会議情報
2025.12.16 第71回 料金制度専門会合
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資料3 レベニューキャップ制度における物価等の上昇及び事業報酬の取扱いについて 開く
第1規制期間の物価・金利上昇を制度措置へ 2026・2027年度分を対象に託送料金へ反映
今回の資料は、一般送配電事業者のレベニューキャップ制度について、第1規制期間中に想定以上に進んだ物価上昇、労務費上昇、金利上昇をどのように扱うかを整理したものである。レベニューキャップ制度では、一般送配電事業者が一定期間に回収できる収入上限をあらかじめ決める。第1規制期間の審査時には、規制期間中の物価変動は大きくないという前提で制度設計が行われていたが、その後、人件費や資材価格、金利が大きく上昇したため、当初の前提と実態との間にずれが生じている。
前回の第70回会合では、第1規制期間についても制度措置の対象とすること、その対象年度は2026・2027年度の2年間とすること、対象とする投資量は各事業者が見直した合理的かつ現実的な投資量とすること、料金への反映方法は基本的に翌期調整としつつ、事業者による期中調整の申請も可能とすることが、概ね了承されていた。今回の資料では、その整理を前提に、制度措置の対象費用、基準年度、適用する物価指標、事業報酬の扱い、第2規制期間に向けた課題が具体的に示された。
対象となる費用項目については、基本的には物価等上昇の影響を受ける費用を制度措置の対象とする考え方である。具体的には、OPEX、CAPEX、その他費用、次世代投資費用が対象とされた。OPEXは委託費や研究費など、CAPEXは減価償却費や取替修繕費など、その他費用は修繕費など、次世代投資費用は委託費、修繕費、研究費などが想定されている。一方で、制御不能費用、事後検証費用、控除収益は、もともと翌期調整の対象であり、物価上昇の影響があっても個別に検証・調整できるため、今回の制度措置の対象外とされた。また、廃炉等負担金、離島等供給に係る収益、離島等供給に係る燃料費、除却損のように、物価等上昇の影響を受けない、または別制度で調整される項目も対象外とされている。
物価等上昇の影響額を算定する基準年度は、2021年度とする案が示された。第1規制期間の審査では、2021年度までの費用実績をベースにしていたためである。適用する客観的な公表指標については、3つの案が比較された。案①は、対象費用全体に消費者物価指数を適用する方法である。これは需要家負担を抑えやすいが、送配電設備の建設工事に関する資材費や労務費の上昇を十分に反映しにくい。案③は、対象費用全体に国内企業物価指数を適用する方法である。企業間取引の実態には近いが、全体の上昇率が大きくなり、需要家負担が重くなる。資料では、案②として、費用項目には消費者物価指数、投資項目には建設工事費デフレーターの電力を適用する方法が示され、これが適当ではないかとされた。
案②が選ばれているのは、送配電事業の費用の性質が一様ではないためである。送配電工事は、電力会社だけで完結するものではなく、実際には多くの工事会社や協力会社が支えている。物価や労務費の上昇を料金制度上まったく反映できなければ、送配電会社だけでなく、取引先である電気工事事業者の賃上げや人材確保も難しくなる。結果として、老朽化設備の更新、再エネ対応、GX・DX投資にも支障が出る可能性がある。
事業報酬についても、第1規制期間中の時限的な制度措置が示された。事業報酬は、一般送配電事業者が事業を行うために必要な資金調達コストであり、支払利息や株主への配当金などに充てるための費用である。第1規制期間の事業報酬率は1.5%とされているが、その算定に使われる公社債利回り実績率には、マイナス金利政策時の低い金利も含まれている。資料では、現行の参照期間で事業報酬算定に用いている公社債利回りは0.098%である一方、2025年10月時点の10年国債利回りは1.635%となっており、足元の金利環境と大きな乖離があるとされている。
この乖離が続くと、一般送配電事業者の資金調達に支障が出るおそれがある。送配電事業では、設備更新や系統増強のために大きな投資が必要になる。金利が上がれば、新たな借入や社債発行、借換えのコストも上がるが、制度上の事業報酬が過去の低金利を前提としたままだと、実際の資金調達コストを十分に回収できなくなる可能性がある。そのため、資料では、物価等上昇の制度措置と同様に、2026・2027年度を対象として、公社債利回り実績率を対象年度の直近5年間の平均に置き換えて事業報酬率を算定する案が示された。たとえば2026年度分については、2021~2025年度の公社債利回り実績の平均を採用する。これにより、従来の算定式そのものは維持しつつ、金利上昇の影響をより直近の市場環境に近い形で反映することになる。
ただし、今回の事業報酬の見直しは、第1規制期間における時限的な措置と位置づけられている。第2規制期間に向けては、公社債利回りだけでなく、自己資本比率やβ値を含めた事業報酬率の算定方法全体を総合的に検討することが適当とされている。第1規制期間では、自己資本比率30%、β値0.42などの前提が用いられているが、これらは法的分社化直後でデータが十分でなかった中で暫定的に置かれた要素もある。今後は、第1規制期間中の自己資本比率の推移や各社の財務方針を確認した上で、より実態に合った設定方法を検討することになる。
第2規制期間に向けた検討課題も示されている。まず、第1規制期間で制度措置を行った後、その結果として物価上昇分がどのように反映されたか、電気工事事業者の賃上げにつながったかを継続的に検証する必要がある。次に、事業報酬については、公社債利回りだけでなく、自己資本比率やβ値も含めて見直す必要がある。さらに、第2規制期間の収入上限を算定する際には、現行の参照期間5年平均ではなく、直近の費用実績などをベースにして、第1規制期間中の物価や労務費の上昇を適切に反映することも検討課題とされている。
ロスシェア・プロフィットシェアの扱いも論点になる。レベニューキャップ制度では、実績費用が承認額を上回った場合や下回った場合に、その差を事業者と需要家の間でどう扱うかが問題になる。物価等の変動に伴う費用変動分については、事業者の効率化努力や非効率とは別の外生的要因であるため、通常のロスシェア・プロフィットシェアから除外することも検討対象とされている。ただし、その費用変動分をどのように特定するかは、引き続き検討が必要とされている。
さらに、第2規制期間では、物価や金利の変動を一定期間ごとに自動的に料金へ反映する仕組みも検討対象になっている。現行制度では、期中調整を行わない場合、承認額と実績額の差が調整されるのは規制期間終了後の翌期調整時点になる。そのため、物価や金利の上昇が継続すると、事業者の収支に実態が反映されない期間が長くなり、キャッシュフローに影響し、投資計画に支障が出る可能性がある。資料では、物価等上昇や金利変動のような客観的で外生的な変動要因については、規制期間終了時を待たず、たとえば毎年度のように自動的に料金へ反映させる措置も検討に値するとしている。