会議情報
2026.06.02 第8回 蓄電池産業戦略推進会議
資料別の解説
資料3 蓄電池・電源産業戦略(案) 開く
資料3では、2022年に作られた蓄電池産業戦略を見直し、新しい戦略案を示している。会議ページでは、資料3として「蓄電池・電源産業戦略(案)」が掲載されている。
蓄電池とは、電気をためて、必要なときに使う電池のこと。今回の資料では、電気自動車に載せる電池、家庭や工場に置く蓄電池、電力設備につなぐ大型蓄電池、データセンターのバックアップ電源などが主な対象になっている。
2022年の戦略では、2030年までに国内で150GWh/年の製造基盤をつくることが目標とされていた。GWhは電気の量を表す単位で、ここでは「1年間にどれくらいの電池を作れるか」を示す数字と考えればよい。今回の資料では、経済安全保障推進法に基づく支援などにより、国内の製造基盤は100GWh/年以上に増える見通しとされている。
経済安全保障推進法とは、生活や産業に欠かせない物資を安定して確保するための法律である。蓄電池も重要な物資に指定されており、国内で生産できる体制を強くするための支援対象になっている。
資料では、世界の蓄電池市場が今後も拡大する見通しが示されている。電気自動車が増えれば、車に載せる電池の需要が増える。太陽光や風力発電が増えれば、発電した電気をためる設備が必要になる。AIデータセンターが増えれば、停電時にもサーバーを止めないための電源が必要になる。
一方で、中国では蓄電池の供給が多くなっており、価格競争は厳しくなっている。供給とは企業が作れる量、需要とは実際に買われる量である。供給が需要より大きくなると、価格が下がりやすくなる。
今回の戦略案では、3つの目標が示されている。
1つ目は、2030年から2030年代半ばに、国内で150GWh/年の製造基盤を確立すること。ここでいう製造基盤には、電池本体、電池の材料、電池を作る装置が含まれる。
2つ目は、日本企業の蓄電池関連売上高を2025年から2035年に3倍にすること。対象には、電池セル、モジュール、パック、蓄電システムなどが含まれる。セルは電池の基本単位である。モジュールはセルを複数まとめたもの。パックは、モジュールに制御装置や保護部品を組み合わせ、実際に使える形にしたものである。
3つ目は、2030年頃に全固体電池を本格実用化すること。全固体電池とは、電池の中で電気を運ぶ材料を固体にした電池である。現在広く使われているリチウムイオン電池では、液体の材料が使われることが多い。全固体電池は、安全性や出力性能の向上が期待されている。
国内の製造基盤を広げるために、官民で必要な投資額は3.4兆円とされている。内訳は、部素材製造が1.3兆円、電池製造が2.1兆円である。部素材とは、電池を作るための材料や部品を指す。正極材、負極材、電解液、セパレーターなどが代表例である。
正極材と負極材は、電池の中で電気を出し入れする主要な材料である。電解液は、電池の中で電気の流れを助ける材料である。セパレーターは、正極と負極が直接触れないようにする薄い膜である。
資料では、国内市場を広げる取り組みも示されている。電気自動車などの電動車の普及、家庭や工場で使う蓄電池の導入、電力系統につなぐ大型蓄電池の整備、AIデータセンター向けの電源システムづくりなどである。
電力系統とは、発電所、送電線、変電所、配電線などを通じて電気を届ける仕組みのこと。電力系統につなぐ蓄電池は、太陽光や風力の発電量が変わるときに、電気をためたり出したりして需給を調整する役割を持つ。
安全性の確認も重要なテーマである。資料では、系統用蓄電池の導入補助金や長期脱炭素電源オークションで、第三者による適合性証明を求める方針が示されている。第三者による適合性証明とは、メーカー以外の機関が、製品が一定の基準を満たしているかを確認する仕組みである。
長期脱炭素電源オークションとは、CO2を出しにくい電源や蓄電池などを長期的に確保するための制度である。事業者は入札を行い、落札すれば一定期間、収入を得られる。大型の蓄電池も対象になっている。
人材育成では、2030年から2030年代半ばに、蓄電池に関わる人材を3万人育成・確保する目標が示されている。蓄電池産業では、材料を研究する人、工場で製造する人、製品を評価する人、設備を設計する人、使用済み電池を回収・再利用する人などが必要になる。
資源の確保も論点になっている。蓄電池には、リチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛などの資源が使われる。これらは産出国が限られるものもあるため、安定して確保する仕組みが必要になる。
リサイクルも扱われている。蓄電池は、使い終わった後に金属資源を取り出し、再利用できる可能性がある。欧州では、電池に使う再生材の割合や、製造時のCO2排出量を管理するルールが整備されている。日本企業が海外で電池を売るうえでも、リサイクルやCO2排出量への対応が重要になる。
資料3全体では、蓄電池を国内で作る体制を強め、海外市場で日本企業の売上を伸ばし、全固体電池などの新しい技術を実用化する方針が示されている。対象は、電池メーカー、材料メーカー、製造装置メーカー、リサイクル事業者、電源システムを作る企業、人材育成に関わる大学や高専まで広がっている。
資料4 参考資料 開く
資料4は、資料3の背景を説明する参考資料である。世界市場の見通し、各国の政策、蓄電池の用途、部素材、製造装置、資源、リサイクル、人材育成などが整理されている。
資料4で重要なのは、蓄電池の用途が広がっている点である。電気自動車、家庭用蓄電池、電力系統につなぐ蓄電池、データセンター、防災設備、医療機器、産業機械、ドローン、船舶、建設機械など、使われる場所は多い。
用途が変わると、重視される性能も変わる。電気自動車では、長く走るための容量が重要になる。データセンターでは、停電時にすぐ電気を出す性能が重要になる。防災設備では、災害時の安全性や長期間の使用が重要になる。産業機械やドローンでは、重さ、出力、充電時間が重要になる。
資料4では、各国の政策動向も整理されている。米国、EU、韓国、中国はいずれも蓄電池を重要産業として扱っている。支援策、規制、資源管理、国内生産の強化など、国ごとに対応が進んでいる。
今回の戦略案は、こうした世界の動きに対応するためのものだと読める。蓄電池は、電気自動車の部品という位置づけを超えて、電力、通信、防災、AI、産業機械を支える設備になりつつある。そのため、製造能力、材料、資源、リサイクル、安全性、人材をまとめて整える必要がある。
資料3と資料4を合わせて見ると、今回の会議の中心は、蓄電池を日本の重要産業として育てるための計画である。国内では150GWh/年の製造基盤をつくる。海外では日本企業の蓄電池関連売上を3倍にする。技術面では2030年頃に全固体電池を本格実用化する。これらを進めるため、材料、製造装置、資源、リサイクル、人材、安全性の仕組みを整える内容になっている。