審議会資料解説

第8回 蓄電池産業戦略推進会議資料解説

国内150GWhの製造基盤、関連売上高3倍、全固体電池の実用化、人材3万人という戦略案の目標を確認できます。

更新日:2026.07.03

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会議情報

2026.06.02 第8回 蓄電池産業戦略推進会議

出典:経済産業省「第8回 蓄電池産業戦略推進会議」

資料別の解説

資料3 蓄電池・電源産業戦略(案) 開く

資料3は、2022年策定の蓄電池産業戦略を改定する案である。対象は車載電池、定置用蓄電池、系統用蓄電池、データセンター向け電源に加え、部素材、製造装置、資源確保、リサイクルまで含む。

2022年の戦略は、2030年までに国内150GWh/年の製造基盤を確立する目標を掲げた。経済安全保障推進法に基づく設備投資支援などにより、資料作成時点で100GWh/年以上の製造基盤が整う見通しとなっている。GWh/年は、工場が1年間に生産できる電池容量を示す。

経済安全保障推進法とは、生活や産業に欠かせない物資を安定して確保するための法律である。蓄電池も重要な物資に指定されており、国内で生産できる体制を強くするための支援対象になっている。

資料では、世界の蓄電池市場が今後も拡大する見通しが示されている。電気自動車が増えれば、車に載せる電池の需要が増える。太陽光や風力発電が増えれば、発電した電気をためる設備が必要になる。AIデータセンターが増えれば、停電時にもサーバーを止めないための電源が必要になる。

一方で、中国では蓄電池の供給が多くなっており、価格競争は厳しくなっている。供給とは企業が作れる量、需要とは実際に買われる量である。供給が需要より大きくなると、価格が下がりやすくなる。

戦略案の数値目標

分野目標時期
国内製造基盤150GWh/年2030年から2030年代半ば
日本企業の蓄電池関連売上高2025年比で3倍2035年
全固体電池本格実用化2030年頃
産業人材3万人を育成・確保2030年から2030年代半ば

国内製造基盤には、電池セル、部素材、製造装置が含まれる。売上高の対象はセル、モジュール、パック、蓄電システムなどである。全固体電池は電解質に固体材料を使う電池で、車載用途を中心に量産技術の確立が計画されている。

官民で必要な投資額は3.4兆円と試算され、部素材製造が1.3兆円、電池製造が2.1兆円を占める。部素材には正極材、負極材、電解液、セパレーターなどがある。

正極材と負極材は、電池の中で電気を出し入れする主要な材料である。電解液は、電池の中で電気の流れを助ける材料である。セパレーターは、正極と負極が直接触れないようにする薄い膜である。

資料では、国内市場を広げる取り組みも示されている。電気自動車などの電動車の普及、家庭や工場で使う蓄電池の導入、電力系統につなぐ大型蓄電池の整備、AIデータセンター向けの電源システムづくりなどである。

電力系統とは、発電所、送電線、変電所、配電線などを通じて電気を届ける仕組みのこと。電力系統につなぐ蓄電池は、太陽光や風力の発電量が変わるときに、電気をためたり出したりして需給を調整する役割を持つ。

安全性の確認も重要なテーマである。資料では、系統用蓄電池の導入補助金や長期脱炭素電源オークションで、第三者による適合性証明を求める方針が示されている。第三者による適合性証明とは、メーカー以外の機関が、製品が一定の基準を満たしているかを確認する仕組みである。

長期脱炭素電源オークションとは、CO2を出しにくい電源や蓄電池などを長期的に確保するための制度である。事業者は入札を行い、落札すれば一定期間、収入を得られる。大型の蓄電池も対象になっている。

人材育成では、2030年から2030年代半ばに、蓄電池に関わる人材を3万人育成・確保する目標が示されている。蓄電池産業では、材料を研究する人、工場で製造する人、製品を評価する人、設備を設計する人、使用済み電池を回収・再利用する人などが必要になる。

資源の確保も論点になっている。蓄電池には、リチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛などの資源が使われる。これらは産出国が限られるものもあるため、安定して確保する仕組みが必要になる。

リサイクルも扱われている。蓄電池は、使い終わった後に金属資源を取り出し、再利用できる可能性がある。欧州では、電池に使う再生材の割合や、製造時のCO2排出量を管理するルールが整備されている。日本企業が海外で電池を売るうえでも、リサイクルやCO2排出量への対応が重要になる。

資料3全体では、蓄電池を国内で作る体制を強め、海外市場で日本企業の売上を伸ばし、全固体電池などの新しい技術を実用化する方針が示されている。対象は、電池メーカー、材料メーカー、製造装置メーカー、リサイクル事業者、電源システムを作る企業、人材育成に関わる大学や高専まで広がっている。

資料4 参考資料 開く

資料4は、資料3の背景を説明する参考資料である。世界市場の見通し、各国の政策、蓄電池の用途、部素材、製造装置、資源、リサイクル、人材育成などが整理されている。

用途は、電気自動車、家庭、電力系統、データセンター、防災設備、医療機器、産業機械、ドローン、船舶、建設機械まで広がっている。

用途が変わると、重視される性能も変わる。電気自動車では、長く走るための容量が重要になる。データセンターでは、停電時にすぐ電気を出す性能が重要になる。防災設備では、災害時の安全性や長期間の使用が重要になる。産業機械やドローンでは、重さ、出力、充電時間が重要になる。

資料4では、各国の政策動向も整理されている。米国、EU、韓国、中国はいずれも蓄電池を重要産業として扱っている。支援策、規制、資源管理、国内生産の強化など、国ごとに対応が進んでいる。

各国は設備投資支援、原材料の確保、域内生産要件、リサイクル規制を組み合わせている。日本の戦略案も、製造能力、材料、資源、回収、安全認証、人材育成を同じ計画の中で扱う。