要量の扱い、DERの特性に応じた入札・価格算定方法を検討するとされている。

取引規律・監視では、入札方法のルール、市場監視の方法、同時市場自身が行う市場モニタリングの方法が検討対象になっている。市場モニタリングとは、取引価格、入札状況、約定結果などを確認し、不自然な取引や市場機能の問題がないかを見ることである。

詳細業務設計では、事業者へのヒアリングも行う予定である。発電事業者、小売電気事業者、送配電事業者などの実務を確認し、同時市場に関する業務フローを整理する。資料では、第1フェーズですべての詳細業務設計を終える想定ではなく、第2フェーズでも検討を続ける予定とされている。

スケジュールイメージ

資料では、第1フェーズのスケジュールイメージも示されている。対象期間は2026年度で、4月から翌年3月まで、詳細業務設計と技術研究を並行して進める形になっている。技術研究では、技術研究テーマの設定、ソルバーを使ったシミュレーション、簡易報告書作成、システムベンダーの選定などが想定されている。

今回の会議は、同時市場の制度そのものを大きく変える議論というより、導入準備の進め方を決める内容である。第二次中間取りまとめで示された方向性を前提に、2026年度から、業務設計、技術研究、運営主体の検討を具体的に進める段階に入る。