審議会資料解説

第75回 料金制度専門会合

2026年5月13日の料金制度専門会合の資料を整理しています。

← 審議会資料解説の一覧へ戻る

会議情報

2026.05.13 第75回 料金制度専門会合

出典:電力・ガス取引監視等委員会「第75回 料金制度専門会合」

資料一覧

資料3 電気の規制料金の審査を踏まえた対応について 開く

規制料金値上げ後の調達効率化、7社は概ね着実に実施

今回の資料は、2023年5月の電気の規制料金の変更認可を受けて、大手電力7社が進めている調達効率化の取組状況を確認したものである。2023年の料金改定では、消費者庁との協議を踏まえ、2023~2025年度を「集中改善期間」とし、対象となる大手電力7社に調達効率化に向けたロードマップの策定を求めることになった。電気料金の値上げを認める以上、その後に各社が本当に効率化を進めているかを継続的に確認する必要があるためである。

前回の2025年秋フォローアップでは、ロードマップに織り込まれた効率化施策の進捗に加え、2024年度の実績コストを、料金審査時の査定額や前年度実績と比較した際の増減要因が確認された。今回の2026年春フォローアップでは、2025年度に各社が行った個別施策の進捗が中心になっている。次回の2026年秋フォローアップでは、再び実績コストの確認まで進める予定であり、今回の資料はその前段階に位置づけられる。

フォローアップでは、各社がロードマップに織り込んでいる効率化施策について、遅れが生じていないか、期待した効果が出ているかが確認された。遅れや効果未達がある場合には、その要因も確認され、労務費の上昇や物価高の影響が出ているかも見られている。さらに、遅れが生じている施策について、各社が適切な対応策を講じているかも確認対象になった。

結果として、全ての事業者で、ロードマップに基づく効率化施策は概ね着実に実施されていると整理された。物価上昇や労務費の高騰は電力業界にも影響しているが、新規取引先の開拓、仕様や数量の工夫などにより、効率化施策の遂行自体には影響を与えていないとされた。一方で、技術的な理由などにより、中止や変更を余儀なくされた施策もあり、事務局はそれらについても要因と対応策を確認している。

各社別に見ると、北海道電力では、既設メーカー以外からの調達が達成されなかった施策があった。ただし、これは品質保証上の理由によるものとされ、当該施策については別の観点から費用低減が検討された。四国電力では、部品調達の納期遅れなどにより計画から遅延した施策があったが、代わりに他の取組の導入が検討された。沖縄電力では、ロードマップに載っていない取組も含めて進捗が確認され、物価高の影響はあったものの、施策の推進自体への影響は軽微とされた。

北陸電力では、技術的な理由で遅延した施策があったが、見込まれる効果は計画よりも大きくなる予定とされた。東京電力EPでは、さらなるコスト削減を追求したことで検討に時間を要し、遅延が生じた施策があったが、成果は計画通りに出る見込みとされた。東北電力では、計画の一部について中止や延期があったが、汎用化が困難だったことなど技術的な理由によるものと整理され、ロードマップ外の施策も含めて全社的に効率化に取り組んでいることが確認された。中国電力では、物価高の影響に対して、上流購買の拡大や工法の見直しなども含めて対応したとされている。

今回の確認は、料金審査後のフォローアップとして重要である。規制料金の審査では、各社の将来コストや効率化努力を踏まえて料金水準が判断される。そのため、料金改定後に、各社がロードマップ通りに効率化を進めているか、計画から外れた場合に合理的な理由があるか、代替策を講じているかを確認することは、料金水準の妥当性を事後的に点検する意味を持つ。

ただし、今回の資料だけで、効率化の実績が最終的に料金負担の抑制につながったかまで判断できるわけではない。今回確認されたのは、主に2025年度の個別施策の進捗である。次回、2026年11月頃に予定される秋のフォローアップでは、ロードマップに織り込まれた効率化施策の進捗に加えて、2025年度実績コストを査定額や前年度実績と比較した際の増減要因を確認する予定とされている。

そのため、今後は「取組を行っているか」だけでなく、「その結果として実際のコストがどう変わったか」がより重要になる。物価高や労務費上昇が続く中で、各社が調達先の拡大、仕様の見直し、工法の工夫などをどこまで実際のコスト抑制につなげられるかが、次回以降の確認対象になる。

資料4 レベニューキャップ制度における第2規制期間に向けた検討課題について 開く

(事業報酬)送配電の事業報酬、第2規制期間へ見直し議論 需要家負担と系統投資のバランスが焦点に

今回の資料は、一般送配電事業者の託送料金に関するレベニューキャップ制度について、2028年度から始まる第2規制期間に向けて、事業報酬の算定方法をどう見直すかを整理したものである。レベニューキャップ制度とは、一般送配電事業者が一定期間に回収できる収入上限をあらかじめ決める仕組みである。ここでいう規制期間とは、その収入上限や事業計画をまとめて設定する期間のことで、第1規制期間は現在の制度運用期間、第2規制期間は2028年度から始まる次の制度運用期間にあたる。資料では、前回会合で整理された第2規制期間に向けた制度的論点のうち、今回は「事業報酬」について具体的に議論する位置づけとされている。

事業報酬は、送配電会社が電柱、送電線、変電所、配電網などを維持・更新し、必要な投資を行うための資金調達コストを料金制度上どう認めるかという項目である。資料では、事業報酬は、必要な資金調達コストとして、支払利息や株主への配当金などに充てるための費用とされている。計算は「レートベース × 事業報酬率」で行われる。レートベースは、ざっくりいえば送配電事業に必要な設備資産の規模であり、そこに一定の報酬率をかけることで、事業を続けるために必要な資金コストを収入上限に織り込む仕組みである。

第1規制期間では、事業報酬率は1.5%とされている。この事業報酬率は、自己資本報酬率と他人資本報酬率を、自己資本比率と他人資本比率で加重平均して算定する。簡単に言えば、会社が株主資本でどれだけ資金を支えていると見るか、借入や社債でどれだけ資金を支えていると見るかによって、最終的な報酬率が変わる。今回の資料では、自己資本比率・他人資本比率、β値、一般送配電事業者のリスクプレミアム、公社債利回り実績率の反映方法という4つが、事業報酬を考える上での主な検討項目として示されている。

この議論は、送配電会社だけの話ではない。事業報酬が高くなれば、送配電会社は投資や資金調達を行いやすくなる一方で、託送料金を通じて需要家の負担は増えやすくなる。逆に、事業報酬を低く抑えれば、短期的には需要家負担を抑えやすいが、送配電網の更新、再エネ導入に伴う系統増強、データセンターなどの大規模需要への対応に必要な資金を確保しにくくなる可能性がある。資料で扱われているのは、料金を上げるか下げるかだけではなく、送配電網への投資を支える仕組みと、需要家負担の抑制をどう両立するかという問題である。

まず、自己資本比率については、第1規制期間では30%が維持された。これは、送配電会社の実際の自己資本比率が30%だったからではない。第1規制期間の制度設計時点では、法的分社化から間もなく、送配電事業単独としての財務実績やリスク特性に関するデータが十分に蓄積されていなかった。そのため、送配電会社の実態的な事業リスクに基づいて適切な自己資本比率を客観的に判断することが難しく、一定の財務健全性を確保する観点から、従来の考え方である自己資本比率30%を維持したと整理されている。

一方で、実際の自己資本比率は30%よりかなり低い。旧一般電気事業者10社の連結ベースでは、自己資本比率は2022年度末に17.3%まで低下し、2024年度末には23.6%となっている。一般送配電事業者9社平均では、2022年度末に11.5%まで低下し、2024年度末は13.7%となっている。つまり、算定上は30%を使っているが、一般送配電事業者単体の実績は13.7%程度であり、制度上の前提と実態には大きな差がある。

ただし、実績が13.7%だから、算定上もただちに13.7%にすべきという話にはならない。自己資本比率を低く設定すれば、一般には事業報酬率が下がりやすく、託送料金も抑えやすくなる。一方で、自己資本を薄く見積もりすぎると、想定外の損失やキャッシュフロー変動に備える財務バッファーを十分に評価できなくなる。資料でも、自由化の進展、燃料価格や卸電力価格の大幅な変動により、事業環境が大きく変化し、想定外の損失やキャッシュフロー変動に備えるため、自己資本を一定程度厚く持つ必要性が高いという考え方が示されている。

また、一般送配電事業者の資金調達は、単体の財務だけで完結しているわけではない。資料では、東京PGを除く一般送配電事業者の資金調達は、実務上、親会社によるグループファイナンスで行われているとされている。沖縄電力は一体会社として資金調達を行い、東京PGはグループ全体の財務状況や信用を用いた上で自社調達している。したがって、自己資本比率を見る際には、送配電会社単体の数字だけでなく、親会社グループ全体の信用力や資金調達環境も関係する。

次に、β値である。β値は、市場全体の変動に対して、その事業がどの程度影響を受けやすいかを示す指標である。βが1であれば市場平均程度のリスク、1を超えれば市場よりリスクが高く、1を下回れば市場よりリスクが低いと解釈される。第1規制期間では、各送配電会社が非上場であるためβ値を直接取得できないことから、送配電事業のリスクを東日本大震災前の旧一般電気事業のリスクと同等と考え、東日本大震災前5年間の旧一般電気事業者のβ値である0.42が継続的に採用されている。

しかし、資料では、一般送配電事業を取り巻く外部環境が大きく変化していると整理されている。再生可能エネルギーの導入拡大、データセンターなどの大規模需要の立地、電力潮流の変化、系統混雑の顕在化によって、一般送配電事業者の設備投資は大規模化・長期化している。これに対応する資金調達も必要になるため、震災前の旧一般電気事業者のβ値0.42をそのまま使い続けることが適切かが検討対象になっている。

参考として、電力会社の親会社ベースのβ値も示されている。10社平均では、震災前5年は0.42だったが、直近10年では0.72、直近5年では0.70となっている。ガス、航空、JR、民鉄などの公益事業平均も、直近10年で0.70、直近5年で0.59とされている。ただし、電力会社のβ値は一般送配電事業単体ではなく、発電事業や小売事業を含む親会社のβ値であるため、そのまま送配電事業のβ値として使えるわけではない。それでも、現行の0.42が現在の資金調達環境や事業リスクを十分に反映しているのかは、見直しの対象になる。

β値を高く設定すると、資本コストは高く見積もられ、事業報酬率も上がりやすくなる。需要家から見れば、託送料金の上昇要因になり得る。一方で、β値を低く置きすぎると、送配電事業のリスクが過小評価され、必要な投資を行うための資金調達コストを十分に回収できない可能性がある。第2規制期間では、送配電網への投資が引き続き重要になるため、β値の設定は、需要家負担と投資環境の両方に関わる。

リスクプレミアムについても、資料では見直しの必要性が示されている。第1規制期間では、一般送配電事業者のリスクプレミアムについて、東日本大震災前5年間の旧一般電気事業者の「平均有利子負債利子率-公社債利回り実績率」の平均値を用いていた。これは、比較的安定した事業環境の下で観測された資本市場データを使うことで、規制事業としての保守的かつ安定的な資本コストを設定する考え方だった。

この計算の意味は、標準的な金利に対して、電力会社がどれだけ上乗せの金利を払っているかを見ることにある。公社債利回りを基準的な利回りと考え、そこから電力会社の平均有利子負債利子率を比べる。たとえば、公社債利回りが1.0%で、電力会社の平均有利子負債利子率が1.3%であれば、その差の0.3%は、電力会社が資金調達する際に上乗せで負担している部分と考えられる。これがリスクプレミアムである。

通常は、公社債利回りよりも個別企業の借入金利や社債利回りの方が高くなりやすい。個別企業の債務には、その会社が将来きちんと返済できるかという信用リスクがあるため、投資家や金融機関はその分だけ高い利回りを求めるからである。2025年度は、有利子負債利子率1.04%に対して公社債利回り1.79%で、差分はマイナス0.75%となっている。こ平均有利子負債利子率には、過去に低い金利で借りた借入や社債が残る一方、公社債利回りは足元の金利上昇をより反映しやすいため、金利上昇局面では公社債利回りの方が先に高くなりやすい。

リスクプレミアムがマイナスで算定されると、制度上は「一般送配電事業者は基準的な公社債利回りよりも低いコストで資金調達できる」という形になってしまう。短期的には事業報酬を低く抑えられるため、需要家負担を抑える方向に働く可能性がある。しかし、その数字が今後の借換えや新規投資に必要な資金調達コストを正しく表していない場合、送配電会社の資金調達コストを過小評価することになる。資料でも、金利上昇局面や信用スプレッドの変動により、一般送配電事業者の資金調達環境は第1規制期間の制度設計当初から変化していると整理されている。

このため、資料では、固定利付債のスプレッドを用いたリスクプレミアムの推移も参考として示している。固定利付債とは、あらかじめ決まった利率で利息を支払う債券である。スプレッドとは、基準となる利回りとの差であり、たとえば国債などの基準利回りが1.0%で、電力会社の10年固定利付債の利回りが1.5%であれば、スプレッドは0.5%になる。この0.5%は、投資家がその会社の信用リスクなどに対して、基準利回りよりも上乗せして求めている利回りと考えられる。

資料では、一般送配電事業者の資金調達がグループファイナンスで行われていることを踏まえ、電力各社の機関投資家向け固定利付債、年限10年のスプレッドを用いたリスクプレミアムの推移が示されている。これは、一般送配電事業者単体の平均有利子負債利子率だけではなく、市場が電力会社グループの信用力をどう評価しているかを見るための材料である。ただし、この固定利付債スプレッドは、自己資本比率30%を前提にしたものではなく、各時点の実際の自己資本比率などを踏まえた電力会社の経営環境に対する市場評価に基づくものだとされている。

最後に、公社債利回り実績率の反映方法も検討項目になっている。第1規制期間では、参照期間5年間の公社債利回り実績率の平均値を用いて、規制期間中一律の事業報酬率を算定していた。しかし、その参照期間にはマイナス金利政策時期が含まれていたため、現在の公社債利回りとは乖離が生じている。2025年12月の第72回会合では、第1規制期間の事業報酬に関する制度措置として、公社債利回り実績率を対象年度の直近5年間の実績平均に置き換えて、事業報酬率を算定すると整理された。

第2規制期間では、この公社債利回り実績率を期初にどのように設定するか、さらに事後的な調整をどう行うかが検討対象になる。金利が大きく上がっている局面で、過去の低金利期間を含む平均値をそのまま使えば、実際の資金調達コストを過小評価する可能性がある。一方で、金利上昇をすぐに料金へ反映しすぎれば、需要家負担が増えやすくなる。したがって、公社債利回りの扱いも、送配電事業者の資金調達環境と需要家負担のバランスを取るための重要な項目になる。

今回の資料は、自己資本比率30%、β値0.42、東日本大震災前のリスクプレミアム、過去5年間の公社債利回り平均といった、第1規制期間で使われてきた前提を、第2規制期間でも維持できるのかを問い直している。第1規制期間の制度設計時には、送配電事業は比較的リスクの低い規制事業として見られていた。しかし、再エネ導入拡大、系統混雑、大規模需要、投資の長期化、金利上昇によって、資金調達環境は変化している。需要家負担を抑えるために事業報酬を低く置きすぎると、必要な送配電投資が難しくなる可能性がある。一方で、資金調達環境の変化を厚く反映しすぎれば、託送料金を通じて需要家負担が増える。第2規制期間に向けては、この両方を見ながら、事業報酬率の算定方法をどこまで見直すかが議論されることになる。