審議会資料解説

第74回 料金制度専門会合

2026年4月10日の料金制度専門会合の資料を整理しています。

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会議情報

2026.04.10 第74回 料金制度専門会合

出典:電力・ガス取引監視等委員会「第74回 料金制度専門会合」

資料一覧

資料3-1 投資量の合理的かつ現実的な計画への見直しについて 開く

(一般社団法人送配電網協議会)送配電投資量を2026~2027年度分で見直し 拡充工事は下振れ、更新工事は設備状態を見て厳選へ

一般送配電事業者は、送電線、変電所、配電線、電柱、柱上変圧器などを維持・更新し、需要増加や再エネ接続に対応するための設備投資を行っている。これらの投資は、最終的には託送料金を通じて需要家負担にも関係するため、必要な投資を確保しつつ、過大な計画にならないよう精査することが重要になる。資料では、安定供給に支障をきたさないことを大前提に、期初申請時からの情勢変化や2023年度~2025年度の実績を踏まえて、2026年度~2027年度の投資量を見直していると説明されている。

ここでいう投資とは、鉄塔の基数、送電線やケーブルの距離、変圧器や遮断器の台数、コンクリート柱の本数など、設備をどれだけ作るか・更新するかという物量のことである。資料では、投資量の見直しにあたって、住宅着工件数の低下に伴う需要・電源対応工事の減少、データセンターや半導体工場などの大規模需要新設による拡充工事の増加、用地交渉や停電調整など外部要因による工程遅延を反映するとしている。また、物価変動の影響が大きくなる中で、現地・現物の設備状態に基づいて、更新が本当に必要かを合理的に判断する考え方も示されている。

2023年度~2025年度の実績を見ると、送電・変電設備はいずれの品目も期初申請に対して未達となった。配電設備でも、需要・電源対応や無電柱化といった拡充工事は未達となっている。一方で、配電設備の更新工事では、施工力を有効活用する観点から、地中ケーブルなど一部の工事を前倒ししており、申請を上回る品目もあった。2026年度~2027年度の計画を見直した結果、工務ケーブルと変圧器は2か年では計画より増える一方、5か年計で見ると、低圧線と地中ケーブルを除く品目で期初申請を下回る見込みとされている。

今回の資料では、投資量の見直しとあわせて、効率化施策の横展開も説明されている。一般送配電事業者各社がそれぞれ持つ効率化施策を相互に共有し、その判断根拠も確認した上で、2026年度~2027年度の計画に反映するという考え方である。効率化施策は、大きく「投資量の効率化」と「投資額の効率化」に分けられている。投資量の効率化は、たとえば鉄塔の基数や変圧器の台数そのものを減らす取組であり、投資額の効率化は、必要な設備量は維持しながら、工法や作業方法を見直して費用を下げる取組である。

住宅着工件数や再エネ接続量の変化により、当初想定より少なくなる工事がある一方、データセンターや半導体工場などの大規模需要、新規系統連系、機器の長納期化による後ろ倒しによって、増える工事や年度をまたぐ工事もある。そのため、2026年度~2027年度の計画では、需要・電源対応や無電柱化のように実態に合わせて下方修正するものと、変圧器や工務ケーブルのように後ろ倒しや新規申込みを反映して増えるものが混在している。

託送料金との関係で見ると、投資計画は需要家負担にもつながる。必要性の乏しい設備投資を計画に残せば、将来の託送料金を押し上げる要因になり得る。一方で、更新や増強を抑えすぎれば、停電リスクや将来の接続制約につながる可能性がある。今回の見直しでは、安定供給を前提に、投資量を最新の需要動向や実績に合わせて精査し、さらに各社の効率化施策を横展開する方向が示された。第2規制期間に向けては、こうした投資量の見直しが、収入上限や託送料金の水準にどう反映されるかも重要になる。

資料3-2 一般送配電事業者による2026・2027年度の合理的かつ現実的な投資量の見直し及びレベニューキャップ制度における第2規制期間に向けた検討課題について 開く

第2規制期間に向け、託送料金制度の見直し論点を整理 年度別料金設定も検討へ

レベニューキャップ制度は、一般送配電事業者が一定期間に回収できる収入上限をあらかじめ定める制度であり、2028年度から第2規制期間が始まる。今回は、第2規制期間に向けて検討が必要な論点の全体像を示したうえで、その中でも「規制期間中一律の託送料金を見直すか」について具体的に議論する構成になっている。

まず、2026・2027年度の投資量見直しについては、事務局として引き続き進捗を確認し、今後の翌期調整や期中調整の申請があった場合には、投資量見直しの妥当性を厳正に審査するとしている。ここで対象になるのは、第1規制期間中の物価上昇や事業報酬、特に公社債利回りの変動に関する制度措置の対象となる投資量である。つまり、投資計画を最新の実態に合わせて見直すこと自体は認める一方で、その見直しが本当に合理的か、託送料金に反映すべき内容かを後から確認するという整理である。

あわせて、送配電網協議会から報告された効率化施策についても、各社の取組内容だけでなく、他社へ最大限横展開されているかを確認していく方針が示された。前の資料3-1では、長径間化による鉄塔数削減、撤去機器の流用、柱上変圧器の統合、航空レーザ測量、メッシュ型枠、遠隔立会など、投資量や投資額を抑えるための施策が示されていた。今回の資料は、それらを各社が個別に実施するだけでなく、効果があるものは一般送配電事業者全体に広げていくことを求める位置づけである。

第2規制期間に向けた制度的論点は、大きく複数に分けて整理されている。第72回会合で既に示されていたものとして、制度措置後の状況の継続的な検証、事業報酬の検討、物価等上昇を考慮した審査のあり方、ロスシェア・プロフィットシェアのあり方、物価等や金利変動の反映方法、規制期間中一律の託送料金の見直しがある。さらに今回の資料では、目標計画の設定・評価方法、次世代投資費用の範囲・便益評価方法、統計査定の精緻化も論点として整理されている。

目標計画の設定・評価方法では、第1規制期間で設定された「安定供給」など7分野18項目の評価方法を見直す必要があるのではないかとされている。レベニューキャップ制度では、単に収入上限を決めるだけでなく、一般送配電事業者に効率化やサービス向上を促すためのインセンティブも設けられている。具体的には、評価結果によって収入上限を引き上げたり引き下げたりする仕組みと、取組を公表することで評判を通じた改善を促す「レピュテーショナルインセンティブ」がある。

ただし、評価方法には課題もある。第1規制期間では、自社の過去実績と比べる「縦比較」と、10事業者間で比べる「横比較」が使われているが、縦比較では、過去の実績が悪かった事業者ほど改善して見えやすくなる可能性がある。反対に、過去の実績が非常に良かった事業者は、次の規制期間で相対的に不利になりやすい。このため、資料では、第2規制期間ではインセンティブの評価方法を再検討する必要があるのではないかとしている。

また、レピュテーショナルインセンティブについては、事業者の取組が報告・公表されること自体に意味がある一方で、事業者側や評価側の事務コストもかかる。資料では、負荷に対して効果の小さい項目については、省力化を検討する必要があるという指摘も紹介されている。第2規制期間では、外部環境の変化も踏まえ、目標計画で確認する項目自体を必要に応じて見直す方向が示されている。

次世代投資費用については、対象範囲と便益評価の方法を明確化する必要があるとされている。次世代投資とは、脱炭素、レジリエンス、DXなど、電力ネットワークの将来に必要な新しい取組に関する投資である。第1規制期間では、規制期間内だけでなく中長期的な取組を進める観点から、費用対便益などにより重要性が認められる投資を対象とし、通常の効率化係数0.5%/年を設定しない扱いとされていた。

一方で、第1規制期間の審査では、便益説明の具体性や合理性に事業者間で差があるとの指摘があった。たとえば、同じように次世代投資とされる取組でも、それによって社会にどのような便益が生じるのか、どの程度の効果があるのか、説明の粒度がそろっていなければ、料金に織り込む妥当性を判断しにくい。資料では、第2規制期間に向けて、便益説明の考え方を統一するとともに、技術の進展や普及状況を踏まえ、次世代投資費用の位置づけや対象範囲を明確化する必要があるとしている。

ここでは、次世代投資の範囲をどう捉えるかも問題になる。第1規制期間では、脱炭素、レジリエンス、DXの観点から複数の項目が分類されていたが、第2規制期間では、DX・AI投資、省人化・効率化、新規性、革新性などの観点も含めて整理する方向が示されている。単に新しい技術だから認めるのではなく、なぜ通常投資ではなく次世代投資として扱うのか、どのような便益があり、どの程度の費用を認めるべきかを、より明確にする必要がある。

送配電網協議会では統計査定の精緻化に向けた検討を進めている。第8回送配電効率化・計画進捗確認WGでは、第1規制期間では中央値査定の対象となっていた一部項目について、説明変数の見直しにより、重回帰分析の決定係数が向上したことが報告されている。資料では、こうした状況を踏まえ、第2規制期間以降は、中央値の活用から重回帰分析による統計査定への見直しも検討していく必要があるとしている。

今回、個別に具体的な議論対象とされたのが、規制期間中一律の託送料金の見直しである。現行の指針では、託送料金は規制期間において一律に算定することを基本としている。ただし、合理的な理由があると認められる場合には、各事業年度で異なる託送料金を算定することも認められている。実際には、第1規制期間では全ての一般送配電事業者が規制期間中一律の託送料金設定を行っている。

一律料金には、料金の安定性や分かりやすさという利点がある。一方で、レベニューキャップ制度では、規制期間の後半にかけて費用が積み上がる構造がある。設備が竣工すれば減価償却費などが増えるため、規制期間中ずっと同じ託送料金にすると、後年度にかけて利益が縮小する傾向がある。資料では、このような収支構造が資本市場から否定的に見られ、結果として資金調達コストの上昇を招くリスクにも言及している。

これに対して、資料では、第2規制期間において、後年度の費用増加を踏まえ、各年度の託送料金単価を段階的に引き上げる形で設定する方法が示されている。たとえば、規制期間中の収支を平準化する、あるいは年度ごとの費用と料金単価を対応させるために、5年間すべて同じ単価ではなく、年度ごとに異なる単価をあらかじめ設定するという考え方である。これは、一般送配電事業者の収支安定化だけでなく、消費者にとっても費用の発生時期に即した負担になるという観点から合理的と考えられるかが問われている。

ただし、年度ごとに託送料金単価が変われば、小売電気事業者や需要家への影響も大きくなる。小売事業者は、託送料金の変更を小売料金にどう反映するかを検討し、需要家に説明する必要がある。特に法人需要家では、料金改定の説明を受けて社内で合意形成する必要もあるため、十分な周知期間が求められる。資料では、5年分の託送料金単価を期初にまとめて確認し、一般送配電事業者が約款に記載することで、小売事業者を含めた予見性を確保できるのではないかとしている。

この点は、需要家から見ると、単に「毎年料金が変わる可能性がある」という話ではない。一律料金にすれば料金は安定するが、後年度に送配電会社の収支が悪化しやすくなり、資金調達コストや将来投資に影響する可能性がある。年度別料金にすれば、費用発生の時期に近い形で負担できるが、小売料金への反映や需要家説明が複雑になる。第2規制期間では、送配電会社の財務安定性、資本市場からの見え方、小売事業者の実務、需要家の予見可能性を同時に考える必要がある。

今後のスケジュールでは、第2規制期間は2028年4月に開始する予定である。2027年7月頃から料金審査を行い、それまでに省令改正などの作業を完了する必要がある。そのため、省令改正などを要する制度的論点については、2026年内から2027年初頭までに検討を行う必要があるとされている。今回整理された論点は、今後、料金制度専門会合で順次議論される予定である。