会議情報
2026.06.05 第49回 原子力小委員会
資料別の解説
資料1 原子力政策に関する最近の動向について 開く
資料1では、原子力発電所の再稼働状況、柏崎刈羽原子力発電所、中部電力の地震動評価に関する不適切事案、六ヶ所再処理工場、南鳥島での文献調査、日仏原子力協力、米国の核燃料サイクル政策が整理されている。
原子力発電所の現状では、2026年6月5日時点で、再稼働済みが15基、新規制基準の審査中が10基、設置変更許可済みが3基、未申請が8基、廃炉が24基と示されている。新規制基準とは、東京電力福島第一原子力発電所事故後に作られた、原子力発電所の安全性を確認するための基準である。
柏崎刈羽原子力発電所については、6号機が2026年2月16日に発電・送電を開始し、4月16日に営業運転を開始したことが示されている。資料では、柏崎刈羽原子力発電所1基が再稼働した場合、東電管内で2%以上の予備率向上が見込まれるとされている。予備率とは、需要に対して供給力にどれくらい余裕があるかを示す数字である。
中部電力の浜岡原子力発電所に関する不適切事案も扱われている。中部電力は、地震動評価で、審査会合で説明した方法と異なる方法や意図的な方法で代表波を選んでいたことを公表した。地震動評価とは、発電所にどの程度の地震の揺れを想定するかを評価する作業である。原子力規制委員会は、報告徴収や原子力規制検査、浜岡原子力発電所に関する審査停止を決定している。
六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場については、再処理工場の竣工目標が2026年度中、MOX燃料工場の竣工目標が2027年度中とされている。再処理工場は、原子力発電所で使い終わった燃料から、再利用できる物質を取り出す施設である。MOX燃料工場は、再処理で取り出したプルトニウムなどを使い、原子力発電所で使う燃料を作る施設である。
高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する動きとして、南鳥島での文献調査も説明されている。文献調査とは、最終処分地の選定に向けた最初の調査段階で、地質図や過去の資料などを確認する調査である。2026年5月20日に、NUMOの事業計画変更を経済産業大臣が認可し、南鳥島で文献調査が開始された。NUMOは、原子力発電環境整備機構のことで、高レベル放射性廃棄物の最終処分事業を担う組織である。
資料1では、日仏の原子力協力も紹介されている。2026年4月1日の日仏首脳共同声明では、既設炉の長期運転、サプライチェーン強化、高速炉やフュージョンエネルギーの研究開発、核燃料サイクル推進などで協力を強める方針が示された。高速炉は、通常の原子炉とは異なる中性子の性質を使う次世代原子炉の一つである。フュージョンエネルギーは、核融合反応を利用するエネルギーである。
資料2 「今後の原子力政策の方向性と行動指針」の改定案について 開く
資料2では、行動指針をどのように改定するかが説明されている。
行動指針とは、原子力政策で取り組む課題と、国、事業者、関係機関が進める対応を整理したもの。2023年4月に原子力関係閣僚会議で決定され、今回、第7次エネルギー基本計画を踏まえて改定する方向が示されている。
改定案では、6つの柱という基本構造は維持されている。大きな見直しとして、「原子力発電の見通し・将来像」を前段に置く構成になっている。これは、将来どの程度の原子力発電が必要になるかを示し、その上で再稼働、既設炉の活用、次世代革新炉、核燃料サイクル、廃炉、最終処分、人材・サプライチェーンを整理するためである。
柱の名称も見直されている。以前の「再稼働への総力結集」は、「原子力を長期的に活用していく上での大前提」に変更する案が示された。ここには、安全性向上、立地地域との共生、国民各層とのコミュニケーションが含まれる。再稼働を進めるための取り組みは、「再稼働の加速・既設炉の最大限活用」に整理されている。
改定案では、原子力発電所の建て替えの必要性も示されている。一定の仮定の下で試算すると、2040年代までに約220万〜550万kW、2050年代までに2040年代分を含めて約1,270万〜1,600万kWの建て替えが必要になるとされている。大型炉で換算すると、2040年代までに約2〜5基、2050年代までに約11〜14基に相当する。
ここでいう建て替えは、古い原子力発電所が運転期間の上限に近づく中で、将来の脱炭素電源をどう確保するかという論点である。原子力発電所の開発・設置には、十数年から20年程度の時間がかかるとされているため、2040年代以降の電源構成を考える場合、早い段階から検討する必要があると整理されている。
資料3 今後の原子力政策の方向性と行動指針(案) 開く
資料3は、改定後の行動指針そのものの案である。
前段では、将来の電力需要が増える可能性が高いと説明されている。背景には、鉄鋼業で高炉から電炉へ転換する動き、生成AIの普及に伴うデータセンターの増加、半導体工場の増加がある。電炉は、電気を使って鉄を作る設備である。データセンターや半導体工場も多くの電気を使うため、将来の電力需要を押し上げる要因になる。
2040年度のエネルギーミックスでは、発電電力量を1.1兆〜1.2兆kWh程度と見込み、その中で原子力発電は電源構成の2割程度とされている。kWhは電気の量を表す単位である。電源構成とは、電気をどの発電方法で作るかの割合を指す。
「原子力を長期的に活用していく上での大前提」では、安全性向上、立地地域との共生、国民各層とのコミュニケーションが整理されている。安全性向上では、福島第一原子力発電所事故の教訓として「安全神話からの脱却」を問い直すこと、規制基準を満たす対応で終わらせず、継続的に安全性を高めることが示されている。
コミュニケーションについては、国や事業者からの一方通行の情報提供ではなく、目的や対象を明確にした対話を行う方針が示されている。たとえば、再稼働方針の説明、地域の将来像に関する意見交換、電気を使う地域への説明など、相手に応じた内容と手段が必要になる。
「再稼働の加速・既設炉の最大限活用」では、再稼働審査への対応、技術的な課題への対応、人材の確保、運転サイクルの長期化、定期検査の効率化、大型機器の更新などが扱われている。既設炉とは、すでに建設されている原子力発電所を指す。設備利用率は、発電所がどれくらいの割合で発電できているかを示す数字である。
「次世代革新炉の開発・設置」では、革新軽水炉、SMR、高速炉、高温ガス炉が取り上げられている。革新軽水炉は、現在の軽水炉の技術を発展させた大型炉である。SMRは小型モジュール炉のことで、比較的小さな出力の原子炉を指す。高温ガス炉は、高い温度の熱を取り出せる原子炉で、水素製造などへの活用も検討されている。資料では、それぞれの炉型の開発段階に応じて、技術開発、規制との共通理解、制度・支援措置を検討するとされている。
「バックエンドプロセス加速化」では、核燃料サイクル、使用済燃料対策、廃炉、最終処分が扱われている。バックエンドとは、原子力発電で使い終わった燃料や放射性廃棄物に関する工程を指す。資料では、六ヶ所再処理工場の竣工、プルサーマルの推進、使用済燃料の中間貯蔵施設、廃炉作業、クリアランス物の再利用、最終処分地選定などが整理されている。
プルサーマルとは、使用済燃料から取り出したプルトニウムをMOX燃料として加工し、通常の原子力発電所で利用する取り組みである。中間貯蔵施設は、使用済燃料を再処理するまでの間、一時的に保管する施設である。クリアランス物は、放射能濃度が十分に低く、安全上問題がないと確認されたうえで、一般の資源として再利用できるものを指す。
最終処分では、高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向け、国主導の理解活動を強化する方針が示されている。資料では、全国の自治体への働きかけ、関心自治体の発掘、若年層への理解活動、NUMOや関係機関との技術開発が挙げられている。
資料4 第49回原子力小委員会に対する意見 開く
資料4は、壬生委員の提出資料である。行動指針の改定案について、改定の背景やポイントは概ね理解できる内容だとしたうえで、原子力発電の見通しや将来像を、事業者や関係者が予見性を持てる形で明確に示す必要があると述べている。
また、原子力政策を進めるためには、人材の確保・育成が必要だとしている。行動指針の柱に「人材基盤の維持・強化」が明記されたことは、国が原子力人材の確保・育成に取り組む姿勢を示すものだと評価している。
今回の会議は、原子力政策の行動指針を、2040年以降も見据えた内容に更新する議論だった。再稼働、既設炉の活用、次世代革新炉、核燃料サイクル、廃炉、最終処分、人材・サプライチェーンを個別の論点として扱いながら、将来の電力需要と脱炭素電源の確保を前提に、原子力をどう位置づけるかを整理している。